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可能性

 蜘蛛をスルーできた俺は一目散に森の中から脱出した。

 ゼーゼーと息が荒れているのを整えながら、周囲に何も居ないことを確認。

 ふぅ……と額から垂れる汗を拭い、水筒に入っている水を一気に飲み干す。


「あれは……流石に不味いだろ」


 思わずそんな言葉が口から零れた。

 安全を確認したとはいえ、背後に何か居るのでは? と思ってしまい、ちらちらと後ろの確認を繰り返してしまう。

 楽しい場所だと思ったのが悪かったのだろうか? そもそも、戦闘があるだろうという予想は立てていたのにな。予想が甘かったと言う事なのだろう。


 とりあえず、当面の目標はあの蜘蛛を討伐する方法を作り出す事だ。


 とは言え……下手な物は使えない。

 森の中だからな、それこそ〝ファイア〟の魔法や〝カエンタケ〟を使った道具は大火事になってしまう。モンスターを倒せばお終いでは無いからな……まだまだ、生存していく為にもやらねばならない事は沢山だ。

 そして、そのやらないと行けない事の為には、様々な素材が必要となる訳で……素材の宝庫と言える森を焼き払うなど出来るハズも無い。


 そんな事を考えながら、俺は自分の仮拠点へと戻って行った。







 仮拠点へと戻って来たなら、まずやるべき事があり、それは簡易で良いので屋根と壁を作る事だ。


 ハンモックがある場所に来てみる。

 周囲に木は殆どなく、海まで近いと実に過ごしやすい場所ではあると思う。なので、此処に壁と屋根を作ろうと思うのだが……さて、どうやって作るべきだろうか。


「石レンガじゃ足らないよなぁ……」


 収集所に小さなピラミッドを築いている石レンガだが、それで壁を作ろうと思えば全く数は足らない。

 かといって、木を素材にしようと思うと……木を伐るのが大変だ。俺の作った石斧では一本の木を倒すのにどれだけ時間が掛かるのか。

 ならば竹だろうか? とは言え、竹だと一本一本自体は細い訳で、一体何本必要なのだろうか? という話になる。まぁ、壁や床に使うのは有りではないだろうかと思うのだが。


 しかし、安全面を考えると現状の素材を見れば石レンガ一択だよな。何せ他に比べて硬い訳だし。石材用の接着剤は錬金術で作れば良いだろうし。


 なら、少し危険かもしれないが仮拠点の強化は後にして、石レンガ作りに力を入れていくべきだろうか?

 あの蜘蛛がここまで来ない……とは言い切れないし、他にもあのような存在がいる可能性だってある。身を隠す為にも拠点は絶対に必要だが、かと言って防御能力の低い壁では心許ない。


「もっと大量に錬金出来れば良いんだけど、台の大きさを考えるとな」


 今まで以上の数の石を錬金するのは無理だろう。

 そしてまた、石を探すのも実は大変だったりもする。……うん、俺の手で運べる範囲の大きさだと中々転がって無いからな。


 これは、石ピッケルでも作って……って、これはクラフトゲームじゃないから、あんなに簡単に素材を入手出来る訳がない。

 ではどうしたら良いだろうか? 石材の確保……石材の確保……うーむ。


「石材と言えば採石所だっけ……露天掘りとか」


 いやいや、一体どこでやるよ? 目の前は海で後ろは森だぞ? あれか? あの切り立った崖の部分まで移動しろという事だろうか。そんなの無理だろう……石材を入手出来たとて、どうやってソレを運ぶんだよって話だ。

 くそう、圧倒的に石の数が足らない。

 ここら辺を掘ったとしてもなぁ、石よりも砂が手に入るよな。てか、なんなら掘って行くと海水で大変な事になるかもしれないし。


「簡単に石が出る方法でもあれば……って、あるじゃん!!」


 そうそう! 魔法の土属性に〝ロック〟なる、石を飛ばす魔法が有ったはずだ。

 ただ、石を飛ばした後にその出した石はどうなるかが問題。消えてなくなってしまうのか、それともそのまま残っているのか。とりあえず、これは試す事が必要だろう。


「えっと、ターゲットに向かって……〝ロック〟」


 魔力が一点に集まり石を作り出した。そして、その石が狙った目標である木へと飛んで行き、ガン! 石が木に刺さった。

 此処からが問題だ。石は消えるのか消えないのか。じっくりと刺さった石を眺める。

 すると、一分ほど時間が経ったぐらいだろうか? 石に変化が始まり、徐々に小さくなっていく。


「あー……魔力が散ると消えていく仕組みなのかな」


 となると、これは石材としては使えないのではないだろうか? 何せ一分ほどで魔力が散ってしまうのだ。であれば、例え石レンガに出来たとしても……。


「ん? いや、ワンチャンあるか」


 魔力が散って形が維持できないのであれば、魔力を散らせなければいいじゃない。

 とは言え、そんな方法があるかどうかは……試してみなければ分からない。

 なのでまずはと、俺は既に形成済みの石レンガを錬金台の上へと乗せる。そして、そこからそんな石レンガに〝ロック〟の魔法を軽くぶち込む。


 ガスッと鈍い音をたて、石レンガに石の魔法が突き刺さる。うん、実にシュールだ。


 そして其処から、錬金用の杖を使いコツコツと素材を叩く。さぁ、錬金のお時間です。

 イメージは……ただの石レンガに魔法で作った石の欠片を彼方此方へと混ぜ込む感じだ。そして、そんな石レンガから魔力が抜けない様にコーティングしていく……っと、あくまでイメージだが。


 カッ! と周囲を光が埋め尽くす。うん錬金術は成功したという合図。


 光が収まると同時に錬金台の上を見ると、其処には最初の石レンガよりも一回りサイズが大きな石レンガが置かれていた。


「あとは……魔力が抜けるかどうかなんだけども」


 石の弾だった時は一分で消えたのだが、さてこうなった場合は消えないのか消えるのか、そして消えるのであればどれだけの時間かつどんな感じにと、しっかりと調べる必要がある。

 とは言え、これってぶっちゃけ数分から数時間放置しておけばいい話。

 そして、それを待っている間は時間の無駄と言うか、実に勿体ないので他の事もやっておくべきだろう。


 そんな訳で、他の素材確保方法について考えてみる。


 というよりもだ! 錬金術をやっている最中に一つの事を思いついたんだよなぁ。そして、その思いついたモノなんだけども……。


「ボムベリー使えんかね?」


 小さい爆発を起こすボムベリー。威力は低いのだが実際に爆発すると言う事で、可能性もロマンも無限大と言っても良いベリー。

 そんなベリーを使って、爆破採掘なり、爆発漁なりが出来ないものか? と思い至った訳だ。


 とは言え、小さい爆発と言ったように、本当に威力は低いんだよな。なのでまずは錬金術の力でコレの威力を上げる必要があるだろう。

 しかし威力を上げる方法と言っても思いつく事は殆どない。あるとすれば、カエンタケと混ぜるとか数を無駄に増やすとかだけど。


「思ったんだけど、錬金術をやっている最中に杖で触れる訳だから……その時に爆発とかしないよな?」


 錬金台を使った錬金術は怖くてできない気がするな。だから使うなら鍋だろうか?


「っと、その前に、このボムベリーがどういった原理で爆発しているのかも問題だ」


 酸素に触れた実の中身が膨張して爆発しているのか、ただ衝撃を与えたために爆発しているのか……正直、これぐらいは鑑定で表記して欲しい内容ではあるのだけども。

 恐らく鑑定で出ないのは、鑑定のレベルが足らないからだろうなと思わなくもない。


 あぁ、怖いなぁ。これ調べる為に色々とやる事がある。

 ベリーを切ってみたり、投げてぶつけてみたりとそれはもう色々と試す必要があるだろう。そして、その中には自分の体にダメージが入りかねない物もある訳で……うん、最初に言ったベリーを切るとか、ダメージは低いから部位破壊なんて事にはならないと思うけど、多少の怪我はするよなぁ。

 とは言え、今後の事を考えれば必要な事でもある訳で……なるべく怪我をしないやり方を考えて取り組むとしよう。

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― 新着の感想 ―
[一言] 石レンガさんを破壊すれば多数の石ころができるのでは…
[一言] 「魔法の土属性に〝ロック〟なる、石を飛ばす魔法が有ったはずだ。ただ、石を飛ばした後にその出した石はどうなるかが問題」 レンガを作るのも良いと思いますが、この魔法で蜘蛛をやっつけようとは思わ…
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