チェンジ
順調に歩を進めつつ、レッサーライオンを討伐していく俺達。
もしかしたら1レベルや2レベルぐらいは上がっているんじゃないかな? と思うけど、今ソレのチェックは出来ないから、後のお楽しみにしておく。
そんな風に考えていた為なのか、俺達は少し心のどこかへ隙というものを作ってしまった。
いや、コレばかりは誰も予想出来なかったと思う。
突然上空から何かが飛来して来た。それも、俺の目の前にだ。
そしてその何かは思いっきり持っている物で殴りかかった。
何とかその攻撃に対して防御態勢を取ることが出来たものの、俺の防御は其処まで高い訳ではなく……俺は防御態勢のまま思いっきり壁へと弾き飛ばされてしまった。
壁に背中から衝突。そして意識は随分と朦朧としていて……俺はその後に何が起きたのかはっきりとは覚えていない。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「望月君!? エリカ急いで!」
「うん! 分かってる!!」
あー……ちと頭がくらくらする。えっと何がどうなってるんだ? とりあえず、女子たちの声が薄っすらと聞こえてくるんだが。
「やらせないじゃん! ファイアショット!!」
「……ちゅー太、レベル3」
「ちゅ……ちゅー! ……がぅ!!」
手足が動かないな。えっと、どういう状態だ? 全く、僕の目が覚めるなら、せめて動ける状態であって欲しかったんだけど。
ただまぁ、どうやら緊急事態の様だ。
「エリカどんな感じ? 望月君は目を覚ましそうなのかしら」
「ヒールとポーションで外傷はなんとかなったと思う。後は衝撃で脳を揺らされてたと思うから……」
「ノックダウン状態って事ね……とりあえず私達がしっかりと防衛するから、エリカは望月君を」
「うん。分かってるよ。でも、支援やヒールが欲しかったら直ぐ教えてね。私も気には掛けるけど」
ふむ。外傷は何とかなっているのか。ただ、こうして意識だけが浮上しだしているということを考えると、もう少ししたら動くことも可能だろな。
「こんの! 豚の化け物!!」
「……豚肉にはしたくない」
ふむ。敵は豚の化け物なのか。あれ? でも戦っていたのはレッサーライオンという猛獣って話じゃなかったか?
「オ、オデ……豚ノ化物違ウ!! オデハ、人間ダ!!」
「「「……え」」」
「……喋った」
おや。おやおや。人の言葉を理解しているモンスターだと? システムが面倒な存在を用意したって事か。いや、しかしシステムがそんな事をするか? あれは毒舌で性根が腐ってるんじゃないか? と思うぐらいの事を平然としてくるが、それでも最初は絶対に死ぬ事が無い様にと手厚く動いていたりするヤツだ。
そうである以上、こんな存在を用意するようには思えない。……そうなると、豚の化け物とやらはイレギュラーか?
「ユルサン……ユルサンゾ!! 男ハ殺セ! 女ハ犯セ! ライオン共!!」
ガッ! 地面が、地面が揺れる!! 何をしているのか見えんが、地団駄でも踏んでいるのか?
てか! こいつ今なんて言った? 男は殺せ? まぁ、男は俺しか居ないから俺を殺せってことなんだろう。ただソレは良い。いや、良いというわけではないが……ソレは置いておこう。
こいつ、その次になんて言った? 女は犯せだ? おいおい、折角出来た僕の……いや、僕等の協力者に手をだそうとするとか。
「巫山戯ているよなぁ……」
頭を軽く押さえながら、首を左右にふる。ふむ。漸く動けるようになったようだ。
「あ、望月君大丈夫? どこか痛い場所とか無い?」
「あー……大丈夫だ。ってか、随分とトンデモナイ状況になっているみたいだな」
「うん。あの豚の化け物が一気に状況を覆しちゃったんだ……って、あれ? 望月君なんかちょっと変?」
「気にするな。っと、とりあえずこれをどうにかしないとな」
周囲を見渡すと、折角作った壁や堀が潰されている。
その為に、豚野郎を中心にレッサーライオン共がこちらを包囲しようとしてる状況になっていた。
ただ今も戦線を維持できているのは、彼女達が頑張ったからだろう。
土魔法による障壁、召喚精霊による背後からの奇襲、正面は弓による制圧射撃か……なるほど、ただどれも魔力を一気に消耗するような戦い方だ。だから持久戦は難しいだろうな。
あぁ、どうやら牛は生き延びているみたいだな。ちゅんめがどうやら牛達を守りきったようだ。しかも、牛達に急いで移動しろ! と追いやってやがる。てか、そんなスピードを出して走れるなら、最初からやっておけよ。と、今更だな。
「とりあえずだ。支援を掛けてもらえるか?」
「え、うん! いくよ、フルブースト!」
フルブースト。
なるほど。基本ステータスの全てを同時に掛けられるというわけか。こりゃ便利だな。
「からの……マジックブースト!」
マジックブーストもか。
たしか次の魔法の威力を一気に増加させる魔法だったか? 彼女もよく分かってる。僕が一番欲しい支援はソレだ。
「てか、お前ら見てるんだろう? さっさと手を貸せ。〝バカ二体顕現〟」
「ちょ!? てめぇ……折角安定して来たから静かにしてたのによ。てか、俺達を呼び出すか普通?」
「いやはや。良いですね。漸く私も戦えるという訳ですね」
「え? え? えぇぇぇぇ!?」
春野 エリカだったか? 彼女がかなり驚いているな。だがソレも当然か。何せなにもないところから小さな天使と悪魔が現れたもんな。
だけど、そんな春野 エリカを気にしている余裕なんて無い。当然説明している時間もだ。
まずやるべき事は……。
「ほれ、さっさと詠唱しろ。トリプルで行くぞ」
「ちっ……しゃーねぇな。俺様が手伝うんだ。誰一人として傷がつくような真似はさせねーよ」
「雌達はどうでも良いのですが……ま、私の力で壁ぐらいにはなるでしょう」
ごちゃごちゃ言ってないでさっさと魔法を行使しろ。
とりあえず。最初にやるべきはレッサー共の排除か。奴らは強くないが、数だけは無駄に居るからな。横から邪魔をされたら面倒臭い。
ただ排除してもおかわりが来るけど、そいつらが来るまで時間的に余裕ができるはずだ。だから、その間に女子たちの立て直しも可能になるはず。
「って事で〝ファイアボール〟」
「はぁ……〝ダークソード〟なんだぜ」
「やる気を出しなさい。〝ホーリーソング〟」
火の玉が豚の左側に居るレッサーライオン達の中心で大爆発。結果、半数以上のレッサー共が消滅。
黒い剣が地面から大量に現れ、豚の右側にいたレッサー達を貫いた。これで左右に配置されていた殆どのレッサー達が消えたことになる。
そしてそこへ、光のカーテンが現れこの場にいる者全てを包み込んだ。
「あれ? 体が軽くなったじゃん」
「エリカの支援魔法? ただ、その割には効果が大きいような」
「……何でも良い。チャンス」
前に居る女子たちは何が何やらといった感じだが、それでも自分たちのやるべき事は理解しているようで……残っているレッサー達の排除を行うために行動を開始したようだ。
ただ、僕等を直視している春野 エリカのみ、口をパクパクと動かしている。驚いて言葉も出ないといった感じか。まぁ、ソレも仕方ないだろう。
「さて、後はあの豚をなんとかしないとな」
「もう良いか? やることはやったぞ」
「私は支援しかしてませんから。まだまだ暴れ足り無いのですが?」
「……本当に天使ってなんなんだろうなぁ。まぁ良いか。で、どうなんだ? 消えても良いのか?」
「普通に考えて、もう少し待機だろ。レッサー共は増員されるんだぞ?」
「ヤレヤレしかたねーな」と言いながら杖を構える悪魔。逆に嬉しそうにフォークを掲げる天使。本当にコイツらは姿と中身が一致してないが……まぁ、頼れる存在だからそんな事はどうでも良い。
「さて、まずはあの豚が何者かと言う事だ」
確か人間だ! なんて事も言っていたからな。少し調査が必要だろ。
ブックマークに評価ありがとうございます! (❁ᴗ͈ˬᴗ͈)ペコリ♡...*゜
という訳で、久々に登場した彼らです。
しかも意識の逆転現象が起きてますね。えぇ、スイッチが入ってしまったようです。しかも何気に天使と悪魔を顕現させているという……一体どんな能力なんだ( ゜д゜)
(こちらの景君? は、ステータスが公開されていませんからね。ただ、隠しスキルのバーサクというのだけが公開されている状態ではありますが)