ドンナドンナ!
準備を終わらせた俺達は休憩を挟んだ後、野生の牛へと手を伸ばした。
牛に「安全地帯に連れて行ってあげる」と告げた後、彼らの首にロープを掛け、そのロープをちゅんめが引っ張っていく。
連れて行く牛は多ければ多いほうが良い。最悪、数頭が犠牲になっても雄と雌が一頭ずつ残れば良いしね。
そんなわけで、俺達はその場に居た6頭の牛を、第1フィールドへと護衛しながら移動を開始。
「……ちゅん吉、空」
「ちゅん!」
当然だけど、襲ってくるのはレッサーライオンだけじゃない。バトルスパロウも空から俺達を狙ってくる。
そんなスパロウ達を迎撃するのは風精霊のちゅん吉。
あれ? ちゅん吉ってレベル1だからそこまで強くないよね? って思うかもしれないけど、そこは召喚師である冬川さんのレベルや装備によってブーストがかかっているからね。
同じ雀でも、その性能は段違いといえる状態になっているんだよね。
「……ちゅん吉。風」
「ちゅちゅん!」
初級の風魔法。それも基礎の基礎である〝ウインド〟なんだけど、ブーストが掛かっている為にその威力はかなり底上げされていて……。
「おー……雀達がレッサーライオン達に向かって飛ばされていってる」
「あ、ライオンの背に雀の嘴が刺さったよ」
「……完璧」
どやぁ! と胸を張る冬川さんとちゅん吉。
ただ、どうでも良いんだけど、なんで冬川さんは最後尾の牛の背に跨っているんだろう? 全く違和感がなかったけど、どう考えても戦闘状態でそれは違うような。
「……護衛もできる」
「いや、うんまぁ……確かにそう言ったらそうかもしれないけど」
牛の背の上でタクトを降る冬川さん。なんだか様になりすぎていて、これ以上は何も言えなくなってしまった。
「雪にはちゅん吉の討ち漏らしを任せましょう。そもそもレッサーは一方方向からしか襲ってこないようにしたのだし、その襲撃数も一体ずつなのよ。こちらに全員の火力を当てる必要もないのよね」
「それなら私はらいにゃんのヘッドショットだけを狙えば良いって事じゃん。あ、それなら私も牛の背に……」
「雪と違って流石にそれは足が遅くなるんじゃないかなぁ」
「其処まで重くないからな!?」
そんな会話をしつつだけど、一方方向かつ一頭ずつしか進めないレッサーライオン達が相手だからね。そう簡単に遅れを取るわけがない。
それに……。
「〝起きなさい〟」
秋山さんがそう告げると、地面がモモモと盛り上がった。
そして、その盛り上がった地面は次第に形を変化させていき……俺達が戦ったときよりも小さいサイズなゴーレムが、俺達とレッサーライオン達の間に壁として立ちはだかった。
「成功ね! 大丈夫だとは思ってたけど、少し心配だったのよね」
「左右の壁とゴーレムの間に隙間はあるけど、ライオンが通れるような隙間じゃないよね」
「これなら一方的に射抜けるじゃん! って、これだとヘッドショットが出来ないような?」
「ま、まぁ……其処は毒矢でなんとかしてもろて」
「……命大事」
少しだけ問題があるけども、それでもこれで完璧な布陣が完成したって感じかな。
ただ、これだと俺も爆破系のアイテムを投擲する事は出来ないんだよね。
だからここは、隙間から毒ダーツを撃ち込んだり、ゴーレムの股の下を通すようにシャボンボム(毒)を投げ込むのが良いかもしれない。シャボンボムならゴーレムにダメージが入ることなんて無いからね。
「てか夏目さんはゴーレムアローを試す丁度いい機会じゃないかな」
「あ、たしかにそうじゃん! ちょっと撃ってみる」
試してみるといった夏目さんは、空に向かって大量のゴーレムアローを射出していった。
上空にて漂うように停止しているゴーレムアローの数が増えていく。しかし、そんなゴーレムアローは一本また一本と行動を開始し始めた。
「狙い目は……後ろのあいつ!」
夏目さんがターゲットのレッサーライオンを選択すると、ゴーレムアロー達は上空から雨の様に降り注ぐ。
そして、ゴーレムの正面にいるレッサーライオンよりも先に、その後方にいたレッサーライオンの討伐が出来てしまった。……とは言え。
「ちょ、ちょっとこれ、魔力を使いすぎじゃん。使いすぎは不味いかな」
いやいや。アレだけ大量に射出すれば当然じゃないか? と思うんだけどね。
せめて試すにしても、1射だけとかにしとけばいいのに……何というか、豪快すぎるよね。
「七海はもう少しペース配分を考えること。まだまだ戦闘は続くのよ?」
「はーい……」
「……無駄撃ち」
「うぐぅ……雪が毒舌じゃん」
いやいや。皆同じことを思ってたからね。ただ口にしてないだけで。
それにしても、ゴーレムのおかげでレッサーライオンが足止めできているのは大きいね。
牛たちの足は遅いから、どうしても追いつかれて戦闘になってしまう。ただそれでも、壁とゴーレムの存在が大きくて、一体ずつ確実に仕留めていくことが出来るんだよね。
「てか、ゴーレムのパンチも威力が大きいなぁ」
「当たれば大きいといった感じね。でも、普通はあんなの当たらないわよ」
「フィールド効果が大きいってやつかな?」
「だと思う。壁で左右には飛べないし、前はゴーレム、後ろは味方のレッサーライオン。回避する場所が無いからね」
もしなんとかしようと思ったらゴーレムを排除するしか無い。だからゴーレムに突撃をレッサーライオン達は行うんだけど、それこそゴーレムにとっては狙い目。
普通なら当たらないゴーレムパンチがレッサーライオンの顔面に叩き込まれていくんだよね。
「……俊敏(笑)」
「速さを殺せば敵じゃないって本当なんだなぁ」
自慢の前足は猫パンチか爪撃を繰り出す為だけのモノに。
どれだけ地面を掴んで駆けようとしても、直進しか出来ない以上は無駄な行為でしかない。
哀れレッサーライオン。彼らはただの鬣もふもふな猫となってしまったよ。
「てか、俺達ってほとんど何もしなくて良いような?」
「私も準備とゴーレムを作っただけなのよね」
「あ、そのゴーレムだけど、稼働時間はどれぐらい?」
「えっと……稼働時間は5分ぐらいで、クールタイムが1分かな」
なるほど。そうなると、1分間は自分たちで戦闘をする必要があるって事だね。
「それなら、5分間は皆で休みながら移動をして、1分間全力を出す感じで行くのが良いかも。あ、勿論だけどゴーレムを作るだけの余力は残してもらってだけどね」
「それがベターかしら」
「となると、支援魔法でブーストを掛けるのはゴーレムが消える少し前が良いかな」
まぁ、最後までゴーレムでなんとかなるって甘い話は無いか。そりゃそうだよね。
ただどの道レッサーライオンは1体ずつしか前へと進めないからね。道具を上手く使っていけば、なんとかなると思う。
「てか、なんだろう? 経験値がぽこぽこ入ってる気がする」
「らいにゃんがトラップに落ちてるにゃん?」
「……にゃん?」
「ニャンって言ってない! じゃんって言ったじゃん!!」
……にゃんかじゃんかは、全てが終わった後に言及するとして。
「馬防柵とスパイクトラップが大活躍かぁ」
「全てが終わった後だけど、アイテム回収をしたらどれだけの魔石とかがあるんだろう。想像するとちょっと怖いよね」
牛によるトレイン狩り。それは無限と言えるレッサーライオンを呼び寄せる行為だからね。
てか、本当にどこにそれだけ潜んでいたんだ? って叫びたくなるぐらいの数で襲撃を仕掛けてくるから。
これ、もしかして逐次投入するような感じで、後から次々とレッサーライオンが湧いてるのかも。
ん? って事は、某ゲームみたいにレッサーライオンのトラップタワーみたいなのが作れるんじゃ……いやいや、この発想はやめておこうかな。ちょっと道を踏み外している気がするしね。
ブックマークに評価などなど、ありがとうございます!!
荷馬車は使っていませんが、牛を連れて行くのですよ(*´∀`*)
因みに。もし私が景であれば、間違いなくトラップタワーを建設していたでしょう(まて
そして、やらかしてましたね。どう考えても日にちの流れ的に二ヶ月はありえないだろうに二ヶ月になってた。三ヶ月にしてたはずなんだけどなぁ? って事で、修正させてもらいました。((*_ _))ペコリ