閑話・栄太郎たちはゴーレムを発見したらしい
ゴーレムを見つけた。
健人がそんなことを口にしたものだから、拠点に居る全員が慌てふためいてしまった。てか、俺も少しだけフリーズしてしまったしな。
ただ、慌てたりフリーズしたりしていても意味がない。見つけてしまったのなら、ゴーレムに対してなにかしらの対策をとる必要がある。
「って事で、緊急会議だぁぁぁぁぁ!!」
「栄太郎叫びすぎだ」
しかたないだろ……ゴーレムなんてものが発見されたんだ。そしてその事で皆が不安になっている。
なら俺のできる事はなんだ? そんな不安を吹き飛ばすために、気合を入れることじゃないか! そして、気合を入れる為には、まず叫ぶ! これが大切だろ!!
「えいたろーは何時も熱いな」
「はーちゃん、えーただから仕方ないよぉ」
「みーなちゃんは栄太郎の事をどんな目でみてるの?」
「んー……りっちゃんそれはね……面白いやつ!」
おいおい! やっぱり美奈の奴は俺の事をネタキャラ扱いしてるじゃねーか!
たまに抱き着いたりして来るから、やわかいなーとか良い匂いだなーとか思っていた俺が馬鹿だった! くそ、もう騙されないぞ!!
「愛ちゃん、これって愛情表現だよね?」
「そうだね舞ちゃん。どう見てもラブオーラがただ漏れだよね」
「ぐぎぎ……栄太の奴め……」
「愛ちゃん! 嫉妬で黒いオーラがただ漏れな健人君だよ!」
「これはどす黒いオーラだよ舞ちゃん」
「お、おまいら……こうなったら二人のどっちか俺と付き合ってくれ!」
「「お断りなんだよ!!」」
「ぐはぁ……」
……あいつらは一体何をやっているんだ? 何を話しているのか聞こえてこなかったけど、何やら健人の奴が自爆して地面へと伏せている状態だ。本当に一体何があったんだ。
てか、今そんな事はどうでもいいんだよ! 何のために集まって貰ったというんだ。ゴーレムの為だぞゴーレムの!!
「とりあえず話を戻すぞ? そこ、伏せっていないで起き上がれ」
「こ、この……持つものが追い打ちをかけてくるのか……」
「何が言いたいのかわからんが、ゴーレムの事が先だろ」
「そうだな。とりあえずゴーレムに対処しなくては……健人、そんなんだからお前はノーを突き付けられるんだぞ? 状況をよく考えろ」
ん? 宗太の奴が健人の耳元でなにか告げたみたいだが……一体何を言ったんだ? なんだかゼンマイ人形みたいな動きで健人が起き上がったぞ。
「サァ、会議ヲハジメヨウカ」
「健人……しゃべり方がおかしくなってる」
「ソウカ? 俺は元々コンナ感じで爽やか系男子ダゼ?」
「聞き取りずらいからやめろ。それに爽やかも何も、宇宙人が日本語を話しているみたいだぞ」
「が、がーん!!」
ガーンを口で言うな。てか、いつからネタ枠に転向したんだ? もっとこう、こいつはスポーツ男子と言った感じだったと思ってたんだけど。
「元からネタ枠」
「はーちゃん辛辣ぅ。でもでも、確かにそんな感じだよねぇ」
女子による無慈悲な言葉が健人を襲う……が、そうだったのか。こいつは元々ネタ枠だったのか。
「栄太郎と宗太とトリオ? 宗太が突っ込み役みたいな感じかなぁ」
「あ、それはよく分かるよ。ねー愛ちゃん」
「舞ちゃん、そうだね! 梨花ちゃんの言う通りだよね!」
な!? 俺達はいつの間にかに女子達から芸人トリオにされていた! いやまて、そんなことはないはずだ。
ちらりと宗太の方へ視線を送ると……奴は全てを悟っていたのか、乾いた笑いを浮かべて首を縦に振った。……そうか、女子から見たら、俺達はそういうネタ枠だったのか。
「って、だから話が脱線しすぎだ! ゴーレムをどうするかって話をするって言っただろ!!」
「「「「あ……」」」」
宗太以外の全員が、やっちまったという表情で叫ぶ俺を見た。
こいつら……お前らも全員ネタ枠じゃねーのか? と思ったが、それを口にしたらまた話が脱線をするから、ここはグッと我慢をしよう。
ネタ枠扱いされるから、思いっきり言い返してやりたい気持ちがふつふつと沸いてきてはいるがな!! ここは大人な俺が考えて行動してやるとしよう。うん、俺ってかなりいい大人じゃね?
「それを考えて表情に出したり、最悪口から洩れるからネタ枠なんだよ……」
「宗太……それを言うな。っと、で、ゴーレムについてだが、倒せると思うか?」
「そうだなぁ……全員でフルボッコにしたら行けるかも?」
「実際のその目で確認した健人はどう思う?」
「ちょーっとばかし厳しいだろうな。間違いなく物理攻撃は通用しなさそうだったぞ。それに相手の攻撃だけど、これは想像が出来ると思うが、どう見ても一撃一撃が重そうだった」
うーむ……そうなると、前衛での防御が通用しないって事か。まぁ俺達が持っているのは木の盾だからなぁ……ゴーレムの一撃を食らえば軽く粉砕されてしまうだろうな。
「何かいい案が思いついた人はいるか?」
「んー……良い案っていうかぁ、普通にえーたが罠を仕掛けたらいいんじゃない?」
「絶対に一撃を食らったらダメなら、遠距離での攻撃が主体がベスト」
トラップか……確かにそれなら通用するかもしれない。ただそれだと、相手の攻撃を防ぐことが出来るという訳ではないからな。トラップを突き抜けてこられてしまえばその時点でおしまいだ。
「魔法トラップ以外にも物理トラップがいるか……落とし穴や馬防柵みたいなものを用意しておくのもありかもしれない」
「宗太……それって作る範囲とか作っている時間はあるのか?」
「範囲はかなり広範囲に用意する必要があるだろうな。時間については健人がゴーレムを何処で見てどんな行動をしていたか次第だろう」
「見た場所は拠点から4時間ほど移動した場所か? あー、でも探索しながらだったからなぁ……戻って来た時は慌てていたから時間なんて気にしていなかったな。あと、ゴーレムの行動は特に何もしていなかったな」
なるほど、分からん。
俺には健人の言葉を聞いたところで……と思っていたんだが、どうやら宗太は違ったようだ。
「となると、遠くはない場所か。恐らくだが、拠点から1時間から2時間ぐらいの場所に居るという事だろう。で、ゴーレムの行動が何もしていなかったという事は……直ぐに脅威となることはないかもな」
「……何でわかるんだ?」
「いや、これぐらいは予想が出来るだろ」
その証拠に。ほら、俺以外にも健人と女子3名がきょとんとした表情をしているじゃないか。
分かっているのは華と梨花か? この二人はうんうんと頷いているしな。
「って事で、8人中5人が分からん。だから宗太のいう「これぐらい」はこれぐらいじゃないという事だ!」
「何でそこで勝ち誇ったような空気を作り出しているんだ……」
「そりゃ……民主主義だから?」
「疑問形で言うな」
ま、俺達による数の勝利と言う事で!
そしたらこの後更に脱線しないようにまた会話を戻すとして……問題はそのゴーレムの攻撃をどうやって防ぐかという事だよな。
「万が一戦闘になった場合だけど、どうやって倒すかは……まぁトラップを使うとしても、そのトラップが突破された後だな」
「防衛手段が無いから物理トラップを用意するって栄太が言ったじゃないか」
「一応、トラップ以外の対策も考えた方が良いだろ。トラップを突破されたらどうするんだよ」
「んー……拠点の放棄?」
「結論が早すぎる!? いやまぁ、最悪は放棄になるけど、それ以外にもできる事があるんじゃね?」
そんなこんなで、踊りに踊る俺達の会議。それは、結構な時間を使って行ったんだけど……俺達ってこの時には知らなかったんだよなぁ。
このゴーレムがフィールドボスで、接近しない限り動かないという事を。そしてまた、一定距離を離脱したら追いかけてこなくなるという事を。
お陰で、かなりの時間を会議で費やすことになり、そのことが発覚した後どっと疲れてしまうんだけど……それはまだまだ先の話。
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