色々作りすぎじゃない?~エリカ視点~
生活水準が一気に向上したよ! と、思わず小躍りしたくなってしまった。
でも仕方ないよね? 望月君が本気を出しすぎたんだよね。だから、私達が交渉をしに行っている間に、とんでもない物を量産していたんだよ。
「クリーム以外にも石鹸とかも増えてるね」
「……薬用?」
「ポーション入りボディソープって……こっちはシャンプーね」
「石鹸が液体になってるじゃん。てか、いつの間に作ってたんだろ」
一緒にいたはずの七海が知らないなんて……望月君がんばりすぎじゃないかなぁ? しっかりと休んでいるか心配になるレベルだよ。
「飲み物も揃えちゃってるよね」
「インスタントなタンポポコーヒーにこっちは紅茶用ね。中身はドクダミらしいけど」
「……くずもちおいしい」
「雪……いつの間に食べ始めた?」
お茶を片手に葛餅を食べる雪。本当に手が早いというか……。
というより! 本当にどれだけの物を生産したんだろう? 外にはさり気なくプランターが用意されているし。
さり気なく遊具も増えている。前からトランプにボードゲームはあったのだけど、今回ボードゲームの種類が増え、どうやって作ったのか? 昔懐かしなゲームのも。
うん、どうみてもぐらぐらと揺れる塔に危機一髪的な物まで……一体どういう事? んー……歯車とか作ってたから、それを使っているのかな。
「……跳躍が無い」
「そうね。危機一髪はそこまでびっくりする事はないわね」
「ひょこっと顔を出す程度だもんなぁ。ちょっと迫力に欠けるじゃん」
それでも勝敗は分かるから、十分に楽しめているんだけどね。
「てか、雪は食べながら遊ばない」
「……美味しいよ?」
「おいしいのは分かるけど、零したりしたらどうするのよ……勿体ないわよ?」
「……はっ」
雪には勿体ないって言葉が一番効くみたい。
桔梗の言葉を聞いた雪が、慌てながらも丁寧に葛餅に集中し始めている。
これが葛餅じゃなくて、ポテトチップスとかだったら注意する必要なんてないんだけどね。あ、でも油でべとつくから、その手で遊具に触れるのはアウトだよね。
そんな感じで、新しく作られた物の事について会話をしながら、新しいゲームで遊びつつ、私達は部屋の中でまったりと夜を過ごしている。
望月君も遊べたら良いのにって思いはあるけど、彼にとってはハードルが高すぎるから誘えていない。一緒に遊べたら楽しいと思うんだけどね。
あ、でも望月君は錬金術をやっている方が楽しいのかも。
「で、他に何が作られているのかしら?」
「建築用の資材を作っているのは見たかも」
「そうなると、木でできた壁の部分を変更することが出来そうね」
「それなら明日の作業は壁の改築?」
「それが良いと思うわよ……っと、セーフね。次は七海の番」
樽におもちゃの剣を刺した桔梗。
樽の中にいるマスコット? うーん……ちょっと叩きたくなるような表情のウサギが出てこなかったので、次は七海の番になる。
「ちょ!? 会話に集中してどこに刺すか考えてなかった!!」
「……運」
「適当でいいと思うよ?」
「二人は自分の番じゃないからそういえるだけじゃん! ちょっとまってよ……うーん……」
樽をマジマジと眺める七海だけど、どこがアウトかなんて外から見ても分からないから意味が無いと思うんだよね。
……迫力が無いと言っていた割には、かなり集中して楽しんでるよね。
「そう言えば、望月君が雪に何かお願いをしてたみたいだけど何だったの?」
「……袋作り?」
「どんな袋を作るつもりなのかしら」
「……んっと、これぐらい」
雪が腕で大きさを表現した。その大きさは抱きかかえられるぐらい? のサイズ。うん、雪の小柄な体での表現だから。
ただ、その大きさ的に思いつくのは枕かクッションかといった感じかな。
「ガマの綿毛を使うつもりかしら」
「……もふもふ」
「確かにあの綿毛で作ったらふかふかで気持ちよさそうだよね。って、七海まだ悩んでるの?」
「ちょっとまって……えっと、ここがこうだから……私は此処に刺す!! って、のおおおお!!」
あ、ウサギが顔を出した。
しかもその顔は七海の方をしっかりと見ていて、七海からみればあの憎たらしい顔と向き合っている状態。イラっとしそうだなぁ。
「なんでだよ! 安全だと思ったのに!!」
「いや、どう考えても運よね」
「……不運」
「まぁまぁ。えっと、ゲームを変える?」
というよりゲームは絶対に変えた方が良いと思う。
だってこのゲームは七海の勝率がものすごく低い。もしウサギを出した方が勝ちであれば、七海の勝率は7割から8割なんだけど……逆だからね。
それだけ負けが続いているからこそ、七海がムキになって刺す場所を選んでいたってのもあるんだけど。そろそろ、頭の血管が大変なことにならないかな? って事でゲームをチェンジしよう。
「あ、七海。望月君って他に何か作ってたかしら?」
「ん? あー……そうだなぁ。あ! 馬の尻尾とか弄ってたと思う」
「馬の毛?」
「……尻尾」
「そうそう。なんかこう尻尾の毛で糸? を作ってた」
一体何に使うつもりなんだろう? シュンメーの尻尾って火属性で扱うのが難しいって望月君が言っていたと思うんだけど……何か使い道でも見つかったのかな。
あ、もしかしたら桔梗なら何か思いつく事があるかも。
「ねぇ桔梗。桔梗なら望月君がやろうとしている事って分かったりしない?」
「えっとそうね……火属性の糸って事になるのよね。うーん、私が使うならだけど……」
桔梗が使うならと前置きをしてからだけどその内容と言うのは、毛を有刺鉄線の代わりにするとか、編み込んで防寒具にするとか、カーテンを作って冷たい風が入ってくるのを防ぐとか。……割と使い道があるんだね。
「あれ? でも有刺鉄線の代わりは厳しいんじゃない? 防寒具とかに出来る程度の熱さならダメージが無いと思うんだけど」
「全部予想よ。どれぐらいの能力があるか分からないもの」
「なるほど。って事は全て望月次第って事じゃん」
「いや、望月君次第ってより素材の能力次第だと思うよ」
火属性として、威力が高いのであれば防衛用に。ちょっとした温かさがある程度なら防寒具や風除けに。
素材になった物がどれぐらいの能力かで、その使い道が変化するって事だよね。
「あ! それなら、あったかいカーペットも作れるって事じゃないかな?」
「冬場の敷布団にも良さそうよね」
「……ぽかぽか?」
「思うんだけど、今から防寒を気にしてどうするよ……そもそも寒くなるかどうかも分からないじゃん」
「七海……こういうのはいつそうなるか分からないからこそ準備しておくものなのよ」
冬かぁ……この島に冬ってあるのかな? というより、そんな季節が来ても私達はまだこの島にいるって事なのかな。
なんだか考え方が、帰還からどんどんとこの島での生活がベースになってきている気がするよ。……確かに、生き抜く為には必要な物をって考えるのは当たり前なんだろうけど。
「ま、桔梗の言う通りなんだけどね。備えあれば憂いなし! だよね」
「……はっ! 食料」
「そうね。万が一のことも考えて保存食も大量に用意しておいた方が良いかもしれないわね」
「……まだ雨季なんだけどなぁ」
「雨季の次が冬じゃないなんて誰が決めたのよ……この島だとどういうタイミングで夏や冬が来るかわからないのだから」
あ……確かに、雨季の次は夏が来るって無条件で考えてたよ。
でも普通はそう考えちゃうよね? 七海も雪も桔梗に言われて「はっ!?」と気が付いたみたいだし。
もしかして望月君も桔梗みたいに考えているから、色々と準備しているって事なのかな? もしそうだとしたら……この2人の頭の中ってどういう構図になってるんだろう?
ブックマークに評価などなど! ありがとうございます!(o*。_。)oペコッ
色々と素材が増えたために、景君ははちゃけてしまったようですw
きっと今頃、魔力ガー……と唸っているかもしれません。