交渉結果が良すぎて困る
秋山さんから話を聞き、俺は一体どれだけ吹っ掛けて来たんだ……と思ってしまった。
だってさ。大量にある米がクルミ以外にも錬金素材とレアアイテムであるボックスフィッシュの箱に変わったんだよ?
しかも、ボックスフィッシュの箱に関しては結構な量を手に入れて来たみたいで……。なんか、こちらが儲けすぎじゃないかなって相手に少し悪い気持ちになるよ。
「あ、それで情報交換はどうしたの?」
「新フィールドの事は伏せたわ。まだまだあのフィールドを独占したいというのもあるけど、彼等のレベル的に少し早い感じだもの」
「そっか。確かに教えた結果。彼等が怪我をしたり、死者なんてでたらと思うとな……」
「リーダーの鈴木さんと言ったかしら? あの人なら周囲の人をコントロールをして、危険な場所には近寄らせないと思うのだけど……強くなれると分かると暴走する人も出て来るものね」
こんな地でサバイバルをしているから忘れがちだけど、俺達ってまだまだ高校生なんだよね。それで、こんな中二病的展開になりえる環境だと……暴走する人は出てくるよね。
もっと強い魔法を使いたい! とか、強い剣技でモンスターを討伐したい! って。だって数年前が中二だったのは間違いない話だし。そりゃ、そんな病から抜けきっていない人は多いよ。
だからこそ、秋山さんは新フィールドの内容を秘匿した。そもそも、新フィールドに行く為にはフィールドボスと戦わないといけないしね。……レベル的にそのボスで怪我人が出てもおかしくないのだとか。
「じゃぁどんな情報のやり取りをしたの?」
「もう一つのグループについてかなぁ……」
例のグループ。
冬川さんにトラウマを植え付けた女リーダーがいるグループなんだけど、確かに彼女との交渉は難しいと思う。何せ初手で能力マウントをとってくるような人だから。
これが、交渉材料のマウントであれば話はできたと思う。まぁ、秋山さんは少しやりすぎだと思うけど……相手の人が喜んでいるからなぁ。
と、秋山さんの交渉材料マウントに関しては横に置いておくとして。
女リーダーのやり口は到底受け入れることが出来ない方法だ。
自分達の力の方が上だから、お前ら下につけ! というやり口に近いものがあるからね。そんなの受け入れられるか! って話だよ。
そしておそらくだけど、彼女はそのやり方を変える事はないだろう。
理由は単純。自分達が人をコントロールしないと……いや、人というより男をかな。うん、男をコントロールしないと暴走するって思いこんでいるからね。
確かにそう言った現実があって、彼女達はその被害者なのだろう。
だけどそれを、上手く回っているグループに強要していいのかと言えばまた別。
もし彼女達が他のグループを配下に付けた場合……行く先は内乱じゃないかなぁ。だってそれまでは男女仲良く協力体制がとれていたのだから。
それが、奴隷に近い扱いを受けるようになればどうなるか。
「だから彼等には注意喚起をしておいたわ」
「なるほどね。まぁ、女リーダーたちも此方に干渉しないって言うなら別に問題なんて無いんだけどね」
「どうかしら? 自分達を襲撃してくるかもと思っているとしたら……」
「……被害妄想」
「雪はそういうけど、分からなくもないじゃん」
こればかりはどうしようもない。
なので俺達にできる事は、なるべくお互いが接触しないようにするという事。そして、他のグループにも下手に女リーダー達のグループを突かないようにしてもらう事。
そういう扱いをしておくだけで少しはマシになるんじゃないかな。うまくいけば、時間が彼女達を癒してくれるのでは? という期待もあるかな。
「それにしても、私達や鈴木さん達に彼女達のグループを合わせても、まだまだクラスの全員を発見している訳じゃないのよね」
「んー……となると、どこかで拠点を作っているグループが他にもあるのかな」
「……敵にならないなら良い」
「最低でも1つはあるでしょうね。ただ、人数的にも多くて2つぐらいじゃないかしら」
秋山さんが指を折りながら数を数えている。
「えっと、私達が男1人に女4人でしょ、で、今回接触した相手が男女共に7人ずつだったわ」
「もう一つのグループが、えっと……男9人女4人だったけど、男の人が3人臥せっていて、もう一人がさ迷っていたんだよね」
「……ん」
「男4人……教師とその金魚の糞だった訳だけど、彼等がどうなったかは分からないからなぁ」
多分だけど、女リーダー達が解毒薬を破棄しているだろうから、男3人は既に……もう1人の男子もおそらくだけどモンスターにという状況じゃないかな。と思うけど口にはしない。
「とりあえず。その数で考えると出会えていないのが男子3人で女子が5人なのよね」
「確かにグループとして考えるなら1グループって考えるのが妥当かも」
「よく考えると私達の人数が少ないじゃん」
「仕方ないよ……てか、そもそも私達って逃げてきたところを拾ってもらった感じだし」
そうなんだよね。そもそも俺は1人だったから……明らかに俺だけがおかしい状況だった訳なんだけど、システムさんこれはどういうことですかね? まぁ、お陰で助かったんだけどね。
「望月君みたいなイレギュラーが起きていない限り、おそらく1グループよね。さっきはもしあっても2グループとは言ったけど、2つもあるかしらというのが正直な感想ね」
「問題はどこにあるかだよ。結構周囲を探索したつもりだけど、全く見つかって無いしね」
「鈴木さん達も他のグループとは接触していないみたいだったわ。というか、そもそもグループ同士の接触は私達が初のようね」
ただ、保護を求めてきた人達はいたらしい。
「前例があったからこそ、私達が彼等と接触した時に「保護か?」と問われたのだけどね」
「ま、女子が3人で行動していたらそう考えるのも当然かなぁ」
「望月も体験した内容だし?」
「そうそう。あの時は面倒だなぁ……って、オモッテナイヨ?」
「……絶対思ってた」
はい思っていました。でも過去の事だからね? だから、そんな悲しそうというか厳しいというか、そんな雰囲気を醸し出すのは止めてもらえませんかね。なんて思いを気配で放出しながら……だけど、これってもうネタだってのは分かってるんだけどね。
「ぷ……あはは! 望月の事は分かってるから。冗談だよ冗談。あの当時はそう思われてもしょうがないよなぁ」
「だね。寧ろそれでも助けてくれて感謝だよ」
「……ボーナスに釣られた」
「ぐっ……確かに釣られての救助だったのは事実なんだよなぁ」
もう既に随分と昔の事と言えるような話。だから、こう皆の中ですでに笑い話として昇華されてしまっているんだよね。
おかしいよね? まだ2か月とちょっとしか時間は経ってないのに。……それだけ濃厚な日々って事なんだろうなぁ。
「と、そんな思い出話は今はいいのよ。問題はもう一つのグループがどこにあってどんな人たちなのかって事なのよね」
「鈴木さん達と接触したから、そっちもちょっと気になっちゃうよね」
実際は、会えるなら会えたで会えないなら会えない。それでいい話なんだけど、確かに気にはなるよね。
正直、ここまで遭遇していないのだから、出会う事なんて無いのでは? って思ってしまうんだけどね。いやでもそれは危険な考えかな。
「良い人達だったら米で交渉をして、素材を大量ゲット出来るのよね」
「いやまぁ、それは今回の相手に錬金術師が居なかったからじゃないのかな?」
「あー……確かにその可能性はあるわよね。錬金術師が居たのなら、ボックスフィッシュの箱なんて手放さないものね」
現状だと最高のレアアイテムだからね。
俺としても今回手に入ったことで、ポーチとチェストを量産してマトリョーシカ状態を増やすことが可能になった訳だし。
あ、でも流石に悪い気もするから、チェストを一つぐらい鈴木さんとやらに融通するのもありかも。
ブックマークに評価などなど! ありがとうございやす(o*。_。)oペコッ
どう考えても貰いすぎ。という訳で、望月君は相手の事も考えてチェストを譲るべきでは? 思っているようです。
……最初はだれも信じるか! てか近寄るな!! と考えていた子が……随分と成長して(´;ω;`)ブワッ
まぁ、こんな状況で生き残る為には、周囲も利用する必要がありますからね。帰還することも考えているのであればなおさらです。なので、最低限良好といえる関係は築くべき。と彼も考えることが出来るようになったのでしょう。