もちもちもっちー
錬金術。それは生活水準を向上させる為には最高の技術!
いやね? こうポーションを造ろうと思っていた訳なんだけど、ちょーっと夏目さんの視線が痛いから、先にハンドクリームを作ったんだよね。
夏目さん自体は何の要望も無かったのは理解しているし、そもそもご飯とかを放置する俺への監視だってのは分かっているんだけど……ちょっとその監視の目が痛かったというか。
てなわけで、そんな彼女からの視線を回避する為に用意したのはこちら。
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スキンクリーム(普通)
特性:薬効
メインの材料はイシャイラズ。
保湿にヨシ! 火傷にヨシ! 外傷にヨシ! といった万能薬用クリーム! 一家に一つどうでしょう?
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ど、毒舌が無いだと……。うん、きっとシステムさんは今日休んでいるんだろう。
そうそう。ハンドクリームを作るつもりだったけど、これは他にも使えそうだね。洗顔の後とかでも。
これが1つあればオッケー見たいな感じだし、これなら満足してもらえる一品になるかな? とりあえず、これで夏目さんの気が俺からずれてくれれば今は上々だと思う。
って事で! 彼女にこのクリームを渡してみよう。
「夏目さん。試作品一号が出来たんだけど」
「ん? ポーションでも作ったん?」
「いや。スキンクリーム」
「へ?」
竹筒に入ったスキンクリームを彼女へ向かってポイっと投げる。そして、俺は直ぐに錬金台へと向かい次の作業に取り掛かる……のだけど、何やら背後から一人で騒いでいる声が聞こえて来るなぁ。
因みに聞こえてくる声だけど、「ちょ!? マジ!?」「なにこれ! めっちゃ良い匂いじゃん」「おぉ! ちょっとまって!? なにこれなにこれ!!」と、実に騒々しいのだけど、喜んで貰っているようなので製作者としては嬉しいかな。
さて。これで思惑通りに彼女からの鋭い視線が散った。なので、思いっきり錬金術に没頭できる!
集中さえしてしまえば気にならないんだけどね。集中するまでがなぁ……見られていると、その視線がすっごく気になってしまうんだよね。
という事で、そんな気になる視線から逃れる事が出来たので……レッツ錬金術!
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ワイワイガヤガヤと実に賑やかな声が外から聞こえて来た。そしてその声で、俺は現実へと引き戻される。
「あ、もう外が赤くなり始めてる……」
うん。また昼食も忘れてがっつりと錬金術に集中してたかな。まぁ、そのお陰で沢山のアイテムが作れたよ。
んー! と伸びをしながら外へと出てみると、声の主である女子達が拠点の中央広間で談笑をしていた。
「あ、もっちーが出て来た」
「お疲れもっちー」
「……もちもっちー」
「もっちーお疲れ様。何か良い物でも作れたのかしら?」
な、何故に全員で〝もっちー〟呼びを!?
「だってねぇ……ほら、次は忘れないって言ってたのにねぇ」
「……もっちーダウト」
「結局私が跳ね橋を操作したじゃんか。もっちーは全く気が付く気配無かったし」
「やっぱりもっちーには誰かつけておく必要があるわよね」
……もっちー呼びは罰ゲームか何かなのか?
冬川さんに呼ばれるのは慣れたというか諦めが付いたんだけど、他の人に呼ばれるのはなんかこうくすぐったいというか、羞恥心を刺激されるというか……実に気分がよろしくないよ。
あ、だからこそ罰ゲームなのか。
「いや、うん。とりあえずその呼び方は止めて欲しいかなぁ」
何せシステム公認で称号になっているし。出来ればこれ以上は広げて欲しくないというか、下手に刺激をして称号だけじゃなくなったら嫌だなぁなんて思っている訳で。
例えばだよ? 例えばだけど、ジョブがもっちーとかになったら……もう一体なんなんだよ!! ってなるしね。他にもスキルにもっちーとか。本当に意味が不明だよね。でも、このシステムはやりかねないから。
という事で。彼女達にはその呼び方で呼ぶのは止めて頂きたいのだけど……その理由を説明する訳にはいかない。
だって、説明しようと思ったら称号にもっちーが有るって事も話さないといけない訳で……うん、それこそ更に恥ずかしい気持ちになってしまう。
てか……なんでこの称号って考えるだけで恥ずかしいって思ってしまうのだろう? ぶっちゃけ、冬川さんが勝手に呼んでいる愛称みたいなものだよな。別に恥ずかしいモノでは無いはずなんだけど……。
これは謎の効果でも発揮しているのかもしれないね。
とりあえず。ここは彼女達の呼び方を改めさせる為にも、必殺兵器を出すしかない!
「……これが欲しければ」
「望月君。早くそれを此方へ」
おおう! 流石秋山さん。切り替わりが早いこと。
まぁ、この竹筒の内容物は知っていて当然だよね。何せ夏目さんに一つ渡しているから、直ぐに連絡を取り合ったハズだしね。
「……もっちー腹黒」
「なんとでも言えば良い。流石に全員からあの呼び方をされたら精神的にまいってしまうよ」
「……大ダメージ?」
「大ダメージだったなぁ。それはもう、大量出血で倒れそうなレベルで」
「……大勝利」
「ドロップ品はスキンクリームでしたって事で良いですかね?」
「……よき」
冬川さんと若干コントみたいな会話。だけど、誰もそのやり取りを聞いている人はいない。だってねぇ……皆さんクリームに集中していらっしゃる。
「夏目の言う通りだわ……クリームを塗った右手と塗って無い左手だと全く違う」
「効果が出るの早いよね。こう、塗った方は肌のオーラというか輝きが違うよ」
「でしょでしょ? 私が言った通りじゃん!」
とまぁ、実に楽し気にクリームについて会話をしていらっしゃる。てか……。
「冬川さんは混ざらなくて良いの?」
「……ボクは不必要」
そう言いながら、玉のような手を天に掲げ、もう片方の手でその掲げた手を突いたりしている。
ただ、何を思ったのか。ちゅん吉がその掲げている手に着地。そして、翼を広げて「どやぁ!」とポーズをとっている。……一体何がしたいのだろう。
とりあえずあれか。冬川さんの場合は見た目のサイズ通り? で、肌の年齢も若いって事なのかな。いや、若すぎるというか……うん、これ以上は言うのをやめておこう。いろいろな方面と敵対しそうだ。
てかね。正直、他の3人もまだまだ気にするような年齢じゃないと思うんだけどなぁ。……作った俺が言うのもなんだけどね。まだ高校生よ?
「今からケアをしないと将来泣く事になるのよ!」
「そうだよ! ほら、雪もしっかりとケアしておかないと!!」
「全く……もっちーはコレだからダメなんだよ。折角良い物を作ったのに、自分の発言で株を落としてたら意味が無いじゃん」
なにこの集中砲火。うーん……これが男子と女子にある意識の違いってやつ? 全く分からないよ。
「……ボクは大丈夫」
「大丈夫とかそういうのは良いから。ほら、雪も塗ってみて」
ま、まぁ……彼女達が実に楽しそうだから良いんだけどさ。
てか、何でさり気なく夏目さんはもっちー呼びをしてるかなぁ。それを回避する為にクリームを早々にばら撒いたというのに。
「てか、最初にばら撒いたのは失敗だったかな。これ、延々と話が進まないフラグだ」
「……もっちー失敗」
他にも沢山作った物があるし、彼女達の報告も聞きたいんだけど……これ、まだまだクリーム談義が続く流れだよね。
で、それを止めに行ったら、間違いなくもっちー呼びが再開される気がする。
これは満足するまで語らせるしかないかなぁ。これは保身の為に墓穴を掘ってしまったって事だよね。
次からは新作の物を出す順番には気を付けないと。それに、そもそもだけど、もっちー呼びとかそういう流れにならないようにしないとだね。
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タイトルの意味。
それは望月君の呼び方だけではなく、お肌のもちもちも合わさっております(≧▽≦)
ちょっとしたケアとかは大切ですからねぇ。特に、こんな戦闘やらサバイバルな生活をしていたら尚更。レベルアップで身体の維持にブーストが掛かっているとはいえ、こういうのは気になる物だと思われます。……まぁ、物が揃い始めたから騒げる内容ではありますがw




