大収穫
相手の拠点も割れたという事で、俺達は新フィールドの探索を開始した。
一応ちゅん吉には、そのまま相手の拠点を監視して貰いつつ、ついでに行動出来る範囲もチェックしようという事に。まぁ、相手の調査は戻って来てからも出来るから、もはや蛇足では有るんだけどね。ついでだついで。
新フィールド。何があるか分からないから、空の警戒が出来るちゅん吉を待とう。と言う話はどうなった? と思うかもしれない。ただ、この場で米の採取をしている間にも、ちゅー太にあちらこちらへと走り回って貰ったんだよね。
それで、かなり安全と言えるルートを発見。しかもそのルートには新しい素材が一杯だというじゃないか。
これはもう行動を開始するしかないよね? 採取しながらの移動だからゆっくりと進む事になる。そうなると、既に索敵した後の場所を行くだけだから、危険は少ないだろうって判断。
それに進む方向は、前回レベリングをしたモンスターラッシュがある方角とは別だからね。スズメが出るかどうかは分からないけど、猛獣やら馬やらは居ないだろうと思われる。
てな訳で、探索を開始した俺達だけど、俺は既にお宝といって良い素材を手に入れる事が出来たんだ。
「それにしても。まさか一発目から当たりを引くとはなぁ」
「……刺さりそう」
「肉厚が凄いわね。これほどの厚さのものって初めて見たわ」
何を手に入れたか。それは、ある意味万能薬草と言えるモノで、その鑑定内容が……。
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イシャイラズ(普通)
特性:薬効
万能薬草だよ! 火傷・切り傷・虫刺されに! 食べればお腹の調子や痛みにも!! あ、加工方法次第では、ハンドクリームにも!! 肌がぷるぷるのつるつるに!!
錬金素材でもあるからね。
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鑑定内容がセールスかな? てか、名前……アロエじゃないんかーい! その言い方は、日本の民間で使われている俗称じゃないか。
一時期、ヨーグルトやジュースにその果肉が入っているモノが宣伝されていたけど、今はあまりその宣伝を見ないような? 物自体は売っているみたいだけど。
とりあえず。そんな現状は見る事が出来ないCM事情は良いとして……鑑定内容からして、これは本当にお宝と言っても良い植物で良いよね。
「石鹸の次はハンドクリームね……錬金術様様と言った感じかしら」
「食べすぎは注意する必要があると思うけど、お腹に良いのは嬉しいかも」
「……栽培」
「たっぷりと確保する必要があるよな!」
うんまぁ、女子達が全力で採取してくれているから、あっと言う間にアロエが山積みに……とりあえず、俺はアイテムチェストを取り出して、このアロエをしまうのが仕事になりそうだ。
そんなこんなで、お宝採取の旅は笑えて来るレベルで沢山の物を確保する事が出来た。……てか、ぶっちゃけアイテムチェストが足らないかな。
他に何があったかって? 川の近くにはガマやイグサにクズやドクダミ。他にもタンポポやらサルビアにサツキなんかも!
サルビアとサツキとか、思わず鑑定した後に手に取って、ちゅーと吸ってしまった。とっても甘かったです。
あ、因みに鑑定結果は、大体全てが知っているモノと大差の無い内容だった。と言うか、むしろ強化されているって感じ。あの、レモンに似た山椒とは違うみたいだね。お陰で気兼ねなく吸える。じゃない、使えるよ。
てか……冬川さんが暴走している。
ガマを採取して、〝ファイア〟で焼いてモキュモキュと食べている……。いや、実に美味しそうに食べているんだけど、「食べる事が……」と言った瞬間に行動するのは止めて貰えないかなぁ。
あ、でも本当に良い物が一杯だよね。イグサとかは畳が作れそうだし、ドクダミは癖が強いけどお茶に出来る。タンポポもコーヒーが作れるし、クズはクズモチとかが。しかも、クズもドクダミも薬に出来るしね。
なんて事を考えていたら、なにやらボフッと小さな爆発音が。
「何が……って、冬川さん何してるの?」
「……こすってみた」
「ガマの穂ってこすると爆発するのよね……でも、音はしないはずなんだけど」
変なところで強化されているらしい。
実際のガマも、こすったり摘まんだりするとモモモモと言った感じで綿毛が飛び出してくるんだけど……うん、今起きている現象はその比じゃない。本当にまき散らす様に爆発している。
「手にダメージは無いみたいだけど」
「……寧ろ幸せ」
「もっふもふね」
冬川さんの手がもふもふとした綿毛に包まれている。うーん……この綿毛何かに使えないかな。あ、布団とかにしたら最高かも。
因みに、ガマもたしか薬になるんだよね。花粉の部分だけど、利尿作用があったり外傷にもつかえるとか。……今回手に入った物、食べられてお薬になるもの多くない?
「大収穫と言った感じじゃないかしら?」
「使える物が多いのは間違いないかなぁ」
食料・薬以外にも、飲み物に生活用品に使える物が一気に手に入った訳だから。これを大収穫と言わずして何というのだろう。
ただ、これを育てるの大変じゃないかなぁ。あれか? プランターが必要になるんじゃないかな。ドクダミやクズとか、適当に放置したら辺り一面を埋め尽くすような植物だし。
大量に確保するから急ぎはしないけど、栽培方法はしっかりと考えないと不味そうだよね。
実は植物以外にも発見をしたモノがあったりする。
手に入れた量は限りなく少ないんだけど……川の中になにやらキラキラしたものを発見したから拾ってみたら。うん、砂金でした。
本当何に使うんだ? って話だけど、ファンタジー的なアクセサリーを作るのはありかもしれない。魔石と合わせたりしてみれば、何か面白い効果も出そうだしね。
鑑定結果には錬金素材って書かれているから……まぁ、間違いないと思う。
こうなると、磁石を作りたくなるよね。ほら、砂鉄とかを回収できそうな気がするし。……まぁ、ただのロマンだけど。
既に鉄は手に入っているし、錬金術を上手く使えば純鉄から合金まで出来なくは無いからね。……まだまだ、レベルが足らなくて微妙な感じにはなっちゃうけど。
とりあえず。今回の遠征は大成功と言う事で。
おかしいな? もっと色々と発見するには時間が掛かると思ったんだけど……思いのほか一日で大量に発見してしまった。
アイテムチェストの中身も満タンになっちゃったし。予定していた日程はまだまだ期間があるんだけど、この後どうしよう? モンスターでも狩るとか? それとも、もう少し探索をしてみるのも。あぁでも、それで新しい発見があったらと思うと……チェストに空きが無さすぎる。
「いったん戻るべきかしら?」
「鶏達に色々と言われそうだよぉ……きっと「あれ? もう逃げ帰って来たの?」って目で見られるよ」
「大量に収穫したから逃げてきた訳じゃないじゃん。気にする必要なんてないって!」
なんならお米もたっぷりあるからな。美味しい米を鶏達に少しぐらいは分けても良いと思う。
「俺としては、ポーション作りとかをしたい気もするかなぁ……ほら、ハンドクリームとかも気にならない?」
「……今直ぐ帰りましょう」
「ケアは大切だよね!」
「……葛餅」
レベルが上がって肌とかの維持が楽になっているとはいえ、やっぱり気になる部分も出て来る訳で……美容関連の話は彼女達にとってはクリティカルヒットと言える内容なんだよね。若干一名は違うモノをご所望だけど。
「あ、ガマの綿毛で枕や毛布を作るのもありだよね」
「……一体どれだけ必要になるのかしら」
「爆発した後の綿毛が異様に多いから、其処まで沢山爆発させる必要は無いと思うけどね」
「……もふぅ」
ガマの穂を一つ爆発させれば、ちょっとした枕の3割から半分ぐらいにはなる量。一体あの小さな穂にどれだけ詰まっているんだ……って思うけど、これもまたファンタジーな状況だからと納得するしかない。
それに、量が沢山手に入るって事は、それだけこちらとしてはありがたい話ではあるしね。
そんな訳で、予想以上の収穫のお陰で直ぐに拠点へと戻る事に。……そしてまた、錬金な日々になりそうだよね。
「って、しまった。新装備のチェックをしてない」
「「「あっ」」」
「……倒す?」
うんまぁ、少しはモンスターとも戦っておかないとかな。
新しい武器の性能チェックも兼ねての遠征だったしね。……良い物が確保出来過ぎて、つい忘れてしまっていたよ。
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ガマの爆発動画。見て見ると面白いですよ! もこもこって、もこもこもこって綿毛が溢れ出て来るんです(≧▽≦)
実際に自分で試すのも良し! かと!