ちゅー太とちゅん吉を眺める会
鶏と実験農場の様子を見る。
ついでにだけど、意思疎通が出来るのなら……ワンチャン鶏達にお願いが出来ないか? と、彼等に話を振ってみる事にしたんだ。
「なぁ。この農地なんだけど、芋以外の草とか排除して貰えるか?」
「コケ?」
「えっと、ほら、こういった感じの草かな。これがあると芋が育たないんだ」
普通に考えたら頭が狂った? と思ってしまう様な行動だけど、この島だと普通に出来てしまう可能性が高いんだよね。
そしてその予想はある程度あっている訳で。
鶏達は俺が指定した草をパクッと咥え、グイッと体全体を使って草を地面から引っ張りだした。
そしてその引き抜いた草だけど、普段なら紙を作ったりする時の材料にしたりする。なので、ある場所に纏めて積んでおいてもらおうと思ったんだけど……何を考えたのか、鶏達はその草をモシャモシャと食べ始めてしまったんだ。
なんで!? と衝撃を受けたんだけど……よく考えてみよう。俺達が捕まえる前だけど、何も食べるモノが無い時とか草すら食んで生き抜いていたのかもしれない。だとすれば、草は鶏達にとってご馳走では無いが食べられなくはない。そんなモノの可能性がある。
「えっと……ここを開放したら草を食べておく?」
「コケェ!」
餌は用意しておけ! と、翼を広げてアピールする鶏達。うんまぁ、草に比べたら美味しさなんて段違いだろうしね。
とは言え、農地を開放しておけば鶏達は最低限生き延びる事が出来そうだ。
これなら水も食料についても解決したと言っても良いかな。……まぁ、芋だけは食べないようにお願いしておかないと。
遠征における一番と言える懸念が解決した。
うん、何かの襲撃よりも鶏達の機嫌が悪くなる方が懸念なんだよね。機嫌が悪いと美味しい卵貰えないし。
ただ、そんな問題も解決したので、今回の遠征は少しぐらい期間が延びても大丈夫だ! と言える。……一応、予定通りには帰ってくるつもりだけどね。
「で、今回の目標だけど。猛獣の討伐と新素材の調査かな。新フィールドはまだまだ探索したりない箇所が多いしね」
「出来ればあちら側にも拠点が欲しいわね。簡易で良いのだけど」
「厳しいと思うよ? だって管理できないし、それにモンスターに拠点を奪われたら奪還が大変だよ」
「そうね。確かにそう考えたからこそ、前回使っていた簡易の拠点は潰したわけなんだけども……」
とは言え、また最初から用意するのは面倒臭い。と言う秋山さんの気持ちは分からなくもない。
拠点を準備している間の時間が勿体ないもんね。毎回最初からやり直しとか、一体どれだけの時間をロスするのかって話だし。
だから、新フィールドにも活動拠点が欲しいのは分かるけど。
「モンスターが全くいないとかそういった場所が有れば良いけど」
「……今のところ無い」
「それなら今回はそんな場所も探すって事じゃダメなん? どうせあっちこっちと歩き回るし」
ニシシと笑いながら夏目さんが場所探しもしようと言う。
うーん……確かに、良い場所を探すのはありだと思う。でも、それには色々と条件もあるんだよね。
それでその条件なんだけど、割とハードルが高いんだよね。
先ずは水場が近い事。まぁこれは当然だよね。長期間活動するにあたって、水は必須なもの訳だし。
次にモンスターが余り居ない事。毎夜毎夜警戒しろとか……それはストレスが溜まって仕方がない。夜中に襲撃でもされたら、皆で起きて迎撃する必要があるから休む事すらままならないしね。
まだまだあるよ? 新フィールドに入ってから少しだけ進んだ程度の場所。
入り口近くもダメだけど、遠すぎてもアウト。ほら、入り口付近だと他の人達が来た時に発見される可能性が高くなるからね。
後、遠すぎてもダメと言うのは、撤退を決めた時に問題となるから。新フィールドから出るまでの間に必要な時間が増えるって事は、それだけモンスターから襲撃される確率が増える訳だしね。なので、一気に駆け抜ける事が出来る距離が好ましいと思うんだ。
「後は農耕しやすい土だとか、水の氾濫が無い場所とか、色々上げていったら限が無いんだけど」
「うへぇ……制限きつすぎじゃん」
「そうなのよね。今の拠点もそういったことを考えて見つけた場所なのよね」
「そうそう。マップとにらめっこしてだったけど」
あの時は、一番最初の拠点を破棄して逃げる事だけを考えていたからね。だから、マップを見て色々と決めてしまったところがある。
ただ、実際に現地を見て、周辺のモンスター環境も確認した後に最終判断をしたんだけど。出来れば、現地の確認とかは事前にやっておきたいよね。当時は急いでいたから仕方ないけどさ。
「新フィールドは今後何度も来ることになるだろうし、一度で全部決める必要は無いけどね」
「前回はレベリングがメインだったけど、今回は探索がメインなんだよね。それなら色々見れるから直ぐに見つかるかも」
「……期待しすぎはダメ」
ただ、俺達が前回レベリングを行った場所。あそこが結構激戦地だったというのは否定出来ないからね。
何せ、ちゅー太に沢山戦えそうな場所を探して貰った場所だった訳だし。レベリングがメインだったから、当然モンスターの濃度が濃くなるのも当たり前。
「って事で、今回ちゅー太には前回とは逆の感じでお願いしようかな」
「チュィ!」
「ピュィィィ!!」
「……ちゅん吉もがんばるって」
冬川さんの腕の中では、ちゅん吉が自分もやるんだから! と、翼を広げて俺に猛抗議。
うん、なんだかごめん。俺の中で、周囲の探索と言えばちゅー太という図が出来上がってしまっていたんだ。
ただ、そんなちゅー太だけど……どういう訳かドヤァ! と言う顔をちゅん吉にみせていたりする。挑発か? 挑発なのか?
「ピチュ!」
「チィ!」
翼をちゅー太に向け、ちゅん吉は何かを宣言するかのよう。
ちゅー太もちゅー太で、尻尾をクィクィっと巧みに動かし、ちゅん吉に対して「向かってこい」と言わんばかり。……仲が良いのか悪いのか。良く分からん精霊達だよね。
「……楽しそう」
ただ冬川さんには、この2体が楽しそうに遊んでいる感じで見えているらしい。……見た目が小動物同士だからなぁ。確かに可愛い感じにしか見えないのは否めないんだけど、一応精霊だからね? 結構凶悪な感じで魔法を撃ったりする事が出来る子達だからね。
ともあれ、そんな頼もしい精霊達に索敵を任せる事が出来る訳だから、調査の成功は約束されている! と言っても良いかもしれないね。
なのでそんな気持ちを込めて、ちゅー太とちゅん吉には「がんばってね」と再度お願いをしておく。
さて、そしたら準備は完璧。懸案事項だった鶏や農地の問題も解決。そして、精霊達はやる気に満ち溢れている。
これ、出発するには完璧なコンディションだよね。女子達も良い感じで緊張しすぎない程度の緊張状態になっているみたいだし。
はっ!? これが、ちゅー太とちゅん吉の策では? あんな漫才みたいな事をしたのには理由があったのでは! ……そんな訳ないか。今でもちゅー太とちゅん吉は、お互いにどちらが沢山のモノを見つけられるか競うつもりでいるみたいだし。
「……可愛いから問題無い」
可愛いは無罪。うん、その気持ちは分かるけど……競い合い過ぎて失敗しないかと言う事だけが、少しだけ心配になって来るなかなぁ。
ま、まぁ大丈夫だよね? なんだかんだといっても精霊な訳だし。悪戯好きな妖精とは違うんだから、現地に行けば意識もきっと切り替わるよね。
「……無駄な努力」
……なんで冬川さんはこのタイミングで落とすかなぁ。もう少し精霊達を信じてあげようよ。
「……ボクが一番信じてる」
どんな意味で信じているなのだろうか? ただまぁ、そんな言葉に精霊達は目を輝かせながら冬川さんへとダイブして行った。うん、まぁ……しっかりと調教されているって事なのかな?
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仲良く喧嘩してくださいって感じですね。良いライバルなのでは? まぁ、特性が現状は似たり寄ったりだから仕方ないのですけど。どちらも索敵寄りですしね。
レベルがある程度あがったら、色々と変化がみられるでしょうね。使える属性も違うわけですし。