夜中のお喋り! その2~七海視点~
拠点へと戻って来た。
思わず「ただいま我が家!」なんて声が出そうに。なんでだろうね。もう長い事この拠点で過ごした気分になるのは。
そんな事を考えながら拠点のチェック。少し長い間、拠点を放置したから何処かに不備があっても可笑しくないと、皆で隈なくチェックをしたんだ。
まぁ、修正する点は見つからなくて良かったけどね! 問題があるとしたら、草むしりがまだまだ残っているという事ぐらい。
「ま! 鶏達も元気みたいで良かったじゃん。あー……これで落ち着いて寝れる」
「確かにそうだよね。でも、なんだか眠れる気がしないよ」
「あぁ、その気持ちは分かるわ。こう、久しぶりにこの部屋だからか、興奮して眠気が来ないのよね」
「……夜食が進む」
「雪、太るよ?」
他愛もない会話。だけど、それすらもこの部屋の中ってだけで数倍も楽しく感じてしまう。
「あ! そう言えば、雪の召喚をみせて貰うの忘れてた……」
「火属性の精霊がどんな感じかまだ見てないわね。まぁそれは明日で良いと思うわよ? 今日まではやる事が沢山あった訳だしね」
「はぁ……でも何だか気になるじゃん」
「……お楽しみ」
あ、どうやら雪は秘密にしておくままのつもりだ。
変化が無い表情だけど、私達にはとってもいい笑顔で私達の事を見ているのが分かる。それはもう、満面の笑みでにっこにこと言った具合の。
「くそう……どれもこれも、農地の雑草共が悪い。こうなったら、怒りに任せて毟りまくるしかないじゃん!」
「そんな事をしたら腰を痛めちゃうよ?」
「そうなったらエリカの回復魔法で! あ、望月に頼んでポーションを貰うのも……そう言えば湿布も作って無かったっけ?」
「えっと、魔法や薬に頼り過ぎない方が良いと思うよ?」
便利な物が有るのに頼るなとか。あぁでも、中毒とかあったら大変か。
それに何が起こるか分からないから、日常的な事で魔力を使う訳にもいかないって事になる。むむ……腰痛を起こしたから回復魔法をと言うのはちょっとアウトだ。確かに、腰痛にならないような行動を心掛けないと。
「そうそう。皆に聞いておこうと思ったのだけど、スキルを振った感じはどうなったのかしら? スキルアップで付く能力だけど、望月君が出した錬金セットの確認とかでその手の話が流れていたわよね」
「あー……確かに。私は支援をMAXにしたから、支援の性能が上がったかな。カンストボーナスも一応入ったけど、こっちは微妙だったよ。ブーストした状態をリリース出来るって感じ」
「……リリースする意味?」
「一応だけど、リリースしたタイミング次第では高威力の攻撃を発する事が出来るみたいだけど。総合的に考えるとね」
「時間でその威力も減って行くって事ね。確かに微妙だわ……威力が一定なら、切れるタイミングでリリースといった手も使えるのに」
そりゃ何とも勿体ないカンストボーナスだ。確かに一撃に全てを掛けると言うのはロマンがあって良いかもしれないけど、それで動きが悪くなってしまうのはね。
直ぐエリカに支援魔法を再度掛けて貰えるなら良いけど、毎回それが出来る訳でも無いだろうから、使いどころが難しすぎる。
「中級の回復は今までの上位互換ってだけかな? 回復量が上がったり、回復魔法に使う魔力が抑えられたりって感じ」
「なるほどね。それだと私もあまり大差がないわね。同じ感じで威力アップと消費魔力を軽減すると言った感じだったもの」
「中級ってのやっぱりただの上位互換って事じゃん。私の弓魔も似たり寄ったりだし」
「……ボクはちょっと違う」
おや? 雪は何やら違う事がおきているみたい。ちょっとそれは詳しく話を聞かないと。
「……召喚魔法に変なのが生えた」
「変なの? 一体どんな感じのものなのかしら?」
「……バースト系の魔法? 召喚時間を減らす」
召喚時間を犠牲にして、召喚した存在を強化すると言った感じの魔法らしい。
召喚した精霊達はレベルがあって、そのレベルでその強さが決まる。ただ、そのレベルだけど、召喚するタイミングでどのレベルで召喚するかを選べるらしいけど。
それで、レベルが上がれば上がるほど、精霊達は強くなる。ただ、強くなる代わりに召喚していられる時間と、召喚者との離れられる距離が減るらしい。
今日雪が覚えた魔法は、そのレベルを操作するような魔法。それも、レベルを上げる方向で。
「因みに、そのバーストは何処まで上げる事が出来るのかしら?」
「……ボクが召喚出来るレベル+1。ただ、それは普通よりも削れる」
ほうほう。バースト魔法は雪の召喚できるレベル内であれば、デメリットも無くレベルを上げる事が出来るって事みたい。ただ、更に一つ上に出来るらしいけど、その場合は極端に時間や距離が削れてしまう……と。
「これまた、エリカのリリースと似たような感じね」
「でも雪の場合は複数召喚出来る訳じゃん? なら、片方一匹にバーストさせるってのは必殺技みたいに使える!」
「……必殺技!」
「ちゅー太スペシャルじゃん!」
「……スペシャル!」
必殺技みたいでカッコイイ! と盛り上がる私と雪。
ただ、桔梗だけは残念な子を見るような目をしている。……なんで?
「あのねぇ……もしそのバーストを使った後に、次の召喚までのクールタイムがあったりしたらどうするのよ」
「流石に召喚出来なくなるってのは無いと思うけどね。でもデメリットが時間や距離のカットだけなのかなぁ?」
「……あっ」
言われて見れば確かにそうだ。
これはしっかりとチェックしてみないといけない。ぶっつけ本番でやる前に、モンスターじゃない猪狩りとかで試すのが良いかもね。
「それにしても、中級化は既存の強化だけかと思ったのだけど。どうやら特殊系はちょっと違うみたいね。強化であるのは間違いないのだけど、その方向性が私達とは違うといった感じね」
「望月君はいきなり錬金セットの強化だったもんね。びっくりしたよ、大きな台や鍋になってるんだもん」
「鉄や魔石も扱えるようになったみたいなのよね。……彼はもしかしたら当分外に出てこないかもしれないわね」
「……錬金狂い」
あー……その光景は目を瞑れば浮かぶレベルで分かる。
下手をしたら、ご飯すら忘れて錬金術に没頭するんじゃないかなぁ。これは、私達が気にかけてあげないとダメなパターンか!
「なんか明日の夜までには新しい何かが大量生産されていそうだよ……」
「……武器?」
「武器は現状のモノでも十分使えるから後回しになるのではないかしら? 恐らく自分が戦えるだけの道具を用意すると思うわよ」
「だとすると強化された爆弾とかか? あ、でも爆弾の材料であるボムベリーが無いじゃん」
「……明日は採取にでも行きましょうか」
望月の作る道具は一発逆転のチャンスがある物ばかりだからな。沢山用意しておいてもらった方が良い。それに、道具だから私達にも使えるしな!
「そう言えば撒き餌は?」
「いや、もうネズミ狩りは其処までやらないでしょう? 倒したところで経験値は殆ど入らないわよね」
「……拠点に来れないようにばら撒く程度」
「そうだね。拠点周りに毒団子を撒いておけば良いよね。そうすれば、拠点に侵入してくる事もないはずだし」
あのネズミ達もモンスターなのに。もう扱いがただのネズミじゃん。
確かに群れるだけの存在だけど、それでも爪は発達しているから引っ掻かれると痛いんだけど? あ、でも痛いだけで済むんだっけ。うん、ただのネズミに噛まれると病気にもなったりするから大変なんだけど、モンスター野鼠に引っ掛かれても病気にはならないから……あれ? モンスターの方が危険度が低い?
「あ、でもネズミも魔石を落とすじゃん」
「……今の所、ネズミの魔石は大量にストックされているわよ」
それもそうだった。
レベリングの為にネズミを大量に狩ったから、その分の魔石が積み上げられているんだった。
「とりあえず! 明日の予定は草むしりと素材の採取にスキルのチェックね。食料はまだまだあるから、少し放置でも問題無いかしら」
「だね! ボムベリーは沢山取っておかないと」
「……海側も気になる」
あれ? おかしいな。今まで頑張って目標を達成した! ってなったのに、やる事が増えたような? うーん……まぁ良いか! やるべき事をやっておけば、それだけ皆の生存率が上がるからな!
ブックマークに評価などなど、ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ
夜中による女子達のお話回。
どうやら他の中級は、本当にただの上位互換と言った感じの様です。当然ですが新しい魔法や技が増えるといったモノは有りますが、特殊なスキルは覚えないといった感じですね。