レッツ錬金術!
本日は三話(≧▽≦) お時間は7時・12時・18時です(`・ω・´)ゞ
この場所に来てから三日目。朝日が昇る少し前に俺は目を覚まして行動を開始した。
「えっと、今日の予定は……」
今日行うべき事を考える。というのも、スマホのアップグレードだとか魔法だとか錬金術なんてモノと遭遇した為に、脳内で構想していた計画が全て狂ったと言っても過言ではない。
いや、実際には色々と生きていく基盤を作るということ自体は変わりなど無いのだが、その基盤を作るという大前提が狂ったのだ。
ジョブを見る限り、未知の生物との戦闘がある可能性は高い。
その証拠に、俺は昨日の時点で日本では見た事のない魚と遭遇した。……身が半分程食べれなくてがっかりした魚だ。まぁ美味しかったけど。
兎に角、あんな生物など見た事など無い。ほかにもウサギはいたが、こっちは俺の知る動物である。ただ、ちょーっと知っているウサギよりは生意気と言うか、イラつかせる存在だったのだが。
「それに、スキルも実際発動したしな」
今のところ使ったのは鑑定と、スマホ内に大切な物と書かれた場所にあった〝簡易錬金セット〟の召喚……いや、取り出しか?
ただ、そのどちらも使えたと言う事は、紛れもなくこの能力は確かに存在するものと言う裏付けでもある。
という事はさ……当然だけど、この魔法で攻撃をすると言う事も出来るし、錬金術で何かを作る事も出来るという事だ。
これは作業が便利になる!! と、喜ばしい事ではあるが、喜んでばかりではいられない。
何せ魔法が使えるのだ。当然、他の人も使えるだろうし、なんなら他の動物だって使ってくる可能性がある。
そう考えると、確実に起こるであろう戦闘は、俺が考えている以上に大変だという事で、情報の上方修正が必要だろう。
「今までは、出て来るとしてクマとか、最悪ネコ科の大型動物……それこそヒョウとかかなって思ってたんだけどな」
あまり考えたくは無いが、魔法を使うクマとか、魔法を使うサーベルタイガーなんてモノが出てきてもおかしくない訳だ。
そう考えると、決してこの場は安全と言うモノではない! という事になる。
「これは本当に、早くセーフハウスを作らねば」
とは言えどうしたら良い? 魔法は思っていたのと違って、自由性など無い様に見える。
いやうん、説明文がどうしてもなぁ……こう、昔ながらのゲーム魔法と言った雰囲気がプンプンするんだよ。こう、ラノベとかみたいに自由度は許しませんみたいな。
因みにその一文だけど、こう書かれていて〝魔法の形は固定だよ! 改良とかも出来ないからね〟……うん、此方の考えなどまるっとお見通しだ! って言って来ている気がする。
魔法なんてモノが使えたら、間違いなく最初にやるのは改良だしな。
しかしそれは許されない様で……魔法職の魔法と言うのは、完全に固定された何かを撃つお仕事なのかもしれない。
「まぁ、魔法については罠に引っ掛かった何かに試すとして……先ずは錬金術かな」
錬金台に乳鉢に鍋。鍋はよくある金物で、木の蓋が付いていそうな、側面が鱗みたいになっている奴だ。……てか、これで錬金を行えと? 釜じゃないのかよ。
ともあれ、簡易だからな。そう無理やり自分を納得させ、その鍋で何が出来るかを考えてみる。
説明文など無い。とりあえず鑑定をしてみるも、出て来る文字は〝簡易錬金鍋〟ぐらいで、レシピなどが出てくる気配など無い。
とりあえず調べねばと言う事で鍋を持ち上げてみる。
鍋の下には鍋敷きの様なものがあり、それには何やら魔法陣が描かれていた。そして、その鍋敷きを鑑定してみると〝鍋はこの上において使ってね♪〟と書かれていただけ。
とりあえず、使い方を教えろ! 説明書が足らんぞ……実践で覚えて行けと言う事か。
愚痴をブツブツとこぼしながらも、とりあえず鍋であるなら大量の水と塩をつくるか! という事で、鍋に海水をぶち込んでから鍋敷きの上に置いてみた。
「あれ? これって火はどうするんだ……」
鍋敷きを燃やすわけにもいかず、とりあえすスマホをピッピっと見逃しが無いか操作してチェックを行う。
錬金・錬金・錬金の項目……と、上から下までしっかりと穴が開くまでと言う気持ちでスマホを凝視していると、〝簡易錬金セット〟の部分にとある説明文が。
「何々……「魔法陣に魔力をチャージすること」とな」
ふむふむなるほど? 魔法陣と言うのは充電式なのか。
さて、一体どれぐらいの魔力量が必要なのか……もしかして、俺の持つ魔力では足りませんなんて事は無いよな? そう考えながら、俺は鍋敷きに描かれた魔法陣に触れ魔力を使ってみる。
魔力を使うのは鑑定の時と同じ要領で良いだろう。まぁ、鑑定の時は鑑定をしたいものを見つめながら「鑑定」と言うだけで出来たが。
「この場合は鍋敷きに触れながら……〝チャージ〟で、どうだ?」
触れた事でなのか、チャージと言った事でなのか、はたまた両方か、鍋敷きは俺の取った行動に反応したようで、何かが体がらズズズズっと抜けて行くのを感じると、それに合わせて鍋敷きに描かれた魔法陣が光り出した。
その光は特に眩しいと言った事は無いのだが、何やら不思議と力を感じるモノで、これはしっかりとチャージが出来たとなんとなしに思えてくる。
なので俺はチャージが完了したと判断し、海水を入れた鍋を鍋敷きの上に置いてみた。
「……しかし反応は無いか」
何かが足らないのか、それとも間違っているのか、鍋の中にある海水はうんともすんとも言わない。
しかし、スマホに書かれていた物はこれ以上何もなく、何のヒントも現状は無い。
うーむ……こう、錬金術で釜を使うと言えば、何かでかき混ぜるとかだろうか? そう考えながら、簡易錬金セットの道具をもう一度見直してみる。
すると、錬金台の横に何やら収納する場所を発見。とりあえずそこを開いてみると……。
「……杖?」
先の部分が少し広がっている長い棒が一つ。
何やらこれを鍋に突っ込んでかき混ぜろ! と言わんばかりのモノ。なので、俺はそれを手にして海水をかき混ぜて見た。
ぐーるぐるぐーるぐる……しかし、鍋には何の反応もない。
おかしい、何が間違っているというのか。いや、海水だから出来ないとか? そう考えていると、何やら脳内にイメージがぽぽーんと送られてきたように感じた。
そして、そのイメージのお陰で、俺は一つ大切な事を忘れていた事に気が付いた。
「これ、俺がやろうと思っていた水と塩の分離だけど、水を確保する場所がないじゃないか……」
このままでは水と塩に分けたとしても、直ぐにまた塩水に戻ってしまう。
何せ錬金術が成功したとはいえ、それは鍋の中で製品が出来るからな。なので、水を入れるモノと塩を入れる入れ物が必要になる。
実に単純なミスを俺はしていた訳だ……全くなにをやっているのやら。
そんな訳で、俺は竹を鍋に入るサイズに切ってから、鍋の中へ投入した。
今、鍋は海水に竹が浮いている状態である。そして、そんな鍋の中身を俺は杖で容赦なくぐるぐるとかき混ぜ始めた。
「お? おぉ! 何やら魔法陣の方に反応が見られるぞ!」
ぐるぐるとかき混ぜていると、魔法陣の光が赤色になったり点滅したりと「何かやってます!」と言わんばかりの反応を見せた。
俺はそんな反応が面白くて、杖を握る手に力が入る。そして、更にぐるぐると回すスピードも速くなっていく。恐らくこの時、俺は杖に力を篭めつつ魔力も込めていたのだろう。
光る魔法陣。光る杖。光出す鍋の中身。
その三つの光が重なると、これで終わりだ! と言わんばかりに周囲がカッ! と眩い光で埋め尽くされた。
「ぐぉぉぉぉ! 目が!?」
正面で光の直撃を食らった俺は、目に大きなダメージを受けてしまった。
思わず片手で目を抑えつつ、次からはサングラスが必要だな……なんて、今は全く関係ない事を考えてしまっていた。今大切なのは、鍋の中がどうなったかだというのに。
そんな、今後の事を考えながら目を抑えていると、ゆっくりとだがダメージが治っていき視界が復活し始めた。
しぱしぱと瞼を何度か上下に動かす。つーっと垂れる涙が頬を濡らすが、これはただダメージを受けたからだ。
決して、今、目の前に見える奇跡の成功を確認したからではない。
「……水筒と塩入れと書かれた竹筒が鍋の中に転がってる」
鍋の中に転がる竹の筒。それが数にして6個程。
5つは水筒で1つは塩入れとなっているのだが、本当にこれは、成功したのだろうか?
とりあえず、此処は水筒の中身を飲んでみて確認してみれば判るか……と、俺は竹の水筒を手にした。
後から気が付いた事だが、まず俺はここで鑑定をしておくべきだった。まぁ、中身はただの水だったので何ら問題など無いのだが……後々の事を考えれば、鑑定を行う癖をつけておくべきなのだから。