拠点に戻って
本日のラスト!
拠点と言っても、ただハンモックと収集所がある程度の場所だが、そこへと戻りながら俺は道中で色々な草やら木の実やらキノコを確保しておいた。
というのも、食べられるかどうかは二の次で、何でもいいから確保しておけという精神。
何せスキルに鑑定があるからな、それならあらかた物を拾っておいて、後で一気に調べれば良いだろう。
そうして拠点へと戻って来た俺だが、とりあえず集めたモノを地面へと広げてから本日の夕食を用意する事にした。もう日も落ちかけて来ているからな、完全に暗くなる前に色々と終わらせるべきだろう。
とは言え、食べ物と言えば鞄の中のお菓子などやココナッツぐらいしか無い。
確かに木の実やらキノコを確保して来たが、今から鑑定をして行くとどれだけ時間がかかるのやら……それに、トラップも朝に仕掛けたとはいえ直ぐに掛かっているなんて事は無いだろうな。
特にウサギ用のトラップはなぁ……あのトラップから俺の臭いが消えるまでは望みが薄いと思う。可能性があれば、水に沈めた魚用の籠トラップだろうか。
「ま、確認しておくか……もしかしたら食べる事が出来る魚が入っているかもしれないしな」
そんな訳で、海まで行って籠に繋がる蔦を引っ張り上げる。
ググっと反発する籠だが、何かが入っているからとかでは無くただの水の抵抗だと思われる。が、どうやら水の抵抗だけでは無かったようだ。
バシャと海水を垂らしながら、籠の中身を砂浜へとぶちまけた。
「……中に入ってのは、あぁ、ヒトデか?」
うん、これは食べる事が出来ない。何かで食べる事が出来るヒトデが居るなんて聞いた事もあるけど、鑑定をしてみた結果、どうみても有毒って出ているんだよなぁ。
という訳で、こんなヒトデは海へとリリースだ。
「えっと、他には……っと、奥に何か居るか?」
ガサガサと籠の中で何かがうごめく音がする。と云うよりも、必死に籠へしがみついていると言った感じか?
そんな訳で、思いっきり籠を振って中に居るモノが外へ出て来るようにする。
ボトっという音と共に、砂浜の上に落ちたそれは必死になって海へと戻ろう跳ねた。
それを見た瞬間、逃がすか! と、竹槍をソレに突き刺す。
グサリと突き刺さった竹槍からは、ソレがなんどかピチピチと動いていたが……ある程度時間が経つとその動きも無くなり完全に停止した。
「よし、お魚? ゲット……で良いのか?」
魚に見えるそれ。ただ、俺の知る魚などでないことは間違いなく……一体なんぞや? と頭を捻るばかり。
そんな魚の見た目は、なんだろうか? 四角いというか、ハコというか……でも、ハコフグとかそういった類では無いのは間違いない。
なんやろな? と思いながら、そんな不思議な魚を鑑定してみる。
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ボックスフィッシュ
箱みたいな魚だよ。箱というだけあって、中には何かが入ってるかも。
ただ、中身はランダムだから、良い物だったり悪い物だったりと色々……外れでも怒らないように!
あ、後、一応食べられるよ! ただ、中に入っているもの次第では……髑髏マーク
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おい、見た目通りの箱って事かよ! しかも髑髏マークって文字で書くなよ! マーク出せよ。
……ってか、どうやって中に詰め込んでいるんだ? 普通にこの魚がパクっと食って中に溜め込んでいるとかか? とりあえず、中身次第では食せるそうだし捌いてみるとするか……てか、どうやって捌くんだろう。
とりあえず、石のナイフを使って魚を切り裂いていく。
ジャキジャキと、一応研いではいるモノの鋭利とは言えない石のナイフ。思ったように刃が通らないのに少しイライラしながらも、箱な魚を捌いていく。
「うわぁ……口でか。小さいと思ったらこれ大きくなるギミックが隠れてるじゃん。てか、箱ってマジで箱なのか……体内に箱を仕込んでるって……」
口から胃に続く道の途中に箱が有った。
いやいや、どう考えてもおかしいだろうと突っ込みを入れたいが、魔法だの鑑定だのがある時点でそう言うモノだと思うしかない。
常識と非常識を認めろという思考で脳内がぐるぐるするけど、とりあえず今は箱の中身だと言う事で、そんな箱を開けてみる。
すると中には……うん、空っぽだった。
念のために鑑定をしてみると、〝空っぽの箱で、はずれだよ!〟と書かれており、何やらイラッとしてしまったのはお約束と言うモノだろう。
ただ、外れとは言え悪い事だけではない。
何も入って無かったと言う事は悪い物も入っていなかったと言う事で、この魚は食べる事が出来ると言う事だ。
そんな訳で、実に捌きにくい魚を必死に切り分け、内臓は……ちょっと怖いから土の中へと埋めておく。こうしておけば、この土を肥料に出来るかもしれないしな。
そして、切り分けた身から骨を抜いて、竹串を突き刺し焚火で炙る事にした。とりあえず、火を通しておけば大丈夫だろう精神だ。あと、一応塩も確保してあるから塩焼きにしておけば味も大丈夫だろう。
「さて、後は焼けるまで待つとして……その間にステータスチェックでもしておくか」
ピッとスマホのステータスアプリをタップする。
自分のステータスのスキル欄をまじまじと見て行くと、ふと昼間には気が付かなかった事を発見した。
「ありゃ? こんな項目あったっけか?」
持っているスキルの下に何かが有り、それをよく見て見ると〝◇〟と言ったマークが10個並んでいる。
なんぞや? と思いながら、スキルをタップしてみる。
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錬金術(初級)
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〈スキルポイントを振りますか?〉
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うん、なるほど? スキルポイントとな……えっと、そのポイントは何処にあるんですかね。
今はレベル1だからな。もしかしたら所有ポイントなんて無いのかもしれない。そう思いながら、ステータスをチェックしてくと、何やらSP1と書かれている文字が見えた。
SP1……SP……あぁ、もしかしてスキルポイントの略か! と思い、とりあえず錬金術にスキルを1ポイント振ってみる事にした。
すると、スキルのページに変化が現れたではないか。
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錬金術(初級)
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簡易錬金セットが解放されました。
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ぬお!? 簡易錬金セットとな。一体それは何じゃらほい? とチェックしてみる。
すると、ステータスの欄には〈大切な物〉と言うページが追加されており、そのページを開いてみると其処には〈簡易錬金セット〉と書かれた文字があった。
なので、俺はその簡易錬金セットをタップしてみた。
ドサッと、目の前に突如として現れた……台と鍋。ふむ、これが簡易錬金セットなのか? と思いながら、まじまじとソレを見て見る。
ついでに鑑定もしてみるが、出て来る文字は当然だが〝簡易錬金セット〟だ。
さて、一体これで何が出来るんだろうか? もしかして、お薬作りとか? でも鍋だしなぁ……まぁ、簡易だから本当に簡単な物と言う事なのだろうか。
台の方には何やら魔法陣みたいなのが描かれている事以外だと、一応乳鉢はあるようだ。……ただ、調薬が出来ると言うのであればフラスコとかも欲しかった気がする。
「ま、使い勝手は後々試してみるとするか……って、さかな!?」
錬金の事で頭が一杯になってしまった為に、ちょっとミスをしてしまった。
くそう、折角美味しく食べる事が出来ると思ったのに、魚が少し焦げ付いてしまったじゃないか。
俺はもくもくと煙を上げる魚を必死になって確保し、泣く泣く焦げた部分を削り取る作業を行うのだった……ぐすん。
変な生物と初遭遇。
あ、後ジョブのスキルがポイント制と発覚です。