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【コント】魔法少女

作者: 蒼ノ下雷太郎

場所:リビング


役:妹=ボケ 兄=ツッコミ


(  )心の声 これも発声する。


妹:

HEY、お兄ちゃん。


兄:

HEYって何だよ、HEYって。無駄に発音いいな。


妹:

私ね、実は魔法少女だったんだ。


兄:

ふーん。あ、今日の夕ご飯何がいい?


妹:

カケラも信じてないな! 信じてよ、お兄ちゃん! ほんとだよ!


兄:

はいはい。あ、ピーマン買ったからピーマン入れるぞ。


妹:

全く信じてないし! その上でピーマン入れるなんて鬼かよ! ……全く、妹の言うこと信じられないなんて。兄としてありえないよ。お兄ちゃん、失格だね。そもそも、人の食べ物にピーマン入れるなんて発想が、


兄:

夕ご飯ナシな。


妹:

それはあんまりじゃないかい!? お、お兄ぃ――お兄様、その、冗談です。いや、その、魔法少女なのはホントだけど、その、お兄ちゃん失格ってのは嘘です。後生ですから……。


兄:

(おかしいな。いつもならここで、魔法少女ってのも嘘だよーん。とか言うんだけど。……いや、でも、まさかな。魔法少女って)

いいけどな、別に。妹が魔法少女だろうと何だろうと。


妹:

え、そこは否定してほしいんだけど。


兄:

えっ、否定してほしいの!?

一体、どういうことなんだい。


妹:

だってー。その、……私じゃないけどね。私の友達の話だけど。


兄:

は、はぁー。

(いや、何で急に他人の話にすんだよ。お前の話だろ)


妹:

そこのリーダーが割と真面目な人でさ。私苦手で。で、それから逃げる方法考えてて。


兄:

そ、そうなのか。

(どういう意味だろう。これって、何かの比喩なのか? ちゃんと言いたいことがあるんだけど言い出しづらくて、魔法少女って単語を比喩にしてお兄ちゃんに伝えようとしてるのか? ……わ、分からない。部活か何かだったら、もうちょっとがんばって、ダメなら辞めればと言いたいけど)


 そのとき、突如妹のスマホが鳴り出す。妹は慌てて手に取ると、相手の名前を見て「げっ」ともらしてしまう。で、スマホを放り出す。


兄:

おい。出なくていいのかよ。


妹:

いい。私、あの人苦手だし。

……もういいの。私、魔法少女は今日で卒業する。今日はテレビ見て、ゆっくりするよ。


妹はテレビのリモコンを手に取って、点ける。すると、近所のニュースが流れているようだ。妙な映像が出ていたらしい。


兄:

……妹よ、今、ニュースで街中に怪物が出たって言ってるね。


妹:

そ、そだね。


兄:

……しかも、怪物と戦う謎の女の子達が現れたって……あ、スマホでチェックしたら、こっちにもあった。複数の人が写真撮ってる。


妹:

………。


兄:

………。


妹:

……ふぅ。


兄:

ちょ、ちょちょちょっ――、黙って出て行こうとしないで!


妹:

だって、やだもん! 私、魔法少女卒業するの!


兄:

いやいや、そうは言っても。そう、簡単に辞めていいものかな!?


妹:

だって……最初は衣装がかわいくて、きみならなれるよって言われたのにさ。最近の魔法少女って、拳で殴り合うんだもん。魔法使わないし。ステゴロだよ。


兄:

そ、それは……物騒だな。もしかして、ブラックなのか?


妹:

あ、いや、条件は最高だけどね。敵を倒したら綺麗な宝石を大量にもらう約束はしてるし。


兄:

(あ、無償じゃないんだ。そこら辺、しっかりしてるな)


妹:

でも、もう疲れてねぇ。お兄ちゃんが反対したからって言って辞めようかと。


兄:

お兄ちゃんを辞める理由にしないの! ……いいのか、妹よ。お前は、本当に魔法少女を辞めたいのか? お兄ちゃんにはくわしいこと分からないけどな。……でも、それでもこれまで、がんばってきたんだろう?


妹:

ハハハッ、それ言われちゃうとなぁ。

ここまでがんばってそれが無駄になるとね。もうすぐで敵も倒せそうだし。

しょうがない、もうちょい、がんばってみるかな。ごめんね、お兄ちゃん。めんどくさいこと言っちゃって。


兄:

いや、俺はいいんだけど。でも――その、本当に大丈夫か。お兄ちゃんが言うのもなんだが、本当に魔法少女が嫌なら。


妹:

あ、いいのいいの。ちょっと弱音吐きたかっただけだから。――ははっ、ほんとごめんね。ちょっと弱音吐いちゃって。でも、私ががんばることで、救われる人もいるしね。

ごめん、迷惑かけた! やっぱ、私行ってくるわ。よーし、敵をボッコボコにしちゃうぞ!


外に出て行く妹。走る足音。


兄:

ははっ、あいつ大きくなったな。グダグダ言ってたのに、晴れやかな顔して。もう、お兄ちゃんに頼る年じゃないんだな。うれしいやら悲しいやら。

あ、テレビにもうあいつ出てるよ。妹、変身するとあんな感じなんだな――いや、あいつ悪役の方かよ! 悪の魔法少女かよ! うわぁー、いい顔して正義の魔法少女をなぶってる……。すごい、いい顔してる。私の友達の話って、もしかして本当に友達の話だったの!? あいつ、友達をいい顔して殴ってるのかよ!

……あいつぅぅっ! くそ、今すぐ行って止めないと。妹よ! ピーマン、生で喰らわしてやるから待ってろ!


終わり

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