第一章 正義の底辺冒険者と呪いの剣2
時はそれから数時間後。
場所は洞窟の奥。
「はぁ……疲れた。でも、だいぶ魔物が出て来なくなったね」
と、言ってくるのはユウナだ。
彼女はさらに続けて言ってくる。
「魔物を狩り始めてから数時間経ったけど、エミールさんってずっと入口で待ってるのかな? なんだか少しバカみたいだね」
「たしかに。ユウナもそういう冗談言うんだね」
「それはそうだよ、あたしだって人間だもん……そういえばさ、さっきはあたしのこと、守ってくれてありがとね――他にも、エミールさん達に絡まれた時、いつもいつも守ってくれて、本当にありがとう」
「別に、僕は彼等がしていることが、間違っていると思っているだけだから」
「それでもありがとう……助かったのは確かだから、とっても嬉しかったよ!」
と、笑顔で言ってくるユウナ。
アルはそんな彼女から、思わず視線を逸らしてしまう。
ストレートにお礼を言われるのが、どうにも恥ずかしかったのだ。
「そういえば、どうしてアルくんは冒険者ギルドに入ったの?」
と、再び声をかけてくるユウナ。
彼女はやや言いにくそうに、アルへと続けてくる。
「人のためっていうのはわかるんだけど……ほら、今の冒険者ギルドってさ」
と、途中で止まってしまうユウナの言葉。
けれど、アルにはその気持ちがよく理解できた。
今の冒険者ギルドは本当に酷い。
昔と違い、弱者から金をむしり取って依頼をうけることしか考えていないのだから。
というのも、それぞれの冒険者ギルドのトップに立つ勇者の末裔たち(エミールもその一人だ)が、大きく影響している。
彼等は勇者の末裔というブランド力を利用し、好き勝手やっているのだ。
冒険者ギルドのことを盗賊ギルドと、揶揄する人々までいる始末。
ようするに、勇者と冒険者はあらゆる人から嫌われている。
それでも、アルが冒険者ギルドに入ったのは。
「父さんがさ、冒険者ギルドに入ってたんだ。無償で人助けをしたりして、ギルドからは注意されたみたいだけど、最後までずっと『人のために』を貫きとおした」
「だから、アルくんもお父さんみたいになりたくてギルドに?」
ひょこりと首を傾げてくるユウナ。
アルはそんな彼女へと言う。
「それもあるけど、僕はいつか冒険者ギルドを中から変えたいんだ。今は勇者達がああだから、集まる冒険者達も次第に堕落していってるけど」
「アルくんがトップに立って、冒険者ギルドの腐敗を正す?」
「僕がトップとは言わないけど、ニュアンスはそんな感じかな……そういえば、ユウナはどうして冒険者ギルドに入ったの?」
アルにユウナが聞いてきたことは、彼女自身にも当てはまる。
ユウナほどギルドの腐敗と縁遠い人物は、居ないに違いないのだから。
と、アルがそんなことを考えていると。
「えっと……アルくんほど立派な考えじゃないというか、ちょっとおかしなことなんだけど……笑わない?」
と、もじもじした様子で言ってくるユウナ。
アルはそんな彼女へと言う。
「笑うわけないよ。どんな目的だったとしても、その人にとっては大切なことだろうし」
「アルくんはやっぱり優しいね――えと、本当は秘密にするように言われてるんだけど、アルくんには特別」
言って、ユウナはネックレスを手に取る。
そして、それをアルへと見せてくるのだった。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。
また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。
ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。
冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。
すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。