プロローグ 淫魔は思ってみる2
魔王ジークが勇者達に倒されてから五百年。
場所は《隷属の剣》の内。
「いやぁ~やっぱり一人で五百年過ごすと暇で困りますね」
長い時の中。
アイリスには一つの変化が起きていた。
「っていうか私、随分ひとり言が増えちゃいましたけど……うーん、少しおばあちゃん臭いですかね?」
これでジークが復活したら、思わず爆裂トークをしてしまいそうだ。
もっとも、それで困るのはジークだけなので、まぁよしとしよう。
(ジーク、魔王ジーク様♪)
アイリスにとって、とても心地のいい名前。
アイリスにとって、考えるだけで熱い物がこみ上げる名前。
「はぁ……魔王様ってば、早く復活してくれませんかね。そろそろ魔王様をぎゅってしたい症候群が、暴発しそうでやばいですよ!」
ぎゅーぎゅー。
もだもだごろごろ。
それから数年、アイリスはジークで妄想しながら精神世界を転がりまわる。
…………。
………………。
……………………。
とまぁ。
そんなある日。
「!」
と、アイリスの魔王様しゅきしゅきセンサーに、何かがヒットするのを感じる。
ジークと同じような気配が、近づいてきているのだ。
「でもこれは……この気配は人間?」
いったい、どういうことなのか。
当然ながら、ジークは魔物の王――人間ではない。
にもかかわらず、ジークの気配を人間が放っているとなれば、考えられる理由は一つだ。
「え、まさか魔王様……人間に転生しちゃったんですか!?」
よりにもよって、忌まわしき勇者と同じ種族。
ひかえめに言って最悪だ。
きっと、ジークも苦しんでいるに違いない。
こうなればアイリスに出来ることは一つだ。
「魔王様ぁあああああああああああああああああっ! こっこですよ! ここ~~~! あなた様の忠臣兼嫁、アイリスはここにいますよぉおおおおおおお~~~~~~~~っ!」
アイリスは剣の内から、外に向けて全力で言う。
「例え魔王様が人間のお体でも、私はついて行きますとも! そして安心してください! この剣を手に取りさえすれば、魔王様は人間のお体でも、確実に魔王の力と記憶を手にできます! さぁさぁ! 早くこっちに来てください魔王様!」
ここ数百年、ジークで妄想していた時以来のシャウト。
アイリスはその声が外に届かないのを忘れて、ひたすら叫び続けるのだった。
「忠臣アイリス、心と身体の準備は万端です!」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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