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プロローグ 淫魔は思ってみる

 時は五百年前、魔が人々を支配する時代。

 場所は魔王の支配領域――その中心部、魔王城。


「魔王様、勇者ミア・シルヴァリア率いる軍勢に完全包囲されています……侵入されるのも時間の問題かと」


「アイリス、報告感謝する。それにしてもそうか、ついに俺を倒す者が現れたか」


 と、言ってくるのは魔王ジークだ。

 美しくも荒々しい白の長髪、見る者を怯えさせる赤の瞳。

 さらに、頭部に生えるた逞しい二本角、筋肉の鎧に覆われた褐色の巨躯も完璧だ。

 さてさて、そんな彼は玉座から、アイリスへと言ってくる。


「しかし、変わった気分だ。これから俺は勇者ミアに倒されるというに……言うならそうだな、死への恐怖や生への執着を感じない」


「魔王様は満足している――ということですか?」


「満足か……そうだな、俺は満足しているのかもしれない」


 と、アイリスが今まで見たこともない、優しそうな表情を浮かべるジーク。

 彼はさらに続けて、アイリスへと言ってくる。


「数多の魔物を打倒しただけでなく、我が右腕――竜姫ホワイト・ルナフェルトをも打ち倒す勇者ミア。たしかに……奴になら負けても本望かもしれない」


「負けても本望かもしれない……なんて、そんなこと言わないでくださいよ!」


「アイリス?」


「魔王様が死んじゃったら、私はどうすればいいんですか! 魔王様が死ぬなんて、そんなの……私は! 私は絶対にそんなの!」


「泣くなよ、アイリス」


 と、ジークは玉座から降り、アイリスの涙を拭ってくれる。

 優しくて、とても暖かい手――けれど、時にはとても恐ろしい手。


(魔王様、私はそんな魔王様のことが大好きです)


 故に。

 アイリスはジークへと言う。


「魔王様、あの計画のことは考えてくれましたか?」


「俺の記憶と力の全てを、この《隷属の剣》に封印するというものか?」


「はい。そうすれば魔王様はここで殺されたとしても、遠い先――魔王様が生まれ変わったときに、今の全てを引き継いでやり直すことが出来ます。そうすれば復活した先で、憎き勇者ミアの末裔達に復讐することも可能です」


 当然、アイリスはジークに死んでほしくない。

 けれど、現在の状況でそれはもう不可能だ。


 勇者達はジークが死んだという事実がなければ、もはや止まらないに違いない。

 だから、この計画で魔王の死を偽装するのだ。


「魔王様の記憶と力を剣に封印した後、私が選んだ洞窟の奥深くにその剣を隠します。その時には、番人として私自身を体ごと剣に宿すつもりです」


「……未来は今よりも楽しいと思うか? 今よりも満ち足りた気分になれると思うか?」


 と、言ってくるジーク。

 こういっては失礼だが、その答えは決まりきっている。


「あったりまえじゃないですか!」


 と、アイリスは微笑む。

 そして、そのままジークへと言葉を続ける。


「私と魔王様が揃えば、どんな時代でも、どんな場所でも絶対に楽しめるんですよ!」


「お前が居れば……か。そうか、そうかもしれないな。未来で待っているに違いない勇者ミアの末裔――俺の最高のライバルの子供たちに復讐というのも……あぁ、悪くないかもしれないな」


「そうですよ、そうかもしれないんです! それでどうですか、魔王様? 私が考えた作戦、乗ってみる気にはなりましたか?」


「お前にそこまで言われて、乗ってみる気にならないと思うか?」


「さすが魔王様! そう言ってくれると思っていましたよ!」


 とその時、魔王城に響き渡る音がアイリス達を襲う。

 間違いない、魔王城の門が破壊されたのだ。

 ということは門番をしていたあの魔物も、やられてしまったに違いない。


(憎たらしいですけど、さすがは魔王様に『最高のライバル』と言わせる勇者ですね)


 おまけに勇者ミアは強いだけでなく、万人から愛されるほど性格もいいと来ている。

 非の打ちどころがないとは、まさに彼女を現す言葉に違いない。


(まぁ、私としてはムカつくだけですけど)


 さて、今は勇者ミアのことなど忘れて、ジークとの作戦が優先だ。

 アイリスはさっさと魔法陣を描いていき、ジークへと言うのだった。


「さぁ、魔王様。この中に入って、中央に《隷属の剣》を刺してください」


さて……これは毎回、言ってることなのですが


面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。


また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。


ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。

冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。

すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。

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