第二章 底辺冒険者は最強の魔王になる3
時はあれから数分後。
その間、アルはジークへと全てを語っていた。
結果――。
「そんな、バカな……」
と、頭を抑えながらよろけるのはジークだ。
彼はアルへと続けて言ってくる。
「勇者達は全員、その血筋を振りかざして……盗賊のように振る舞っている、だと?」
「ジークの時代の――伝説の勇者 『ミア・シルヴァリア』が、いかに高潔だったかはわからない。だけど、今の時代の勇者はそんなものだよ。盗賊より力を持ってる分、まだ盗賊の方がいいくらい」
「ふざけるな……ミアは、ただ高潔だったわけじゃない!」
と、現代の勇者の話がよほど癇に障ったに違いないジーク。
彼は感情のままといった様子で、アルへと言葉を続けてくる。
「あいつは誰よりも強かった! この俺よりも遥かにだ! なのに驕ることもせず、ただひたすらに人のために尽くした! 平和を守るため、どんなくだらないことも率先して引き受けた! だからこその勇者だ! 誰もが……この俺すら奴を勇者と認めた!」
もしジークの言っている通りならば、過去の勇者が可哀想すぎる。
なんせ、現代の勇者は完全に過去の勇者を汚している。
しかも、現代の勇者は過去の勇者の子孫ときているのだから。
何一つ救いがない。
と、アルがそんなことを考えていると。
「俺の目的を話していなかったな」
言ってくるジーク。
彼はふっきれた様子で、アルへと続けてくる。
「俺はさぞ素晴らしいこの時代の勇者に、再び挑戦することが目的だった。ミアの子孫と最高の戦いをして、俺が勝つ……結果世界は魔王のものになる」
「そんなこと!」
「あぁ、もうそんなことはいい。今の俺の目的はそうじゃない。今の俺の目的は簡単だ――勇者ミアの名を汚すこの時代の偽物勇者を、絶滅させること……それだけだ」
「……どうして、それを僕に話すの?」
最初から疑問に思っていたことだ。
どうして魔王がアルなどと、会話してくれているのか。
普通ならば即殺されていても、何もおかしくない。
「お前は俺だからだ」
と、言ってくるジーク。
彼はアルへとさらに言葉を続けてくる。
「俺達の人格と記憶は、これから一つに混じり合うことになる。そして、お前の身体を器に魔王が復活する……怖いか?」
「怖くは、ない……それになんでか、それが当然のように感じられる」
強がりではなく本当のことだ。
ジークから敵意を感じないのもそうだが、今では彼に不思議な感覚を抱いているのだ。
ジークを見ていると、何か懐かしい感覚がするのだ。
まるで生き別れた兄弟と再会できたかのような――自らの半身と向き合っているかのような。
(それと、ジークは人格と記憶が一つになるって言った。それならユウナを守りたい……人助けをしたいっていう感情も、ジークと溶け合うはず)
ある意味でアルとジークは利害が一致しているのだ。
ジークは勇者を絶滅させたい。
アルは人助けをしたい。そして、ユウナを守りたい。
勇者が絶滅すれば、世界は確実に平和になる。
そして、勇者であるエミールを倒せば、ユウナを守ることが出来る。
「そろそろ時間だ」
と、思考を断ち切るように聞こえてくるジークの声。
気が付くと、アルとジークの身体は淡い闇色の光に包まれている。
そんな中、ジークは手を差し出しながら、アルへと言ってくる。
「おそらく、互いに言葉を交わすのはこれで最後だ。何か言っておきたいこと、聞いておきたいことはあるか?」
「なら、最後に一つだけ――僕がジークの転生体に選ばれた理由は?」
「簡単だよ、そんなことは」
と、ジークは差し出していた手をアルの肩へと乗せてくる。
そして、そのままジークはアルへと言ってくる。
「お前が付き人の家系だからだよ、伝説の勇者ミアのな」
「でも、そんなこと僕は一度も聞いたこと――」
「確かだよ、おもかげがある。あいつは五百年前、勇者を守るために必死に戦った――その中で、偶然傷口から俺の血が入ったみたいでな……それで因果が結ばれたらしい」
と、一旦言葉を区切るジーク。
徐々に視界が薄れていく中、彼はアルへと言ってくるのだった。
「まぁある意味、お前は付き人の子孫であると同時、俺の血を受け継ぐ子孫でもあるってことだ……だが、何よりお前を選んだもっとも大きな理由がある」
「それ、は……?」
「ミアがやってきたことを誰よりも近くで見て、あいつを最後まで支えてくれた付き人。お前の性格も、志も……何もかもが奴にそっくりだからだ――お前なら、俺の魂を継ぐに値する」
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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