第二章 底辺冒険者は最強の魔王になる
もぞもぞ。
もぞもぞもぞ。
と、アルはそんな衣擦れの音で目を覚ます。
(ん……なんだ――というか、僕はいったいどうなった?)
アルが覚えているのは、剣を引き抜こうとしたところまでだ。
その瞬間、意識が途切れた――そして、最後に聞こえて来たのは。
「っ――エミール!」
「のわっ!?」
アルが上半身を起こすと、聞こえてきたのはそんな少女の声だ。
いったいその声の持ち主は誰なのか。
アルが声の聞こえた方へ視線を向けると、見えて来たのは――。
「いったいなぁ……もう、頭をぶつけちゃったじゃないですか!」
と、言いながら頭を抑えている少女の姿だった。
けれど、よく見るとその少女はただの少女でないことがわかる。
(頭に角……それに、あの尻尾と羽は……悪魔?)
そこでアルはとあることに思い至る。
それは――。
(エミールは『僕が醜い魔物に姿を変えられる』とか言ってたけど……まさか、この悪魔が僕を魔法でそうするとか?)
可能性としては充分あるため、けっして油断はできない。
故に、アルは少女から決して目を離さず、彼女へと言う。
「その姿、キミは淫魔……サキュバス?」
「そうですよ、私はサキュバスです。やっぱり、いろいろ忘れちゃってるんですね? まぁ、それで当たり前なんですけど!」
と、よくわからないことを言ってくるサキュバス。
彼女は「よっこらせ」っと、立ち上がるとアルへと続けて言ってくる。
「お久しぶりです、魔王様! あなた様がやってくるのを、このアイリス……心待ちにしていました!」
「魔王……えっと、キミは何を言ってるの? っていうか、僕に何する気? それにここはどこ!? 僕は早くユウナのところに戻らないとダメなんだ!」
「ストップ! スト~~ップ! そんなに質問されても答えきれませんてば!」
と、自らをアイリスと名乗ったサキュバスの少女。
彼女は尻尾をふりふり、言葉を続けてくる。
「でも、魔王様の頼みですから、重要なことから順に全て答えさせてもらいますよ!」
「じゃあ、ここはどこか教えて! どうやったら僕は元の場所に――」
「まず教えるのは何をする気かですけど――今の魔王様では想像できないくらい、えっ!な事をする気ですとも!」
「…………」
「あ、でも安心してください! 頭おかしくなるほどの事は、しませんので!」
「…………」
この少女、アルの話を聞いていない。
っていうか、凄まじいレベルの変態だ。
「まぁ、それでなんですけどね! 実は魔王様にすっごく重要なお話があるんですよ! あ、ここは外と時間の流れが違うんで、落ち着いてよーく聞いてくださいね!」
と、徐々にアルに近づきながら、言ってくるアイリス。
彼女はアルの目の前で立ち止まると、言葉を続けてくる。
「魔王様ぁ……私のお願いを聞いてくれたら、真面目な話。ここがどこかもわかりますし、どうやったら外に戻れるかもわかりますよ?」
「キミの、お願い? 命を差し出せとか、そんなこと?」
「あはははは! もう、嫌だなぁ! それじゃあただの悪魔じゃないですか! 私のお願いはただ一つですよ、ま・お・う・さ・ま♪」
と、そこでアイリスはアルの頭を小突いてくる。
その瞬間。
「!?」
アルの視界がぐわんと歪む――もはや頑張っても立っていられないレベル。
アルはこの状況に覚えがあった。
(これは精神操作魔法だ……っ、しかもなんて強力な。ダメだ、倒れ――)
「おっと、今の魔王様はザコザコですから、頭を打たないように気をつけないとですね!」
と、倒れるアルを優しく受け止め、寝かせてくれるアイリス。
けれど、彼女の行動はそれではすまなかった。
「実は私、五百年も放置プレイされていたんで、さっさと済ませたいわけですよ」
なんと、アイリスはそう言ったと同時、アルの上へと覆いかぶさってきたのだ。
アルはそんな彼女へと言う。
「な、にを……僕をどうする気、だ」
「あは♪ クソザコで、なんの抵抗もできない今の魔王様も、可愛くて素敵ですよ♪」
と、言ってくるアイリス。
その目は完全に獲物に狙いを付けたと言った様子。
アルの本能は全力で危険信号を出している。
(でも、体が動かない!? くそ、こんなことしている場合じゃないのに!)
「やだ、魔王様……え、ちょっと本当にかわいいです」
と、アルの頬を何度も優しく撫でてくるアイリス。
彼女はそのまま、言葉を続けてくる。
「さすが人間の身体ですね、私程度も跳ね除けられないなんて。それどころか、必死にピクピク動いて、死にかけの魚みたいですよ……まさか、私の嗜虐心を煽ってるんですか?」
「そんなこと、ない……僕は――」
「そんなことありますよ、今の魔王様は正真正銘のクソザコですし……まぁ、グダグダしてもあれですし! そろそろやっちゃいますね!」
と、アルの額に手を翳してくるアイリス。
直後。
(な、なんだこれ……僕の頭に、体の中に……何かが入って……っ)
頭が割れそうに痛い。
意識を保っていることが出来な――。
さて……これは毎回、言ってることなのですが
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