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第?章 魔王の旅は続く

「このコンビネーションを躱しただと!? ありえねぇ!」


「まだまだ! 次はこいつだ! いくぞ魔王!」


 と、聞こえてくるのは冒険者二人の声だ。

 時は正午。

 場所はルコッテの街から離れた平原。


 現在、魔王ジークは冒険者達から、攻撃を受けていた。

 などなど、考えている間にも、彼等の斬撃は続く。


「くらえ、剣豪千人斬りを経て覚えた我が奥義! 剣技 《地獄疾風突き》!」


「あの剣帝から譲り受けた絶技を受けてみろ! 剣技 《無限五月雨斬り》!」


 と、そんな言葉と同時に繰り出される冒険者達の攻撃。

 しかし。


 その全てがジークの僅か手前で、綺麗に逸れていく。

 まるで不可視のバリアに斬撃をずらされているかのように。


「また躱されただと!?」


「くそ! なんなんだこいつは!」


 と、言ってくるのは悔し気な冒険者達だ。

 ジークはそんな彼等へと言う。


「さっきから勘違いしているみたいだが、俺は別に攻撃を躱してはいない」


「なんだと!? それはいったいどういうことだ!」


「そうだそうだ! てめぇは俺達の攻撃に、当たってないじゃねぇか!!」


 どういうことも何も、見たままだ。

 すなわち。


「お前達の攻撃が、俺に何一つ届いていないだけだ――要するに、お前達じゃ攻撃力不足……その程度じゃ俺の障壁は崩せない」


「「~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っ!」」


 と、二人同時に顔を真っ赤にする冒険者達。

 彼等は怒り心頭といった様子の声色で、控えていた他の三人へと言う。


「おいおまえらの番だ! もう俺達に先手を譲るとか、そんなことは気にしなくていい!」

「初手から最強の魔法で片付けちまえ! それまでは俺達が守ってやるからよ!」


 直後、控えていた三人が前の方へとやってくる。

 こちらは、先の二人と異なり帽子にローブといった服装――いわゆるザ・魔法使いな服装だ。


 彼等は一度ジークの方を見て来たのち、お互いに顔を見合わせる。

 そして、彼等は三人同時に、魔力の宿った言葉を発し始める。


「「「『原初より生まれし火の王。原初を統べし火の王。始まりたる根源の火の王よ――!』」」」


 彼等は三人の魔力を集め、三人で同時に詠唱。

 それにより、本来一人では放つことの出来ない上位魔法を、放とうとしているに違いない。


 なお詠唱というのは、魔法ごとに決まったものがあるわけではない。

 それ故、詠唱でどんな魔法が来るか判断するのは不可能。


(さて、どんな魔法が来るか楽しみだな。少し見ていてやるか……)


 そんなことを考えている間にも、三人の詠唱はまだ続く。

 十秒、二十秒と、どんどん続く……終わる気配が見えない。

 よほど難しい魔力の練り上げ方をしているに違いない。


「おいおいどうした!? あいつらの魔法の詠唱だけでビビったか? まぁ無理もねぇよ――なんせあいつらは、三賢帝と呼ばれる魔法のプロフェッショナル……殺しのプロだ」


「三賢帝は強すぎる力のせいで、国からも恐れられているからなぁ! くくっ、止めるならいまだぜ!? まぁ、止めさせないように俺達がいるわけだが」


 と、言ってくるのは先に斬りかかってきた二人だ。

 ジークはそんな彼等へと、苦笑しながら言う。


「これまでこの時代の人間は期待外れだったからな。俺としても『人間はまだまだやれるんだ』っていうところを見せてもらいたい」


「あぁ!?」


「つまりどういうことだこら!」


 ジークが言いたいことは、実に簡単だ。

 つまりと、ジークは両手を広げながら、二人へと言う。


「少しは俺に危機感を抱かせる攻撃をしてみろ。お前達の奥の手なんだろ? まぁ……もちろん、それに応じた攻撃をぶつけさせてもらうけどな」


「言いやがったな――こいつどこまでもムカつくぜ! あの三人はかつて、一撃で村を吹き飛ばしたこともあるんだぞ!」


「ははっ! 言っている間にも、あいつらの詠唱が終わったみたいだな――終わったよ、てめぇの命も……はは、ご愁傷さま」


 と、言ってくる冒険者二人。

 彼等の言う通り、魔法使いたちはジークの方へ手を翳している。

 そして、魔法使いたち――三賢帝は露骨なドヤ顔で、ジークへと言ってくる。


「話は聞いていた! 我等を随分とバカにしてくれたようだな!」


「さすがは邪悪なる魔王! しかし、これ以上貴様がその口を開くことはない!」


「そうだ! 貴様は我等の最強魔法によって滅びることになるのだから!」


 最強魔法とは実に楽しみだ。

 ここまで言うからには、ジークのことをさぞ満足させてくれる魔法に違いない。

 と、ジークがそう考えたまさにその時、ついに三賢帝が動く。


 彼等の周り――特に手の辺りに渦巻く魔力。それはやがて火の粉となり、徐々に融合していく。

 そして、みるみる火は膨れ上がり、最終的に人を飲みこむほどの大きさになる。

 いよいよ完全に準備が整ったに違いない――三賢帝はジークへと言葉を紡いでくる。


「「「くらえ! 我ら三賢帝が放つ最強の魔法! 百の魔物すら一撃で倒す至高の力! 上位炎魔法 《エクス・ファイア》!」」」


「バカな! 上位魔法 《エクス・ファイア》だと!?」


 と、ジークは思わず声が出てしまう。

 するとそんなジークへ、三賢帝は言ってくる。


「今更驚いてももう遅いぞ魔王!」


「手遅れだ! この距離では躱すことも防御することもできないだろう!」


「文字通り、我ら全ての魔力を注ぎ込んだ魔法! 跡形もなく消えるがいい!」


 そんな三賢帝の言葉とともに、ジークへと飛んでくるそれなりに大きな火球。 

 さすがのジークも、これには驚愕せざるをえない。


 正直、彼等の魔法はジークの想定を遥かに上回っていた。

 そうこうしている間にも、彼等の火球はどんどんジークへと近づいて来る。


(っ……仕方ない! 俺が持っているなかで、あいつらと同程度の攻撃はこれしかない!)


 と、ジークはそれを実行に移す.

 すると。


 巻き起こったのは周囲を揺らすほどの暴風。

 あらゆるものをかき消す風だ。


「「「バカな!?」」」


 と、今度驚きの声を出すのは、三賢帝の方だ。

 彼等はそれぞれ、ジークへ続けて言ってくる。


「村を焼き、魔物を一撃で屠る我等の上位炎魔法 《エクス・ファイア》を打ち消しただと!?」


「まさか今のは上位風魔法 《エクス・ウインド》か!? 本来複数人でしか使えない上位魔法を、たった一人で使うなどありえん!」


「そ、そうだ! それに風魔法で炎魔法をかき消すこと自体がありえん! 風魔法は炎魔法に弱い――通常なら、我等の魔法の威力を上げるだけになるはずだ!」


 その後も「あーだこーだ」と、口論している三賢帝。

 終いには、彼等は「誰かが魔力の構成を間違えた!」だの、内部分裂し始める。

 正直うんざりだ――故に、ジークはそうそうにネタバレする。


「おい、お前たち。何か勘違いしているようだが、今のは上位風魔法 《エクス・ウインド》ではない」


 そして、《エクス・ファイア》をかき消したのは、彼らが言っている魔法の下位互換――下位風魔法 《ウインド》ですらない。

 ジークは彼等にもわかりやすいように、なるべくゆっくりシンプルに言う。


「今のはただ単に、腕を少し強めに振って、風をおこしただけだ」


「「「…………」」」


 と、何の反応もない三人。

 ジークはそんな彼等へと言葉を続ける。


「まさかあれだけ詠唱したあげく、三人がかりであの程度の上位魔法しか使えないとはな。まったく……どう手加減するか迷ったよ」


「「「…………」」」


 と、未だ反応のない三人――どうやらジークの言葉が難しかったに違ない。

 けれど、ジークとしても、いつまでもこの冒険者達に付き合っている暇はない。


「まぁ、お前たちは俺の期待に全く沿えなかったわけだが、最後に努力賞として本物を見せてやる――ただし、俺が使うのはただの下位魔法だ。その点勘違いしないように」


 と、ジークは冒険者達に手を翳す。

 そして、そのまま魔法を発動させる。


「下位闇魔法 《アビス》!」


「な、なんだこれ!? 足元に黒い沼が……っ、引きずりこまれる!」


「下位魔法で我等五人を巻き込むだと!? 我等の上位魔法の威力を完全に越えている!」


「しかも詠唱破棄してるじゃねぇか! どうするんだよ、これ! てめぇら魔法のプロだろ! おいこら! なんとかし――」


 と、冒険者達の言い争いは突如として中断される。

 理由は簡単――彼等五人はジークが作り出した深淵の沼に、飲みこまれてしまったのだ。


「そこからは永遠に出られない。仲良く五人で挑んできたお前達に、俺からのせめてもの配慮だ――せいぜい仲良くするんだな……生きていられればの話だが」


 ようするに、ジークの完全勝利であった。


はじめましての読者様、はじめまして。

久しぶりの方、お久しぶりです。

ラノベ作家、アカバコウヨウです。


切れ痔というリアルから逃避したくなったので、異世界もの書いてみました。

いつもより、力入れてみましたので、楽しんで読んでくれると嬉しいです!




さて……これは毎作、言ってることなのですが


面白かったら、この部分より更に下(広告の下あたり)から、マックス星5までの評価や感想できますので、してくれると参考になります。


また、続きを読みたいと思ったら、ブクマしてくれると励みになります。


ブクマとポイントはどちらも、作者が連載する活力になっています。

冗談抜きで、執筆するモチベーションに関わって来るレベルです。

すでにしてくれた方、本当にありがとうございます。

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