パンフレット:フェアリーステップ エントリーガイド(3)
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とにかく、フェアリーステップはノードとライフに同時に存在していて、街なかに物理的に存在する場所とかテーマパークなりのアトラクションとかに、ユニバーサルノーヅに接続しているノードからの遠隔でも、物理空間的にも、あるいはEnScapeで両方同時にでもアプローチすることができ、それぞれで固有の楽しみ方ができるし、それがDoLRのゲームとも同期連携している。
つまり、フェアリーステップは、ひとつの都市であると同時に、レイヤードリアリティを投影するための等身大のモックアップであるとも考えられる。旅行者にとっては、ひとつの都市のまるごとがテーマパークにあるレイヤード仕掛けのライド系アトラクションみたいなものになっている、という理解でいいのだろう。
さらに、望みさえすれば(そして金があれば)、フェアリーステップに住むこともできる。
『都市とテーマパーク』というのは、こういうことを意味しているはずだ。
パジャッソが認識している、というか広く誰でも知っているフェアリーステップの特徴というのは、EnScapeを使用した都市/テーマパークということだ。
だとすると、第三の顔っていうのはなんなんだ?
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フェアリーステップの第三の顔は、人類世界随一の計算力を誇るコンピュータスキーム『イザナミ』としての顔です。フェアリーステップの街の誕生にあたって、オン・ノード:オン・ライフ型の都市を実現させるため、うぐいす電機インダストリーが開発した大量の新技術が投入されました。EnScapeによる都市全体のレイヤーを現実化するためには大量の計算能力と分散実行能力が必要となり、そのために生み出されたのが『イザナミ』です。イザナミはその目的の要請から分散実行と計算能力の両方を兼ね備えている必要があり、そのためにうぐいす電機インダストリーは、斉一で高性能なワンパック極小コンピューター『マガタマ』、またマガタマ同士の連携をつかさどるフレームワーク(プロトコル/OS)である『ミスマル』を開発しました。
この『マガタマ』は大量生産によりコスト的な優位を生み出しています。コスト的な優位により計算能力の余剰をあえて発生させるため、ドアの開け閉めや化粧台の自動制御、信号の点灯制御まで都市内のすべての部分に使用しており、そこで発生する余剰を『ミスマル』により集積し、集積の結果として『イザナミ』という超高性能コンピュータスキームを成立させています。また、フェアリーステップでは、ひとりあたり数千から数万アイテムといわれるパーソナルユースのコンピュータにもマガタマが使用されており、パーソナルユースなマガタマの余剰計算能力も買い上げる形でイザナミに集積されています。
高性能ワンパックコンピュータ:マガタマの斉一性と、専用のプロトコル/OS:ミスマルの効率性により、動的な計算能力集積にも関わらず一般的なクラスタリングコンピュータ以上の効率性を誇っており、イザナミは現在の人類世界では最大の計算能力をもったコンピュータであると言われています。
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フェアリーステップが強力な演算能力を持っているといのは確かに有名な話だ。むしろテーマパークというより、本来のフェアリーステップの最大の特色はこちらである。
フェアリーステップは人類随一の計算能力を持っており、その計算能力を学術用や商業用など小分けで売っている。個人の一時使用向けに、演算の組み立てまでセットにした『カリュキュレイト・エンジニアリング・サービス』というのもある。基本的にはアバター用の映像パターン生成に使われる場合が多いが、ルートの座標指定と所要時間と重要度評価を元にした巡回サラリーマン問題の応用としてゲームのタイムアタックチャート作成など、いろいろな使われ方をしている。
そして、実際にオン・ノードとオン・ライフを両立させるため、フェアリーステップには他にも様々な仕掛けが凝らされている。
例えば、EnScapeで全市街を覆い尽くしながらユニバーサルノーヅ側の参加者との齟齬を来さないためには、莫大な計算能力だけでなく現在地点を正確に把握する強力な測地能力が必要となる。そのためにフェアリーステップが行っている工夫は、マガタマ同士の位置情報を相互確認することで立体的で詳細な測地情報を把握するcpS(Citywidth Positioning System) や、cpSを活用して個人の身体モーションの確認をミリ単位で行うpCAT(Precision Capturing Analitical Tracking)などなど。数多くの『この街で用いるために開発された』技術を使用している。
※パンフレット引用部分に斜体を使いたかった……(その2)




