VRキラキラパフォーマンス オン・ノード(5)
「そうだ。ハルカちゃんはドールのヤマタノオロチ倒せる?」
まいぴょこと一緒にやったライブでは、旅行先で取れるボーナスをほとんど取ることができたし、買ったばかりのとくべつアピールのプライズの獲得もできた。欲しくはなかったが「ういういC」も取ることができた。
それから小一時間ほど、他のキラメスターのライブを見たり、おしゃべりをしたりしながら一緒に遊んでいた。
「DoLRはやってないから、わからないよ」
「えー、やってないのー? 大人ならドールも強いかもと思ったんだけど、やってないならしょーがないねー。そっか、そういえばハルカちゃんは別の町から来たんだったっけ」
Daities of Lush Reeds、通称DoLRは火星で最大の会員数を誇るオンラインRPGで、古代日本を舞台にしている。この街、フェアリーステップにとって、DoLRはほぼ文字通りの意味で道端の草木と同じぐらいありふれた存在なのである。そして、他所からこの街に来る多くの者にとってもDoLRは特別な意味を持つのだが、残念ながらパジャッソは例外だった。
「ごめんね、遊んでなくて。えーと、ヤマタノオロチってどんなモンスターなの?」
「大きな蛇なんだよ。頭と尻尾がたくさんあるの。雲が紫色に光ると出てくるんだけど、あんまり出ない」
「えーっ、怖ーい」
RPGのモンスターを恐れる必要はないが、話を合わせるというのはこういうことだ。相手が次の言葉を言い出しやすくなるならばなんでも良い。
「強いけど、倒せるから怖くないよ。恐竜みたいでかっこいいから好きなんだー」
「でも、そのヤマタノオロチは頭がたくさんあるんでしょ? いくつくらい? 九個?」
ヒュドラの頭の数が確か九だったはずだ。
「数えたことないから知らない」
こんな他愛のない話をしたり、約束のコーデや他に欲しいものを聞いてあげたり、地元のキラハウスの話をしたり。
とても楽しくて充実した時間だった。
その日、キラメキライブハウスを去るパジャッソのもとには、新しく買ったキラキラアピールとまいぴょこと一緒に撮ったレインボーゴールドのサインの入ったピクトが残った。




