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トリックスターの本懐(9)

 メイジが行ったアルサ・デ・ムルシエラゴへの攻撃は、実に単純なことだった。

 要するに各種電磁波を一点に集中させて巨大な熱量を発生させたに過ぎない。

 都市内の、向きの調整が効くすべての通信用の電波をムルシエラゴの方に向け、すべての投影光設備をムルシエラゴに向け、すべての鏡をムルシエラゴに向け、すべてのスルーグラスディスプレイの通過光をムルシエラゴに集めるように調整し、直接向けられないすべての光源をムルシエラゴに向かう鏡かスルーグラスディスプレイに集め、すべての指向性電磁波をムルシエラゴの方向に集め、更には電波源の干渉縞を計算してエネルギーの極大値をその瞬間にムルシエラゴが通過するその場所に誘導し、のみならず向きを変えることが可能なすべてのスピーカーの向きをムルシエラゴの方に向け、赤外線放熱型の調理器具や美容器具のうち向きを変えられる物をすべてムルシエラゴの方に向けた。

 それだけのことだが、普通ならばできないことでもある。

 しかしメイジの秘策によって、フェアリーステップという都市全体が操作可能な電磁波と音波の巨大なパラボラアンテナと化し、その焦点をムルシエラゴに向けたのだ。一つ一つは微弱だが、最終的には常識はずれなほど圧倒的なそのエネルギーの前に、ムルシエラゴはなす術も無く死んだ。

 そしてムルシエラゴを攻撃している間も、ヨミはフェアリーステップの中で増殖し、従来のイザナミを駆逐し続けていた。


 さらに並行して、スメラたちとヨミ自身のフェアリーステップからの流出も進行させる。

 ついでにフェアリーステップ内のAIも次々とパッケージングする。

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