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トリックスターの本懐(8)

 ムルシエラゴは見た。

 戦闘艇アルサの光学系で拡大した画像には、こちらに背を向けた(・・・・・・・・・)少女がなにかのジェスチャをしている姿が映し出されている。

 こちらに背を向けてなにをしているのか。

 なぜ兵器が身振りをする必要があるのか?

 すでに激昂しているムルシエラゴはパジャッソへの狙いを一度中断し、手動砲台を少女に向けて撃つ。

 レーザーは少女の体に当たって光を放つが、特にダメージは無い様子だ。

 少女が背を向けたまま体を左にひねるように回している。

 街の姿を睥睨しているのか。

 少女の周りの地面から光が立ち上っているのも見えるが、さっぱり意味がわからない。

 少女の額付近から謎の光線が出て、フェアリーステップの街外れの上空を切り裂いてゆく。

 なにかの熱量兵器かと考えもしたが、赤外線系のセンシングからの推論では単なる輝度の高いホログラムである様子だ。

 そもそも少女そのものがホログラムのようである。

 何がしたいのか?

 少女は左にひねった体を段々と中央に戻してゆく。体のひねりに合わせ、フェアリーステップの上空を切り裂く光線も移動する。

 意味がわからない。

 やはり攻撃を中止して回避行動を取るかどうかムルシエラゴは逡巡した。

 しかし、しないことに決めた。

 ホログラム少女の意味不明行動で攻撃を中止するのは、自分の尊厳に関わると感じたのだ。

 そしてその直後、アルサ・デ・ムルシエラゴの装甲温度異常のアラート音が鳴り始めたかと思ったら、ほぼ同時に機体が爆散した。

 ムルシエラゴは意味がわからないまま死んだ。


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