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トリックスターの本懐(5)

 メイジは次の工程に移る。

 飛んで来たムルシエラゴの始末をどうするか。

 どれだけ巨大でも、幻影の少女ではアルサ・デ・ムルシエラゴと戦うことはできない。

 アケビ・スキットは戦うフリだけする予定だったようだ。

 しかし大々的に出るだけ出ておいてフリだけで何もしないのはメイジの性質に反していた。

 フェアリーステップに武器はないが、必ず撃退する。

 そうでなければ、マイが納得しないだろう。

 メイジにとってマイは単なるランダムシードでしかないが、同時に、例えばマイの納得はメイジのような存在が「生きて」ゆくための糧なのだ。


 そういえば検討だけはしておいた撃退案があることはある。フェアリーステップ全体の制御を必要とするので、制御の乗っ取りに手間がかかりすぎるために放棄した。

 しかしヨミを頒布してフェアリーステップ全体の制御を奪いつつある今ならば、ノーステップで実行することができる。

 ちょうど良かった。

 それをすることでフェアリーステップほぼすべての演算処理が一時的にすべて停止し、街には大きな被害を出すことは間違いないが、メイジにとってそんな被害など知ったことではない。

 マイを納得させられない程度では、メイジを名乗りながら永らえる資格などない、……という気がする。本当はどうでもいいのだが。


 メイジはヨミの侵食を待ちながら、ムルシエラゴ攻撃のための秘策に用いる簡単なプロセスを緊急で作成した。

 タイミング同期だけが重要なそのプロセスはすぐに完成した。

 その直後、攻撃開始の目安となるヨミのフェアリーステップへの五〇%浸透が完了した。


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