EnScapeキラキラパフォーマンス:オン・ライフ(1)
カルキュレイト・エンジニアリング・プランから結果が戻ってくるまでは、事実上の短い休暇になる。パジャッソは以前からフェアリーステップから立ち去る前、その最後にライフのキラメキライブハウスを自分の足で訪ねようと決めていた。
直接の攻撃対象からは外しているものの、首尾良く行けば街が維持できなくなるのだから、この聖地も無くなってしまうはずだ。その前にこの目で見ておきたい。
キラキラパフォーマンスはフェアリーステップ内に実際の都市があるDoLRとは違い、ゲーム内世界ではフェアリーステップと接続していない。そのため、ライフからキラパフォにアクセスする場合、通常のゲームとは異なる遊び方をすることになる。なにしろライフでライブハウスに来るとサイズの問題で自分のアバターを着ることができない者が大勢いるのだ。
フェアリーステップのキラハウスでは、空気中に微小な粉末ディスプレを散布しており、ライフの空間中にかなり精緻な映像を投影することが可能である。それを利用して、自分のキラメスターやゲーム内の有名キャラクターと生身で「会う」ことができるようになっている。
つまりパジャッソも、自分が育てたキラスターのハルカと対面することができるのである。
もちろん、粉末ディスプレがあればここ以外でも投影は可能になるが、粉末ディスプレ自体が特殊な設備であることや、建物全体のモックでまた別の臨場感を与えることができるフェアリーステップのキラハウスはやはり特別な場所なのだ。
キラメキライブハウスに入ると、最初はゲームと同じ店長の挨拶と簡単な説明。そして、自分の育てたキャラクターに付いているガイドマスコットが迎えに来る。
パジャッソのマスコットは赤い鳥だ。そう言えばそうだった。自分でつけた名前があったはずだが、普段はマスコットを消しており、名前も忘れてしまっていた。
普段消しているのはマスコットにガイドしてもらうことはもうないからだが、フェアリーステップのキラハウスでは勝手が違うので、ガイドもありがたい。
マスコットについてハウス内の廊下を移動する。
この廊下はゲームでもおなじみの風景ではあるけど、実際に体を動かしての移動はやはり違う。歩く中、ゲーム内の有名キャラクターたちが脇を通ったり、話しかけてくれたりする。
レミちゃんという黄色い髪の有名キラスターから、「キラメスターは好き?」という質問をされた。これは、ゲームを始める最初のチュートリアルストーリーの時に、レミちゃんから自分がされる質問と同じである。
「す……、好きです」
パジャッソは緊張してしまい、つい敬語になってしまう。
「そう……良かった。楽しんでね」と言って、レミちゃんは去っていった。
ゲームの最初のセリフを自分に投げかけられて感動してしまった。オンノードでこのゲームを初めて最初に聞いたきりの有名セリフが聞けたことも嬉しいし、改めて最初のセリフを聞いたことで、ここでは自分の操作キャラであるキラスターと自分が別人なのだということを改めて理解することができた。




