観察者(1)
人気のないところで知らない人を見かけたら、先に声をかけるんだっけ…。
「こん…」
「あ、終わったんだね。そこになにかあるの?」
声をかける前に、話しかけられた。バグを探してたのは知られたくない。大人には怒られるかもしれない。
「なにもないですケド…」
「隠さなくてもいいよ。EnScapeの隙間を探してたんでしょ? よかったらコツを教えてあげてもいいよ」
「え? ほんとですか? コツってどんな」
「本当はコツっていうか秘密の道具があるんだけど、近寄らないと使えないんだよ」
「こっちこっち。ここです」
マイは自分が見つけた歪みの場所を指差してみせる。
「ああ、うん。その辺にあるのは分かるんだけど、僕はここからそっちに行けないんだ……」
「行けない? なんで? EnScapeがあるだけで通れるよ」
「あーいや、ちょっとお役所の手続きの問題だからね…。そこに行くと規則違反になっちゃうんだ」
「えーっ! 誰も見てないから大丈夫だよ」
「見てるよ。cpSの事だから。そうだ、そのペットボットを貸してくれたら近づけるかも」
「アケビのこと? いいよ、渡せばいい?』
マイはお兄さんに近づいて、肩に乗っていたペットボットを手渡す。
「いいのかい? 大事な友だちだろ?』
「大事だけど、返してくれるなら」
「もちろん返すよ。えーと、お名前は? 僕はパジャッソだ」
「パジャッソさん?」
「あだ名だから呼び捨てでいいよ。君の名前は?』
「城田マイ。その子はアケビ」
「マイちゃんか。アケビちゃんを借りるよ」
パジャッソはマイからアケビを受け取ると、当たり前のようにぬいぐるみの首を切り裂き、中のメカニクスを露出させた。軽くいじってアケビの機械から小さなものを取り外す。
外したところに小さな機械を差し込んで、なにかの操作をしていた。
「アケビを壊した!」
「壊してないさ。少し待って。アケビちゃんに新機能をつけたところだ」
「……新機能?」




