男の娘になる前のあの人(間話)
前話の最初、自称伊月の彼女だと思った?ざんねーん!…言いたかっただけです
カッコいい人。
私の中での、あの人への感情はそうだった。
何を感じるでもない。いや、感心した、というべきか。
感心するくらい男を感じる、しかし異性として何も思わない。そんな人。
そんなある日のことだった。
「あれ、百円、足りない…」
バス代が、なかったのだ。それも、百円。隣の友人は、
「…ごめん、今日あまりがない………」
しごく残念そうな表情で俯いていた。
まあ、仕方がない…かもしれない。
友達がお金がない。それも、なかったら帰れない。
そんな状況で、お金を貸すこともできなければ、そりゃそうなるだろう。
不幸なことに空は暗く、人がいない。
やはり、昨日の雨風が効いたのだろう。
部活動生もほとんどいなかった。
そもそも、文化部だったから、というのもあるだろうが。
そんなこんなで、バス停についた時。
「あの…これ、使います?」
その顔、風格に似合わないおずおずとした声で聞いてきた。
いつも通り男っぽい、あの人。
「…えっと、ありがと。…明日、返すね?」
緊急事態だったため、男からだが借りた。
珍しい、という表情で見てくる友達が、前に立っていた。
「次は、大宮ー、次は、大宮です」
そう言いながらさっていくバス。二人してそれを眺めながらこう言った。
「なあ、あんた、あの男に惚れるような、ちょろちょろじゃないよね…」
「あったりまえじゃん!」
「そ、そんな勢い良く否定するってことは…?(まあ、ないけど)」
私は、ニヤニヤする友を見ながら考えた。
あの人って、どんな人だろう?
それが、私が持った興味であり、
新四日市…いや、新四日市 大河との初めての接触だった。
『新四日市』って珍しいよね、からの何気なく大河の名字という…