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それぞれの願いと約束

潤目線です。

ですが茜と会話ができるようになっています。

これで最終回です!!

ちょっと雰囲気変わってるかも知れません。

読んでいただけると有難いです!


「さて、次の試練をいう」

「うん」



次の試練…なんだろう。

あまり変なのじゃなければいいけど。



「実質最後の試練だ」

「…2つ目で最後?」



なんか、最初のもそうだけど。

身構えていた割りにあっけなく感じる。



「思ったより時間がなかったんだ」



時間がなかった…?

どういうことだろう。

この神様は、なにか隠してる気がする。

まあいい。



「それでその試練は?」

「ある場所を探すことだ」

「ある場所?」

「そうだ」



ある場所、と言われても。

前回も思ったけど抽象的だ。



「それって、どこ?」

「自分で探せ」



自分で。

この神様は具体的なことは何も言わない。

何か僕に気づかせようとしているのだろうか。



「ヒントはないの?」

「ヒントだと?」

「うん」



流石にある場所だけではわからない。

何か手がかりだけでも教えてくれればいいんだけど…



「ある場所とは願いを叶える場所だ」

「うん」

「………」

「……それだけ?」

「ああ」



あまり変わっていない。

願いを叶える場所?

まぁ最後の試練なんだからそこで叶えるんだろうけど。

…願いを叶える?

…確かこいつは神様といっていたっけ。

何か、繋がりそうなのに。

わからない。



「お前、本当に鈍いな…」

「?」

「神頼みとかするだろ」

「そうだね」

「どこでやるんだ?」

「どこって…」



神頼みをする場所?

それって神様にお願いしたりする場所ってことだよね。

あ。


「…神社…?」


神様がそうだという風に頷いた。

でもこの辺りに神社なんてあったっけ。

そういえば。

前に1度行ったことがなかったか。

1度だけ、茜に連れられて。

お願いをしたことがあったはず。


「…行ってみるか」



確か、その神社は山の上にあった。

少し寂れた神社で、前は活気があったらしいが今はもうお参りする人はお年寄りくらいだと聞いた。

いわゆる、地域神というやつだ。


「…これか」


今の時期は彼岸だ。

彼岸の時期にはあの世から死んだ人が帰ってくると言われている。

そして、彼岸の時には彼岸花が咲く。

その名の通り彼岸の時期に咲く花だ。

真っ赤な血のような色をしている。

それが神社に続く階段の両端に咲いている。

そして、階段の上には赤い鳥居がある。

僕は階段を上り始めた。

1段1段ゆっくりと。

神様がいっていた場所はここで間違いない。

そう、確信しながら。



「…あかね…?」



鳥居をくぐった瞬間。

1瞬周りが白く光った。

そして。

目を開けた時、茜がそこにいた。


「…潤」

「茜、なのか?」

「そうだよ」

「本当に?」

「うん」


茜に会えたという喜びより戸惑いの方が大きかった。

まるで、試練ではない。

だってただ神社に来て、鳥居をくぐったら茜がいた。

でも戸惑っているのは僕だけで。

茜は儚く笑っている。



「神様からね、聞いてたんだ」


「…何を?」


そういって茜は話し始めた。

まず、試練というのはただの飾りだということ。

別に最初から願いは叶えるつもりだったらしい。

ならどうしてこんなことをしたんだろう。


次に会えるのは彼岸の間だけということ。

これは彼岸が過ぎたら帰らないといけないという決まりがあるらしい。

あながち言われてることも間違いではないようだと思った。


そして、最後にこの神社が取り壊されてしまうこと。

冬に入る前にここは取り壊されてしまうらしい。

なんでも土地開発が進み、寂れた神社を壊して新しく建物を造ろうということみたいだ。

神様のいっていた時間が無いというのはこういうことだったらしい。



その神様はというと。

神社の拝殿に腰掛けて僕らの方を見ていた。

神様はゆっくり話しかけてきた。


「願いが叶って満足か?」


「ああ」


「そうか。ならいい」


さっきの話を聞いたあとではなんとなく軽口を叩く気にもなれない。

だけど。

聞きたいことがある。

さっきの話を聞いて思ったことを聞いてみよう。



「あのさ、」


「何だ?」


「願いを叶えるつもりだったって聞いたんだけど本当?」


「ああ」


「どうして試練なんかやったの?

それに…あれは試練って感じでもなかった」


「別に。暇つぶしだ」



神様がぶっきらぼうに言う。

一緒にいて分かったけどこういうときは大抵なにか隠してる。

一言一言に間があるし。バレバレだよ。

だってこの神様、試練以外でもついてきてたんだから。

それにこの神様、口調に反して意外と優しい。



「…神様なんか隠してない?」


「別に」


「神様は暇つぶしって言ってたけど…私には少しでも誰かといたかったからっていって…」


「うるさい。静かにしろ」


「そうなの?茜」


「うん。それに消えちゃう前に役に立ちたかったって」


「…はぁ…お前に話すんじゃなかった…」



神様、意外とかわいいところがある。

やっぱり優しいんだろうな。

…あまり人が来なくなって寂しかったのかもしれない。

しかも取り壊されてしまうだなんて。



「はぁ…誤解される前に言っとくが」


ん?神様がなんか話し出した。



「俺は昔お前らの願いを叶えられなかった。だから、今回はちゃんと叶えてやろうと思っただけだ」


「それに今も昔も同じ願いを言っていたしな…」


「あと、寂しいだの役に立ちたいだの言ってるが俺は神としての役割を果たしたかっただけだ。別に俺が寂しいわけじゃない」


「ここが取り壊されたら俺はここにいられなくなる。ここのことを誰も覚えていないのは嫌だったんだ。その前に少しでも誰かに見て欲しかったんだ。お前らのためじゃない」



明らかに照れ隠しだろうとしか思えない。

今でいうツンデレなのか。

この神様。

…今、ここにいられなくなるっていってたよな…?


「ここが無くなったら神様も消える?」


「ああ。家がなくなるからな」


「そしたらどうなる?」


「俺は存在しなくなる」


「「え?」」



存在しなくなる??

本当に消えてしまう?



「別にここがなくてもそろそろ俺は消えるんだ。人間でいう寿命ってやつだ」


「どういうこと?」


「私もそれは聞いてないよ」


「言ってないからな。信仰が多ければ寿命や力も強くなるんだが俺はもうあまり知ってる人がいないからな」


「「そう、なんだ…」」


「信仰する奴がいないっていうのは願いを叶える必要がないってことだ。

だからお前らが最期に叶えるやつらになるだろうと思っていた」


「「…………」」


「別に哀しくもないがな。独りでここにいるのはとても退屈なんだ」


「「…………」」


「だからお前らには…潤と茜には感謝している。それなりに楽しかったしな」


「「…え、」」


「願いが叶ったら俺は必要ないだろ。まぁ茜に会うにはここに来ないと会えないから来ることもあるだろうけど。俺は邪魔しないから安心しろよ」



神様の告白に衝撃すぎて言葉を失った。

そしてなんとなく神様がここに来てからずっと、哀しげに話している理由がわかった気がした。


僕はふと思った。

茜に会えるのも期限付き。

神様が居れるのも、期限付き。


神様は最近僕らについてきてたのは試練が終わったら用済みになってしまうからではないかと。

だからわざと試練なんて言っていたんじゃないか?


茜には謝らなきゃいけないことがある。

そして伝えなきゃいけないことも。

でも、それをできるようにしてくれたのは。

神様じゃないか。

どうせなら。

いなくなってしまうまで、楽しく過ごしたい。



「ねぇ、神様」


「何だ」


「最後のお願いがあるんだけど」


「は?この期に及んでまだ…」


「僕と、茜と、3人で一緒に過ごしてよ」


「………っ」


「私からもお願い」


「………しょうがないな…」



そういいつつ神様は嬉しそうな顔をしていた。

僕らはそれから神社で会って話すようになった。

茜にもちゃんと伝えることが出来た。

…神様は冷やかしてきたけど。

そして、交換日記。

暇な時に書いて3人で回している。

日記には好き勝手書かれていて順番もバラバラでもはやわけがわからないけど。

叶うわけがないけど。

神様にだって無理かもしれないけど。

ずっとこの時間が続けばいいのにと思うくらいに楽しかった。


だからこそ別れる時は辛かった。

でも。

僕らは約束をした。


1つ目

『神様のことを忘れない』


2つ目

『必ずもう1度会う』


3つ目

『交換日記に書き続ける』


この3つの約束をした。

神様のことを忘れないというのは覚えていれば会えるかもしれないから。

もう1度会うというのは最初の約束を今度はあの世でという意味で。

もちろん神様も。

交換日記に書き続けるのは話せない代わりに伝えれたらいいと思ったからだ。



そうして、僕らは新たな約束を交わした。

今は別々でも。

最期には会えるという願いを込めて約束した。


もしも願いが届くなら…

交わした約束を果たせますように











これで完結になります。

最後までありがとうございました。

もし気に入って頂けたのなら幸いです!

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よろしければリクエスト等あると嬉しいです。

今までありがとうございました!!

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