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過去と私と彼との約束

茜Sideです。

茜から見た潤と、潤との過去の話が多く出てきます。

時系列では前回の潤目線の話と同時進行です。潤と茜の思いのすれ違いを表現してみました。

『もう嫌だよ……。私をひとりにしないで……』

『ごめん……。僕はお母さんに引き取られることになったんだ……』

分かってる。しょうがなかったってことは。


『潤が悪いんだ! 潤が……もっとみんなから好かれる性格だったら……! 潤の親も離婚しなかったんだよ!!』

『……! ごめん……。そう、だね。僕がそういう性格だったら、、、茜とも……』

なんで、あんなことを言ってしまったんだろう。潤が優しいことは知っていたのに。潤が……悪くないことも、分かっていたのに。


『絶対に戻ってくるから! そしたらまたあの場所で一緒に遊ぼうね!』

無理やり作ったような笑顔で、言わせることも無かったのに。

潤だって辛かったはずなのに、もっと追い詰めてしまったんだ……



あの頃の私はいつもひとりだった。公園に行っても誰とも遊ぼうとせずひとりだった。周りの子みたいに声をかけて、友達になって、一緒に遊んで……ということができなかった。

でもある日突然男の子に声をかけられたんだ。

『君もみんなと一緒に遊ぼう?』って。でも私はその時「嫌だ。みんなと一緒になんて、遊ばない」

こういって拒絶してた。

なぜなら私は知っていたから。一緒に遊んでいた子達がいなくなった後、必ずいなくなった子の悪口を言うことを。だからそんな中には入りたくなかった。でもその男の子は

『みんなと遊ぶのが嫌なら2人で遊ぼうよ!』

とか

『遊ぶのが嫌なら一緒にはなそ!』

とか

毎日、私を見かけるとこういって声をかけてきた。

……それでも私は拒絶していたけれど。だって結局この子も裏で悪口を言ってるんじゃないかって思ってたから。

だけど……声をかけられるうちにその子少し気になって、気づいた。

その男の子は、いつも絶対悪口を言わなかった。それどころか、自分のことを悪く言われても笑顔でいた。

だから次に声をかけられた時に一緒に話してしまっていた。


『なんだか野良猫みたいだよね!』

『は?なんのこと?』

『え?あかねだよ。あかねって最初僕のこと避けてたじゃん。なんか警戒心が強い野良猫みたいだなって』


名前を名乗ってすぐにこう言われた。たしかにいつも無愛想だとか、言われてるけど。


『ふーん。野良猫ねー、じゃ潤はみにくいアヒルの子って感じだよね』

『え?なんで?』

『なんか周りから貶されたりしてもめげないで頑張ってるとことか。不幸ながらに頑張ってそう』

『それ褒められてるの……?不幸なの前提じゃない……?』

『褒めてるよ。それにそんなこと言ったら野良猫も褒めてないでしょ』

『そうかなぁ?僕はねこ、好きだよー?野良猫でも』

『なら私も不幸でも頑張っている人は好きだよ』


こんな感じで潤は明るくて素直だったから話しているのはとても楽しかった。


私はあのとき、あまり考えずに潤のことを《不幸》と言ってたんだけど……今思うと潤は本当に幸せじゃなかったんじゃないかって思うんだ。

だって……潤はいつもアザがあったり、みんなが親と一緒に帰るのに1人で帰ったりしてたから。

もしかしかしたら親にあんまり愛されていなかったのかもしれない。そういう所は似てるかも。

……私も他人から愛されたりはしなかったから。なのに潤と私は真逆だった。

多分潤は潤なりに、私は私なりに出した答えが逆だったのだろう。


《愛されるために頑張るか》

《愛されるのを諦めるか》


……潤はそうやって頑張っていたのに、私はそれに気づかないで潤の明るさに……優しさに甘えてしまっていたんだろう。

だから次に会えたときは謝って、許してもらおうとしていた。だけど……もう、潤は忘れているかもしれない。私のことを。



「きゃあっ!!」


ぶつかってしまった。男の子と。しまった、私は人と接するのが苦手なのに。

こういう時、私は固まってしまう。


「大丈夫!?ごめんね、怪我してない?」


相手の男の子が心配して倒れた私に手を出してくれた。

……え?この人、なんだか潤に似てる……

いや、まさか。そんなわけない。


「え、、、?あ、だ、大丈夫です。すいませんでした。失礼します」


しまった、動揺していつも以上にぶっきらぼうになってしまった。

「え、あ、うん」

もしかして、本当に潤だったら…なんて。でもそうだとしたら。確認しないと。その上で話をしたい。



桜ヶ咲高校に転校して、私はもう孤立してしまっていた。

私はあのときから何も変わっていない。だからまた『野良猫』みたいに周りを警戒して拒絶していた。

そして、前にぶつかってしまった男の子が潤である、ということもわかった。

子供のときは『黒崎潤』。

いまは『赤瀬潤』。

約束をした時に言っていた。次に会うときは『赤瀬潤』であると。絶対に会うために覚えておいてと。だから彼が、私の知っている潤だとわかった。

それから…何度か潤と話そうとして見たけれど、話せなかった。

私のことを覚えていない、という訳では無いみたいだったけど。

多分、潤が前よりも明るく、誰からも好かれるように変わっていることが原因なんだと思う。

私が嘘つきを嫌いだと言ったから。

私がもっと好かれる性格だったらと潤に言ったから。

もしくはもう私を許さないという意思表示なのかもしれない。

彼とあの頃みたいに戻ることはできないのかもしれない。


そうして曖昧なまま、彼と話せないままで1ヶ月以上が経っていた。


読んでくださってありがとうございます。

これからも続くので読んでくださると嬉しいです!

よろしければ感想等よろしくお願いします。

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