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異世界の腹ペコ姉妹を拾いました。  作者: スカイダイビングしたら、地上300メートル付近で、パラシュートを付け忘れた事に気付いたなう。
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プロローグ

 黒く重苦しい、鉄の扉を前に、少女達は息を飲み込む。

 扉に描かれていたのは、魔族が人間を頭から食べているような禍々しい模様。

 魔王城最深部。幾多の試練を乗り越え、彼女達はここまで来た。

 この扉を開けば魔族の頂点に君臨する魔王ウルスダキアがいる。

 少女達は自らを奮い立たせると、鉄扉の取っ手に手をかけた。

 低く、心が滅入りそうな重低音が辺りを包み、魔王城の最深部は開かれた。


 豪奢なシャンデリアと金彫刻の壁面、冷たくそれらを映し出す大理石。そして、明らかに異質な雰囲気を放つウルスダキアが玉座に鎮座している。



「魔王ウルスダキア、覚悟! 我らはリリルズリリー姉妹、貴様を討ち滅ぼす者ぞ‼︎」



 姉妹の一人が、二尺程ある剣を鞘から抜いて構えた。もう一人は煌びやかな装飾の施された、金属製のステッキをウルスダキアに向ける。



「来たか虫けらども。力無き貴様らを、跡形もなく消し去ってやろう」



 魔王が放つ魔法を掻い潜り、姉妹剣士が距離を詰める。

 魔法を操る姉妹術士は、姉妹剣士にサポートの魔法をかけつつ、ウルスダキア目掛けて詠唱し、氷柱を放つ。


 一進一退の攻防を続ける姉妹とウルスダキア。激しい火花を撒き散らし、剣と剣とが重なり合う。

 互角の戦いをしているかのように思えたが、ウルスダキアの際限無い魔力量に、彼女達は次第に押され始めてしまう。



「くっ……。このままでは……」



 ウルスダキアからの剣撃は、次第に重さを増し、姉妹達をジリジリと追い詰める。

 気が付けば背には壁があり、姉妹達は部屋の隅に追い込まれていた。

 ーー息が切れる……。恐怖と絶望に飲み込まれてしまいそうだ……。


「この部屋は、我が配下達に命令し、隅々まで丁寧に掃除をさせたのだ。どうだ、綺麗であろう?」



 鍔迫り合いながらウルスダキアが口を開く。



「だ、だからどうした‼︎」


「それを私達に言って何になるのです‼︎」


「いや、なに……。ただ、我がここで剣を振り、貴様らの臓物や、血飛沫で、部屋を汚されては敵わんからな」



 ウルスダキアは言葉を言い終わると同時に姉妹達から距離を取り、魔法の詠唱を始める。



「ーー全てを飲み込む深淵の口よ、喰らえ愚者の魂を、喰らえ我に仇なす全ての者を」



 ウルスダキアが詠唱を終えると、底の見えない穴が、姉妹を呆気なく飲み込んだ。

 彼女達は何を言うでもなく、わけのわからぬまま、その勝負は決着を迎える事となる。



「ふははは! たわい無い。また会おうぞ、異次元空間より戻って来れたらな!」



 リリルズリリー姉妹は異次元空間に飛ばされ、魔王玉座の間にはウルスダキアの低く、威圧感のある笑い声が響いていた。

 異次元空間に送られた者達が、再びウルスダキアの元に現れた事は、一度として無い。彼は事実上の勝利を確信して、もう一度玉座に座った。


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