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九十五話 再び迷宮へ

 マーサさんとの話しも終わり、サラ達の所に向かう。


「みんな俺はシルフィと冒険者ギルドに行ってくるからちょっとお留守番しててね。帰って来たらたぶん迷宮に行く事になるから、準備をしておくこと」


「べるもいく?」


 ふわふわと飛んで来たベルがコテンと首をかしげながら聞いて来た。いま、お留守番しててねって言ったばかりなんだが。迷宮に一緒に行くのかって事か?


「迷宮には一緒に行くよ。今からは冒険者ギルドに行ってくるからお留守番しててね」


「べるもおしごとできるー」


 ……ん? 仕事?


「ふふ。ベルも裕太のお手伝いがしたいって言ってるのよ。最近お留守番が多いから役に立ちたいのね」


 シルフィがベルの頭を優しく撫でながら、意味が分かっていなかった俺に教えてくれる。ベル達は居てくれるだけで役に立ちまくっているんだが、そう言えば最近お手伝いをして貰ってなかったかも……。


「キューキュキュー」「トゥルもおてつだいする」「クククー」


「あら。レイン。トゥル。タマモも裕太のお手伝いをしたいみたいね。どうするの?」


 おうふ。物凄くジーンと来る。ちょっと泣いちゃいそうだ。でも、冒険者ギルドに連れて行くのは教育に悪いからな。連れて行く訳にはいかない。


「みんなありがとう。でも今回はお留守番していて。迷宮ではたっぷりベル達にお手伝いしてもらうから、お願いね」


 ひとりひとり心を込めて頭を撫でる。この子達と契約出来て本当に幸せです。


「べる。めいきゅうがんばる」「キューーー」「まもる」「クーーー」


 ベル達が右手や右ヒレ、右前足を高々とかかげて請け負ってくれた。気合十分だな迷宮の魔物が心配な位だ。


「うん。頼りにしてるね。じゃあ俺は冒険者ギルドに行ってくるからお留守番よろしく」


 宿を出て、冒険者ギルドに向かう。朝からジーンと来たしなんか今日は良い日になりそうだ。いや、冒険者ギルドでテンションが下がりそうだから普通だな。



 ***



(シルフィ。冒険者ギルドに入るけど、俺の事に関する話があったら教えてくれる? あと、俺が卸した素材に関する話も出たらお願い)


「分かったわ」


 冒険者ギルドに入ると最初は何事も無かったが、次第に俺に視線が集まりザワついていく。流石に忘れられてはいなかったようだ。


「みんな、裕太がまだ迷宮都市に居た事に驚いているみたいね。とっくに逃げ出したと思われていたみたい」


 ……なるほど。そういえば死の大地に戻ってたし、全然冒険者ギルドに来てなかったもんな。気にしてもしょうがないし、さっさと依頼を選ぼう。


 依頼がられているボードを眺める。ボードを確認している冒険者がほとんどいない。混む時間帯からズレてるのかな?


 面白いのが俺がマリーさんに卸した、魔力草、万能草の依頼が沢山張り出されている。情報が流れて冒険者ギルドに依頼が沢山来ているみたいだな。ギルマス大変だろうな、ご愁傷様です……ぷっ。気分も更に良くなったし、さっさと依頼を選ぼう。


 サラ達も居るからそんなに無理のない依頼を選ぼう。色々とボードを確認してみると、一日で済みそうなのは六層の草原で取れる薬草やラフバードの肉の確保。十六層の森林でのオーク肉の確保と薬草、食用キノコ採取あたりが無難っぽいな。特に冒険者は採取が基本だからこなしておかないと。ラノベの知識だけど。


 迷宮では無くて迷宮都市の外の依頼も結構あるけど、護衛の依頼は俺だと断られるだろうし、あんまり食指が動かない。


 魔法の鞄の中に入っている乱獲したラフバードやオーク肉を卸せば、速攻で依頼は完了するんだけど、サラ達の訓練にならないし、地道にこなすか。俺みたいにチートがある訳じゃ無いから、サラ達には依頼をこなす経験とランクが必要だろう。


 俺が選んだ依頼は常時依頼らしく持って来たらギルドで買い取ってくれるそうだ。ん? ラフバードやオークには必要部位が書いてあるな。


 そう言えば、持つ荷物を減らしてお金になる部位をきちんと持ち帰るのが基本らしい。解体して持って来ないと駄目なのか? ちょっと聞いてみるか。


「エルティナさん。こんにちは。聞きたい事があるんですが良いですか?」


「……なんでしょうか?」


 うん。相変わらず素敵に無表情だ。初めて会った時の肉食系の雰囲気が、完璧に消えている事がとても残念だな。


「依頼を受けようと思うのですが、ラフバードやオークは丸のまま持ち込んだら駄目なんですか? 部位が指定されていますけど、それ以外は持って来ても無駄なんですかね?」


「手数料は掛かりますが冒険者ギルドで解体する事は出来ます。使い道がある部位は買取も行われますが、手間と労力を考えると割に合わないと思います。それとあらかじめ言っておきますが、あなたに付いてくれるポーターはいないと思いますよ」


 ちゃんと聞いた事は教えてくれるんだな。魔法の鞄が無ければオークやラフバードを丸まま抱えて来るのは非効率か。でも俺には魔法の鞄があるから、丸まま持って来てもポーターがいなくても全然平気だ。あと聞きたい事は……薬草は初心者講習で習ったけど、キノコは習っていない。


「ポーターは必要無いので大丈夫です。それと食用キノコってどんなのですか?」


「あちらに資料室がありますので、自分で調べてください。それと、子供達は無事なんですか? いくらあの子達があなたといる事を望んだとしても、子供を食い物にするような行為は許される事はありませんよ」 

 資料室なんてものがあるのか。そんな便利な物があるのなら最初に教えて欲しかったな。そう言えばいきなりからまれたし、精霊術師の事でそれどころじゃ無かったな。


「食い物にしているつもりはありませんし子供達は元気ですよ。まあ、冒険者ギルドに連れてくると何をされるか分からないので、特別な事が無ければ連れてくる予定はありませんけどね」


 エルティナさんの無感情な瞳に、疑いの感情が浮かび上がった。分かっていた事だけど信用のなさがハンパじゃないな。たぶん俺が子供達に酷い扱いをしているとか疑っているんだろうな。確かにギルマスと揉めたけど、それ以外は特に問題を起こしたつもりも無いんだけどね。


 カウンターを離れて資料室に向かいキノコの事だけを調べ冒険者ギルドを出る。他にも色々調べたいけどみんなが待っているからな。夜にでもまた来よう。 

 

「五十層を突破した人物の情報を必死で集めているみたいだけど、まったく裕太の事は浮かんでないわね。後は裕太の悪口をカールがいまだに言いふらしているみたいよ」


 全然分かっていないのか。せめて少しは情報を掴んでいて欲しいのに。このままだと自分で情報を流すという、微妙に恥ずかしい行為を行わなければならなくなる。それってとても切ないよね。


 後はカールが俺の悪口を言いふらしているのか……カール? ……ああ、冒険者ギルドで絡んできた奴だよな。全財産で許してあげたのに悪口を言いふらすとは酷い奴だな。


 まあ、悪口を言いふらされて無くても評判は最悪だった気もするからどうでも良いか。機会があったら嫌みでも言うぐらいで勘弁してあげよう。カールの御蔭で儲かったんだしね。


(そうなんだ、ありがとう。ギルマスはどんな状態だった?)


「出かけてるみたいで冒険者ギルドの中にはいなかったわ」


(じゃあ、次の機会だね)


 なんか探してって言ったら直ぐに見つけてくれそうだけど、そこまでやっちゃうとシルフィに依存しちゃいそうだよね。頼る時と頼らない時の線引きが難しい。



 ***



「じゃあ、みんな今から迷宮に入るから、気を抜かないように。洞窟の中は基本的にサラ達が敵を倒しながら進む事。ウリとフクちゃんとマメちゃんに下に降りる階段を探して貰いながら進むんだよ。ベル達はサラ達の護衛をよろしくね」


 ベル達が元気に返事をしてくれる中、サラが不安そうに質問をして来た。


「お師匠様。初めての魔物も居ますし道に迷ったりしたら……大丈夫なんでしょうか?」


「あー、大丈夫だよ。道に迷ってもシルフィが内部を把握しているし、初めての魔物でもフクちゃん達なら問題無く倒す事が出来る。心配しないでしっかりとフクちゃん達と、コミュニケーションをとりながら進むこと。危なくなってもベル達が守ってくれるけど、ちゃんと自分達でも注意するようにね」


 三人がしっかりとうなずいた事を確認して迷宮の中に入る。前回俺を止めた門番さんに再び止められたのが悲しい。子供達を連れているからか、前回ソロで入ろうとした時よりもしつこく止められた。


 無理はしない事と子供達も戦える事を説明して何とか中に入れて貰った。まあ、初心者が子供達を連れて迷宮に潜ろうとしたら、止めるのは当然だからしょうがないか。でも迷宮に入る前に疲れるのは勘弁して欲しい。何度か迷宮に入れば止められる事も無くなるはずだからそれまでの我慢だな。


「よし、じゃあ頑張ってね」


 サラ達に声を掛けると、頷いた子供達は話し合った後に隊列を組んだ。先頭はマルコで中盤がキッカ、最後尾にサラの布陣だ。


「ウリ。魔物のけいかいをたのむ。たおせるならたおしていいからな。道が分かれるまではそのまま進むから、サラ姉ちゃんとキッカはおれたちに風壁をはって、まわりのけいかいを頼む」


 マルコの指示でそれぞれの精霊にお願いして慎重に先に進む子供達。しばらく進むと分かれ道に差し掛かった。


 どうするのかドキドキしながら見守っていると、どうやらウリを手元に置いて防御を固め。フクちゃんとマメちゃんを先行して偵察に出すようだ。


 階段。行き止まり。宝箱が見つかったら引き返してくるように頼んでいた。一層に宝箱が残っているのかは疑問だが、良い方法だと思う。


 浮遊精霊には一層全部を一気に索敵する能力は無いので、しっかり索敵する時間を取って慎重に進むようだ。


 ………………暫く経つとフクちゃんが戻って来た。


「フクちゃん。階段が見つかったら右手に。行き止まりだったら左手に。宝箱だったら動かないでね」


 フクちゃんはサラの右手にふよんと移動した。


「階段をみつけたのね。キッカ、マメちゃんを召喚して」


「うん」


 キッカがマメちゃんを召喚して手元に連れ戻す。フクちゃんに案内してもらって全員で慎重に進んで行く。なかなかよく考えられていて、安心して見ていられるな。この調子ならサラ達の迷宮探索は無事に進みそうだ。

読んでくださってありがとうございます。

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