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七百七十四話 桜並木計画とマリーの災難

 ジューン姫との打ち合わせである程度の目途が立ち、その下準備でサクラに精霊樹の脇芽を生み出してもらう。その時にラエティティアさんからとてもキュンとする笑顔を見せてもらい、ついでにラエティティアさんの精霊樹の梅の木バージョンが楽園に植えられることになった。梅干しがとても楽しみだ。




 サクラをたっぷり褒めそやしラエティティアさんにキュンとしたあと、桜から受け取った精霊樹の五本の脇芽を湿らせた布で包む。これでとりあえずは大丈夫だろう。


「では裕太様、私はそろそろエルフの国に戻りますね。今日はありがとうございました」


「いえいえ、こちらこそ助けていただいて助かりました。あ、ラエティティアさんの精霊樹の脇芽はどこに植えますか? 用意が必要なら準備しておきますよ」


 ラエティティアさんにはサクラのことを含めて本当にお世話になっているので、俺としてもできる限りのことをしたい。


「そうですね、みなさんの存在を近くで感じられると嬉しいですから、裕太様が作ったウッドデッキの傍にスペースを用意していただけますか?」


 サクラの影響もあるのだが、本当にラエティティアさんは俺達に好意的に接してくれる。そのことに甘え過ぎるのはよろしくないので、俺もできる限り好意を返せるように頑張ろう。


「分かりました。あのあたりであれば、ラエティティアさんの好きな場所に植えて構いません。なんだったらウッドデッキの中心をくりぬいてそこに植樹してみませんか?」


 自分で言っていてなんだが、それって結構よいアイデアなのでは? ウッドデッキ一色から形に変化が生まれるし、その中心で咲く梅の花……雅な雰囲気が生まれる気がする。


「うふふ。それも楽しそうではありますが、少し落ち着かないと思いますので、少し離れた場所でお願いします」


 残念だが俺のウッドデッキ雅化計画は延期のようだ。


 別に精霊樹の脇芽でなくても雅な感じな木を植樹したらいいのだが、サクラやラエティティアさんを差し置いて他の木をウッドデッキの中心に据えるのは微妙に納得がいかないからな。


 では、とエルフの国に戻っていくラエティティアさんを見送り、次はドリーとタマモの後を追いかける。


 桜並木のコースは桜の精霊樹と妖精の花畑の中心を一直線に結ぶことにした。


 百花咲き乱れる花畑から桜並木を抜け、たどり着くのは見上げるほどの巨大な桜。ファンタジーで素晴らしいと思う。


 始点も終点も観光名所として有名になるレベルになりそうなので、もし地球に存在していたら世界遺産レベルの観光地になる気がする。


 まあ、まだ妖精の花畑には花どころか草の一本も生えていないんだけどね。でも、精霊が協力して妖精が造る花畑だ、どれだけハードルを上げても期待に応えてくれるだろう。


 ん? 始点終点だけど、ホームに近い精霊樹の方が始点になるのかな……まあ、どちらでもいいか。


 俺が下らないことを考えている間にドリーの講義が終わり、タマモが気合を入れて四肢で踏ん張る。何度も思うけど、空中で四肢を踏ん張る意味…………可愛いからか。


「くぅー!」


 タマモが気合を入れて叫ぶと四本の木がうねうねと動き出す。楽園の森はローゾフィア王国の大森林と違い若い森なので、木々の配置換えもそれほど困難ではないらしく、タマモの雰囲気は緊張よりも楽しさが勝っているように思える。


 楽しさといっても別にふざけている訳ではなく真剣に楽しんでいる様子なので問題はない。楽しく学べるのが一番だ。


 でも、俺はドリーが一気に木を移動させると思っていたから、そこは少し意外だったな。


 まあ、サクラが用意してくれる精霊樹の脇芽も少しずつなので、これはこれでちょうどいいのかもしれない。


 そして木々が移動して荒れた地面をトゥルが均せば、サクラ、タマモ、トゥルの三者協力の桜並木が完成することになる。よし、この道はサクラタマモトゥルロードと名付けよう……長すぎるしそのまますぎるか。


 そもそも、楽園内だと桜並木だけで十分に通用するから道に名前を付ける意味がないな。


 俺はこのままタマモの頑張りを見守るが、一緒についてきてくれている大精霊達やジーナ達は解散して自由行動してもらおう。


 ん? いつの間にか大精霊達の数が減っている。というかドリーしか居ないのだが?


 別に用事がないから戻るのは構わないのだが、いつもなら一声くらいかけて戻る……あ、居た。


 少し離れた場所で、というか精霊樹の根元付近に集まっている大精霊達。


 ああ、そういうことか。


 近づいて漏れ聞こえた会話で全てが理解できた。


 うん、精霊樹の脇芽の花蜜と百花蜜で作る妖精の花蜜酒が現実味を帯びてきたから、完成した時の味見や分配等の話し合いを始め、俺達が移動したことにも気が付かないくらい夢中になっていただけだな。放っておこう。




 ***




「ソニア、門から、もしくは迷宮都市かフィオリーナのところから、裕太さんの来訪の報告はありませんか?」


「ええ、ないわ。残念だけど時間切れね」


「そうですか。同行はともかく、せめてアドバイスくらいお願いしたかったのですが……」


 最後に裕太さんと会った時、魅惑の新素材であるチョコレートが溶けてしまうと聞いて焦ってしまったが、せめて次の約束くらいはしておくべきだった。


 まさかあれから一度も姿を現さないとは。少し早いが周期的には姿を見せてもおかしくない頃合いなのですが……。


「ふぅ、仕方がないわね。ソニア、準備を始めましょう。王妃様のサロンは王妃様の戦場。そのサロンに王妃様側でお手伝いするのですから手抜かりは許されません。しっかり磨いて戦いに備えますよ」


「ええ、準備はできているわ」 


 今日はいよいよ私達がお手伝いをした王妃様のサロンが開催される。


 参加者としてではないが、接待役のフォローとして我がポルリウス商会も同席を許された。


 サロンに集まるのは王妃様がお客様と認める上流階級の皆様。つまり、我がポルリウス商会の素晴らしいお客様になって頂ける可能性を持つ方々ということです。


 まあ、この魅惑の新商品であるチョコレートは、裕太さんに事前に手を打たれてしまい商材とすることすらできないのですがね。


 チョコレートを大変気に入って頂けた王妃様に詰められて大変でした。


 なんとかなりませんかね?




 ***




「まあ! 真っ黒な見た目からは想像もつかない濃厚な香りと味、素晴らしいですわ!」


 王妃様のサロンは王家のスタッフの優秀さもあり順調に進み、そしていよいよチョコレートが提供された。


 その提供されたチョコレートに感嘆の声を上げたのは公爵夫人、やはり王妃様のサロンに招待されるお客様は超一流。


 たしかあの夫人の公爵家は河川が集中する地域を治めていて、物流に強い影響力を持っていたはずです。


 是非ともお近づきになりたいです。


 チョコレートが商売に使えたなら、それをきっかけにお近づきになれたのですが……。


「ええ、その甘味はチョコレートというのよ。妾も初めて味わった時は衝撃を受けたわ」


 そうでしたね。衝撃を受けた流れからそのまま酷く詰められたのでよく覚えています。さすがの私も怖かったです。


「どちらで入手されたかお伺いしても?」


「ええ、と言っても、そこに控えているポルリウス商会の娘が献上してきた物なので詳細は分からないのよ」 


 このタイミングで紹介するのですか。王妃様、私がチョコレートの入手方法を吐かなかったことを根に持っていますね。


 私だって王妃様の猛攻に耐えるのは辛かったんです。でも、裕太さんは絶対に敵に回してはいけない存在だと私の危機察知能力がガンガンに警鐘を鳴らしまくったのでなんとか耐えられました。


 裕太さんは正直よく分からない存在ですが、おそらく本気で怒らせたら国を怒らせるよりも危険な気がします。


 よっぽどなことをしなければ大丈夫だと確信もしていますが、契約違反をした場合、おそらく裕太さんは文句を言うことなく私の前から姿を消すことで済ませてしまうでしょう。


 あの人は面倒になったら黙って切り捨てるタイプです。そういう人物は関係修復が酷く困難なので、絶対にしくじれません。


 つまり、獲物を見る目で私を見ている王妃様と公爵夫人の猛攻になんとか耐え凌がないといけない訳ですね。


 ソニア、フォローは頼みましたよ。……ソニア、なぜ視線を合わせないのですか? 気配も消していますよね? もしかしなくても私にだけ押し付けるつもりですね?


 そんなことは絶対に許しません。一蓮托生、船が沈む時は一緒です。


「ポルリウス商会の娘でしたか。最近よく聞く商会名ですが、何か特別な伝手を手に入れたのかしら?」


 ポルリウス商会で新たに扱うようになった商品は上流階級垂涎の物ばかり。


 つまり私のこともある程度知っていると考えるべきで、チョコレートもその伝手で手に入れたのかと疑っている訳ですね。


 そこまで分かっているのであれば、王妃様も公爵夫人も直接裕太さんと交渉すればよいのにと思わなくもないのですが、何故か……いえ、薄々は察していますが裕太さんは王侯貴族からアンタッチャブル扱いされています。


 つまり、その裕太さんと間接的に交渉するためにも私の協力が必要というわけで……今回の王妃様のサロン、私を追い詰めるために開催された訳ではないですよね?




 ***




 ん? なんか遠くからマリーさんの悲鳴が聞こえた気がする。


 ……まあいいか。


 どうせ商売関連でちょっと面倒ごとに巻き込まれたとか損したとか、ソニアさんの悪戯で世間体が傷ついたとかそんな感じだろう。


 獣人コスプレイベントとか、店前でのソニアさんとの大喧嘩とか、マリーさんの世間体は歴戦の強者レベルで傷ついているので今更だし、商売の面倒事かもしくは損益はマリーさんのバイタリティがあればいずれ回復できる。


 マリーさんは損が出て取り返そうと更に損をするタイプではなく、損が出たら石にかじりついてでも無理矢理どうにかするタイプだからな。


 ある意味信頼できる。


 今はマリーさんのことよりもいずれ、お迎えするであろう妖精達の第一陣をどう接待するかを考える方が肝心だ。


3/10 本日コミックブースト様にて『精霊達の楽園と理想の異世界生活』の第83話が公開されました。

メルとメラルの契約、そして始まるギルマスとの対決、お楽しみいただけましたら幸いです。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
つまりいつもギリギリを攻めてるからあんなにウザ……しつこ……厚かま……真摯なんだね スラムダンクの魚住が4ファウルの時赤木に突っ込んだプレイを彷彿とさせやがるw
「まあいいか」・・・マリーに関してはこの一言に尽きるな
やはり精霊達は酒造でまとまらなかったか。 強制的にまとめても暫くしたら分裂しているのだろう。 複数の名前を一つに纏めると言いにくくなるので最終的には並木道としか呼ばれなくなるだろう。 マリーさんのチョ…
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