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七百七十話 大精霊達の話し合い

 心配していたジューン姫様が無事に楽園に顔を出してくれた。さっそくお茶会に誘い詳しい話を聞かせてもらったのだが、聞かせてもらった範囲では真っ当な方法で説得に当たっていたように思う。聞かせてもらった範囲ではだが……まあ、聞かせてもらえなかったのだからしょうがないよね。うん、しょうがない。




「じゃあさっそく話を進めましょうか。ジューン、場所はすでに用意しているから、後は育てるだけよ。いつから始められる?」


 俺が大切かもしれないことからそっと目をそらしていると、シルフィが気にした様子もなく話を進めた。


 前から思っていたけど、シルフィって心臓に毛が生えているよね。


 あと、妖精界の花蜜酒が輸入されないことには納得していても、楽園産の妖精の花蜜酒の完成が遅れることには納得できないんだな。


「そうね、妖精は外の世界をまったく知らないから、まずは慣れる時間が必要ね。候補を何人か連れてくるから、観光する時間が欲しいわ」


 まあ、見知らぬ外国に行っていきなり仕事、というのも……地球のビジネスマンは普通に熟していそうだが、慣れる時間はあった方が良いと俺も思う。


「それと、花蜜を溜める木が必要なのだけど、どの木でも構わないの? できれば精霊樹に花蜜を貯蔵できれば花蜜の質が上がって嬉しいのだけど?」


「あう?」


 精霊樹という言葉に、ラエティティアさんにお世話してもらいながらお茶会のおやつを堪能していたサクラが反応する。


 というか、木に花蜜を貯蔵するということは、サクラの精霊樹に穴を開けるということなのでは?


 妖精の花蜜酒は美味しいし、質が高いほど嬉しいのは間違いないが、その為にサクラの本体に穴を開けるのはあり得ないだろう。


「あう!」


「え? いいの? 木に穴を開けることになるんだよ?」


 断ろうとしたのだが、その前に口周りに菓子クズを装備したサクラが良いよ、と言った様子でコクコクと頷くのでビックリしてしまう。


「裕太さん。精霊樹であれば本体を傷つけずに貯蔵スペースを作ることは簡単ですよ。サクラちゃんが望めば、精霊樹はそのように変化します」


 俺が心配しているとサクラの口周りを拭きながらラエティティアさんが教えてくれる。


 ……なるほど、そういえば前は普通の木……とは言えないが大きさと雰囲気を除けば普通の木の形をしていた精霊樹が、サクラの意志一つで散らない桜に変身したんだったな。


 そんなことができるのなら、巨大な精霊樹の一角に蜜を溜めるスペースを用意することも可能か。


 そのうえで妖精の花蜜酒の品質が上がるのであれば、俺に言うことはないな。というかむしろ積極的に活用して美味しい妖精の花蜜酒を造ってほしい。


 まあ、妖精にとっては花蜜酒を造るのが目的ではなく花蜜自体が目的で、妖精の花蜜酒は副産物でしかないのだけどね。


「こちらとしても妖精の花蜜酒の品質が上がるのは大歓迎だから、精霊樹を貯蔵庫として使ってちょうだい」


 俺とサクラの様子を確認したシルフィがジューン姫にOKの返事をする。


「ありがとう。あとはそうね……ああ、花を育てるのに精霊の協力を得られるのかしら?」


「? 協力するのは構わないけど、妖精の花蜜は妖精が育てた花からしか採取できないんじゃないの?」


 シルフィが首を傾げるが、俺も同意見だ。妖精が育てることによって花の蜜が沢山とれるようになるってドリーが言っていたはず。


「どうやら情報に齟齬が有るようね。たしかに妖精が育てないと妖精の花蜜は採取できないけど、妖精の魔力をしっかり馴染ませた種を育てて、定期的に花畑に妖精の魔力を浸透させることで花の宿る魔力を上積みしていくことが基本だから育成速度はそれほど関係ないわ」


 なるほど、おそらくドリーも知らなかった情報なのだろう。ドリーなら植物に関してなんでも知っていると思っていたが、さすがに妖精の花の育て方なんてニッチな部分だと抜けもあるようだ。


 まあ、それでも引きこもった妖精の使う当てもない知識を、ある程度でも持っていただけ凄いんだけどね。


 あれ? ジューン姫の言葉に何か引っかかるのだが、それが何かハッキリとしない。


「でも、育成速度が速まれば上積みできる魔力の量が減るんじゃないの?」


 あ、俺が気になっていた点もそれだ。さすがシルフィ。


 でも、そんなシルフィの鋭いツッコミにジューン姫が首を傾げる。何を言われているか理解しきれていない様子だ。そんなに難しいことを聞いただろうか?


「……ああ、そういうことね。それなら問題ないわ。さすがに永遠とまではいかないけれど、妖精が育てる花はなかなか枯れないのよ。人間の世界で言うところの、えーっと……季節、そう、季節が二十や三十巡るくらいは花が咲き続けるわ」


 なにそのチート。開拓ツールも精霊も大概チートだが、妖精もそれなりに理不尽な能力を所有しているようだ。


 季節が廻るということは二十年から三十年維持できるということだから、それなら花が咲くまでの期間は誤差程度になるか。


 まあ、死の大地は季節が巡るどころか環境が破壊されまくって、一年中日中は灼熱状態だけどね。


 ふむ、最高を目指すのであれば、全部を妖精にお願いしたほうが良さそうだけど、早く妖精の花蜜酒が呑みたい大精霊達が選ぶのは当然協力だよね。


 それに加えて、妖精だけが育てる花畑も別口で用意しようとするのも確実だな。また開拓がはじまりそうだが、今は物資も沢山あるからそれほど手間は掛からないから構わない。


 それにしても花が枯れないチートか。凄くはあるがどう役に立つかは分からないよな。


 ……あ、主食かどうか知らないが、妖精は花蜜を食べるんだった。


 もし主食となると、俺に置き換えると稲が枯れずに収穫しても収穫しても稲穂が再生するみたいな感じか?


 そうだとしたらとんでもないチートだ。楽園にご飯お代わり自由という素敵なサービスを導入できるかもしれない。まあ、現在でも似たようなものだけど。


「なら、当然協力するわ。裕太、ドリーを召喚してちょうだい」


 タマモも居るんだけど、いきなりドリーに話を振るのか。


 大精霊などの上の存在は下の子達に成長の機会を与えることに積極的なのだけど、今回はガチなので最初からフルスロットルなようだ。


 まあ、ドリーの行動を見るだけでもタマモの勉強になるから、このパターンでも構わないか。


「分かった。ドリー、召喚」


 ドリーを召喚すると、お茶会の席にドリーが現れる。


「どのような御用ですか?」


 お茶会をしている席に自分が呼ばれた理由が分からなかったのだろう。参加する時は自分の意志で参加するし、お茶会でドリーの力が必要になるケースも少ない。


 そんなドリーにシルフィがかくかくしかじかと事情を説明する。


「なるほど、ジューン姫、花はどのような種類を育てるか決まっていますか?」


「それはあなた達次第ね。百の花を用意すれば百の花が混ざった花蜜が採れるし、妖精の花蜜酒の味もその花蜜の味に左右されるわ。だから、あなた達がどんな花蜜酒が欲しいかで決めてちょうだい」


 なるほど、ハチミツでも様々な種類が混ざったハチミツを百花蜜というけど、百の花を用意すれば文字通り百花蜜になるということか。千の花を用意すれば千花蜜……なんかロマンだな。


 そして一種類の花の蜜を集める単花蜜。日本ではレンゲソウなんかの単花蜜が有名だけど、地球でも貴重品だったバラの単花蜜なんかも可能ということか。


 ジーナ達が造成し管理しているバラ園が楽園にもあるが、花蜜用のバラ園を造るのも悪くないかも。おそらくバラの香りがする素晴らしい花蜜酒ができるに違いない。まあ、想像でしかないけど。


「悩むわね……裕太、他の大精霊も全員召喚してちょうだい」


 ……マジか、とも思ったが、シルフィの要請は必要だ。大精霊はお酒に関しては妥協しないので、妖精の花蜜酒の土台となるこの議論をシルフィとドリーだけで決定したら禍根が残りかねない。


「了解」


 大精霊達の大喧嘩なんて楽園が吹き飛びそうな事態はゴメンこうむるので、すぐに残りの大精霊達を召喚する。


 そして現れた大精霊達にシルフィとドリーが事情を説明すると、大精霊達で大激論が始まった。


 しばらく続きそうなので、紅茶を入れ直し、新たな甘味を投入する。


 今回の甘味はクッキー。チョコレートクッキーの存在を忘れていたように、クッキーもまだまだ可能性が残っていた。だからルビーと一緒に再度検証を重ね、様々なクッキーを再現した。


 火の上級精霊であるルビーが作る焼き菓子は火加減が完璧なので、大きな缶に入ったクッキーセットに負けない、いや、それ以上の品質と種類のクッキーセットを再現できたと自負している。


 無論、ジューン姫達のお土産用にノモスに作ってもらった巨大クッキー缶も用意してある。


「まあ、なにこれ、新食感ね。カリッとしているのに口の中でほどけるように消えていったわ」


「それはメレンゲクッキーですね。卵白を掻き混ぜて……あ、動物性の食べ物は大丈夫でしたか?」


 いかん、そもそも妖精って動物性の物を摂取できるのだろうか? そうなると、いや、それならプリンの時点でクレームが出ているはずだから……大丈夫……だよな?


「? ああ、別に妖精はなんでも食べるわよ。ただ、基本的に花の蜜が一番好きだし花の蜜を食べていれば栄養が賄えるから他の食材を食べないだけ。でも、卵にこんな可能性があったなんて知らなかったわ」


 やはり大丈夫だったようだ。でも、今回は大丈夫だったが今後も大丈夫とは限らない。他種族に飲食物を提供する時は事前確認を徹底することにしよう。


「それなら良かったです。今日はお土産にこれらのクッキーを詰め合わせた物を用意しているので、妖精界でもお楽しみください」


「まあ、それは助かるわ。爺を説得するためにあなたのお土産をバラ撒いたから、城の妖精達が甘味に興味津々な様子なのよね」


 ……ジューン姫は軽く言っているが、本当に興味津々程度なのか? カシュー君の顔が蒼ざめているから、それだけだとは思えないのだが……妖精界では何が起こっているんだろう?


 非常に気になる。


2/10日、本日コミックブースト様にて『精霊達の楽園と理想の異世界生活』の第82話が公開されました。

迷宮からの帰還とギルマスへのあれやこれやと、大変盛り沢山ですのでお楽しみいただけましたら幸いです。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
M&◯'sの工場からでた廃液で作られてしまった青色はちみつのようなものでも意図的にいけそうだな
ハチミツ≠花蜜だからね 野生のハチミツがどうかは知らないけど 花蜜は不味いってほどじゃないけどだいぶ薄味でハチミツほど甘くはない 俺はガキの頃サルビアやツツジ吸ってたから詳しいんだ
カシューくん、大精霊にドン引きしているんじゃないよね?
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