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七百五十八話 聖域の空気

 妖精へのお土産の為に様々なチョコレートを製作。ただ、ホワイトチョコレートの製作には失敗し、やけくそで精霊関係には劇薬になりかねないウイスキーボンボンに手を出してしまい、結果、予想通り大好評を博した。まあ、様々なチョコレートの製作に成功し、有名チョコレートブランドに負けないお土産を作成できたので、納得はしている。




「いやー、僕もね、偶に酒島にお世話になっているんだ。あそこに行くにも順番があるけど、それでも割とすぐに順番が回ってくるし、その時には好きなお酒が自由に楽しめる。最高の場所を造ってくれてありがとうね」


 光の精霊であるグロウの案内で聖域に向かって出発した。


 でも……ただ、まっすぐに飛んでいるようにしか見えないのだけど? 


「あはは、楽しんでもらえているのであれば、酒島を用意した甲斐がありました」


 酒島は基本的に精霊の手で運営されているので俺も詳しくはないのだが、毎日が大盛況らしい。


 でも、割とすぐに順番が回ってくる?


 酒島は島とはいえ、そこまで大きな島ではない。大盛況とはいえ、数百人規模で混雑するだろう。


 酒島を利用するのは基本的に上級精霊以上らしいのだが、思った以上に上級以上の精霊は少ないのかな?


 世界は広いし、自然も広がっているのだから月一で順番が回ってくる程度でも驚かないのだが……あ、精霊って時間間隔が俺とは違う可能性もあるか。


 一月なんて精霊にとって二日三日、下手をしたら一日くらいの感覚の可能性もあるな。


 でも、中学生高学年くらいの姿でお酒に言及されると、少し反応に困る。


「あと、食事も凄く楽しいよ。長い時を経て食に興味を失っていたけど、目新しい料理が増えていて、しかも頼めばすぐに食べられる。酒島は最高だよ」


 あ、食事も楽しんでくれているんだな。


 ルビー達が料理を広めるために色々と頑張っているのを知っているから、俺も結構嬉しい。


 楽園に遊びに来るチビッ子達も食事を楽しんでいるし、精霊の間に料理ブームが到来するかも。


 まあ、精霊が自由に姿を現せる場所が聖域くらいしかないから、簡単にはいかないだろうけど……。


「おっと、ここからはちょっと複雑だから気をつけてね」


「え? 今までと変わりないようにみえるけど? それに今までもまっすぐ来ただけだよね?」


 グロウの言葉に疑問を呈する。


「あら、まっすぐではなく何度も微妙に方向は変わっていたわよ?」


 シルフィの言葉に驚く。まったく気が付かなかったけど?


「ああ、人には分かり辛いよね」


 いや、シルフィ以外のうちの子達もまったく気が付いていないよ? まあ、ジーナ達はグロウの言葉が聞こえていないから仕方がないと思うけど。


「えっと、少し待ってね。……それ!」


 グロウが手を振るとキラキラとした光が周囲に球形に広がっていき、その光が通過した場所に半透明な壁が浮かび上がった。


 この壁はジーナ達にも見えるようで、突然の光景に驚いている。


 だが、驚くのも無理がない。


 なにせ広大な森を覆うように、半透明な壁が巨大な迷路を形成しているからだ。


 ん? ジーナ達にも見えている?


「こんな光景、見えるようにしてよかったの? 下からも丸見えだよね?」


「ああ、光の加減で君達以外には見えないようにしているから心配ないよ」


 さすが光の上級精霊、こんなに大規模な光景なのに、そこら辺の配慮は忘れていなかったようだ。


「なるほど」


「あと、この壁に触れると方向感覚が狂わされて、最終的に森の外に誘導されるようになっているから触らないようにね。光の精霊王様の力だから、僕にもどうにもできないよ。まあ、危険がある訳ではないけど、最初からやり直すのは面倒だよね」


「マルコ、ストップ!」


 そういうことは最初に言ってほしい。マルコが興味津々な様子で半透明の壁に手を伸ばしていたぞ。


 慌ててジーナ達に壁について説明し、自重を促す。


「それにしても良くベル達は騒がなかったね。知っていたの?」


 俺の言葉にベル達がコテンと首を傾げる。


 俺の言葉の意味が伝わっていないようだ。何か難しいことでも言っただろうか? こういう変わった出来事に、ベル達は大喜びするよね?


「ふふ、ベル達だって精霊なのよ。精霊王様の力に触れてはいけないくらいの判断はできるわよ」


 なるほど、俺には誰が力を使ったのか分からないが、精霊なら判断が付くらしい。


「あれ? 精霊王様の力が感じられるのであれば、案内は必要ない……いや、これだけ複雑な迷路なら案内は必要だよね」


 話している途中で自己完結してしまった。平地でも複雑な迷路は難しいのに、ここは立体迷路だから難易度は凄まじいことになるだろう。


「精霊王様の力を感じられても、この空間全体が精霊王様の力に包まれているから私でも判別は無理よ」


 シルフィでも無理なのか。というかこの広大な森全域を包む力って……王の称号は伊達ではないのだな。ライト様のプリティな見た目からは想像できないパワーだ。


「なるほど、それで許可と案内が必要なんだね」


「そうなんだよ。この迷路の全体を把握できるのって光の精霊でも少ないんだ。光の大精霊ならある程度大丈夫だけど、上級精霊レベルなら僕を含めて数人しかいないんだ」


 マジか。中学生がドヤ顔をしているようにしか見えないが、光の大精霊クラスでなければ難しいことができるって、一部かもしれないが上級精霊なのに大精霊に並ぶ能力があるってことだよな。


 実はグロウってエリート精霊?  


 それは凄いねと褒めると、グロウは少し照れながらも胸を張る。やはり中学生にしか見えないな。


「さて、改めて出発するよ」


 少し褒め過ぎたのか、グロウが急遽出発を宣言した。俺の褒め言葉ならスルー出来たかもしれないが、俺の褒め言葉を聞いたベル達が純真無垢なキラキラした瞳でグロウを褒めだしたから耐えられなかったのだろう。


 分かるよ。ベル達はなんの裏もなく本気で褒めてくれるから、テレの方が先に来ちゃうんだよね。


 ……失敗したかもしれない。


 グロウが言ったここからは少し複雑になるという言葉通り、迷路が複雑化していき、左右の急カーブだけではなく上下左右斜めに加え、回転まで加わり方向感覚と平衡感覚は無事にお亡くなりになった。


 正直、薄暗い迷宮の中を飛ぶよりも怖い。


 それなのにチビッ子達は大喜びで、疎外感まで味わう結果となった。少し気が強いタイプのジーナや、活発なマルコが喜ぶのは理解できるが、令嬢タイプのサラや引っ込み思案なキッカまで楽しんでいたのは予想外だ。




「ここで到着。みんなお疲れ様」


 ぐるんぐるんと視界がブレまくり、到着の言葉と同時に着地した地面にへたり込んでしまった。


 聖域に足を踏み入れたという感動的な場面なはずなのだが、こみ上げてくるのは感動ではなく吐き気……ん?


 呼吸をするたびに深い森の香りが鼻を抜け肺を満たしていく。その香りを感じるにつれて治まっていく吐き気。


 これが……聖域の空気か……。


「じゃあ僕はこれで帰るね。あ、帰る時は適当に飛べば勝手に森の外に出るから安心してね」


「え? あ、ありがとう?」


 もう少し聖域に入った感動を分かち合ったりしないのかな? あ、グロウからすると日常業務の一環だから感動も何もないのか。


 人を案内するのは珍しいにしても、精霊は何度も案内しているはずだしね。


 あ、もう飛んでいっちゃった。


「突然みんなの姿が見えたから聖域に入ったのは分かったんだけど、あの少年? が光の精霊のグロウだったんだよな?」


「ちょっとはなしてみたかったな」


 ジーナとマルコがグロウが飛んでいった方向も見つめて話す。そうか、聖域に入ったからグロウの姿も当然見えるよな。


 マルコが残念そうにしているのは、歳が近そうだから友達になりたかったからかな?


 実際にはかなり年が離れているんだが、もう少し友人関係が築けるように配慮するべきかも。


 年が近そうな俺が知っている少年……いかん、厨二な少年で契約精霊まで厨二なあの子しか思い浮かばない。


 同じ精霊術師として交流は深まりそうだが、保護者として躊躇する物がある。


 厨二……絶好調時は無敵なのだが、現実に戻ると心に深い傷を負うからな。そして俺は厨二は伝染すると思っている。


 そんな修羅の道にマルコを進ませるのは……まあ、仮面と燕尾服を身に着けた盗賊な師匠が居る時点で手遅れな気がしないでもないが、保護者として諦める訳にはいかない。


 とはいえどうしたものか……。


「さて、そろそろこちらも出発するわよ」


 悩んでいるとシルフィが出発を宣言した。そうだった、ここは聖域で今から妖精界を目指すんだった。マルコの友達関連は後で考えよう。


「こっちね」


「あれ? 飛んでいかないの?」


 シルフィが歩き出したので疑問を覚えて質問する。急ぐ場合、というか、シルフィは基本的に楽園でも飛んで移動することが多い。


 今回のように張り切っている場合は俺達を風で包んでサクサク移動するのが普通だ。


「せっかくの聖域なのだから裕太達もじっくり観察したいでしょ?」


「……なるほど、ありがとうシルフィ」


 お礼の言葉に少し照れた様子を見せるシルフィ。シルフィも意外と照れ屋だよね。


 シルフィの言葉に甘えて聖域の中で歩き始める。


 年月の積み重ねなのか、地面がフカフカで柔らかい。様々な植物が世代交代を繰り返したことで柔らかい地面が生み出されたのだろう。


 フカフカした地面に気をとられながら歩いていると、いつの間にか完璧に吐き気も治まり、それどころか爽やかな気分に変わっている。


 やはり聖域の空気には特別なものがあるのかもしれない。  


「そういえば聖域に魔物は居るの?」


 これだけ深い森なのだから普通なら魔物の一匹や二匹、いや、数えきれないほどの魔物が存在していてもおかしくない。


 おかしくないが、ここは聖域。普通と同じにしてはいけない。


「居ないわね。古代、ここが聖域になった時に魔物は全て追い出されたわ」


 やはりそうか。ならジーナ達も迷子に気をつけさえすれば自由に行動させて大丈夫だな。


 まあ、今は楽園ではない場所で実体化したシバ達がハイテンションでジーナ達に絡んでいるから、自由に行動できそうにはないけどね。


 ちなみにベル達はすでにハイテンションで森の中を飛び回っている。俺は普段から姿も見えているし接触もできるから特別感がないのは分かるけど、少しジーナ達が羨ましい。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
玉ウサギ様は新作チョコ菓子もウィスキーボンボンも好きそうだなぁw また精霊王様達に会うのが楽しみ
けっこうエリートだったのねグロウくん まぁ聖域への案内を任されるくらいだしそりゃそうか そしてライト様のすごい一面が見れてニッコリ ただの甘味好きな玉ウサギじゃなかったぜ、さすが精霊王!
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