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七百五十七話 チョコ開発と聖域への入り方

 ローゾフィア王国に出向き、サラとヴィクトーさんとの対面、土とキノコを確保して宴会でおもてなしをしてもらい、一泊しかしていないが楽しい旅行になった。楽園に帰還後は確保した土を入れて聖域の拡張を終わらせ、妖精の手土産にチョコレートも量産した。




「ゆーた、ちょこれーと?」


 朝食を済ませ、少しのんびりしてから聖域に出発というタイミングで、ベルがコテンと首を傾げながらも期待した目で俺を見る。


 いや、ベルだけではなくレイン達もジーナ達の契約精霊達も、そして、普段はあまり甘味に興味を示さない大精霊達も俺を見ている。


 大精霊達は見送りの為に朝食の席に顔を出したと思っていたのだが、もしかして大精霊達もチョコレートを? ノモスも?


「……もうすぐおでかけだし、妖精の為のお土産なんだから少しだけだよ?」


 俺の言葉にチビッ子達が喜んで飛び回る。精霊は文字通り飛び回るから、部屋の空間全体をフル活用で喜びを表している。


 昨日作ったチョコレート、そんなに気に入ってくれたのか。


 まあ、頑張ったから喜んでくれるのは俺も嬉しいが、ハリキリ過ぎたかな?


 貴重で美味しいお酒を提供してもらう上に、誘致まで試みるのでお土産をハリキルべきじゃないか?


 そう思った俺は、新たなチョコレートを製作することを決定した。


 都合が良いことに、昨日は精霊が遊びに来ない日でルビー達も休日だったので、協力を要請し手伝ってもらった。


 なんとなくだが妖精はチョコレートの苦味が弱い方が好きなんじゃないかと予想し、まず、粉ミルクを増やすところから改良を開始した。


 そのバランスを試行錯誤している時に、ルビーがミルクを生クリームにしたら駄目なのか? という疑問に、じゃあ挑戦してみようとなりその結果、生チョコのようなチョコレートが完成した。


 微妙なバランスや混ぜ合わせるタイミング、おそらく俺だけなら生チョコにはならず、ベタベタしたチョコレートになっただろう。


 生チョコという、かなり強力な武器を手に入れたことで、俺のテンションも急上昇。


 キャラメリゼしたナッツ類を利用し、ナッツチョコ、オレンジの皮を利用しオレンジピールチョコレートの製作にも成功。


 オレンジピールを作ったのなら、他の果物を利用するのは当然では? という流れになり、生の果物にチョコレートをコーティングすることに。


 見た目も華やかで美味しいチョコレートが完成。


 そこで止まっておけばよかったのに、そういえばホワイトチョコレートという物があってね? なんて調子に乗った発言をしてしまい、試作に挑戦。


 無惨に失敗した。


 そもそも黒いチョコレートをどうやって白にするんだ?


 ミルクチョコレートには粉ミルクを使用するという知識を持っていた俺でも、その辺りの知識までは持ち合わせておらず、貴重なチョコレートをかなり無駄にしてしまい、ルビーと共にヴィータに食材を無駄にしてはいけないと怒られる始末。


 そして、失敗で終わるのが悔しい俺は、禁断のチョコレートに手を出してしまう。


 そう、ウイスキーボンボンだ。


 俺はウイスキーボンボンの製造方法を知らなかったが、こういうチョコレートでうんぬんかんぬんと完成系を説明。


 正規の製造方法とは違うだろうが、ルビーが形にしてくれた。


 ルビー流ウイスキーボンボンの作り方。


 まず、一口サイズのチョコレートを用意します。


 火の上級精霊であるルビーの繊細で精密な火で一口チョコレートに小さな穴を開け、中だけ溶かします。


 溶かして流れ出したチョコレートは、後でスタッフ(ベル達)が美味しくいただきました。


 そこからサフィにお願いし、水あめと絡めたウイスキーをチョコレートに流し込んでもらう。その後、再びチョコレートで溶接し完成。火の上級精霊と水の上級精霊のコラボで生まれたウイスキーボンボン、地味にレアだと思う。


 確実に正規の方法とは違うが、味的には立派なウイスキーボンボンが完成だ。


 初期ロットはウイスキーをそのまま注入したことで、なんか違うという結果になったが、もっとウイスキーに粘度があって甘みも強かったという話を聞いて、ルビーが水あめと混ぜることを提案、無事に完成した。


 まず驚いたのが水飴の存在。俺は作った覚えがなかったのだが、この世界でも貴重な甘味ということでルビーは作り方を知っており、現物もしっかり作成していた。


 そして水飴とウイスキーを混ぜる工程も微妙な温度管理が必要らしく、なかなか大変な試作となったようだ。


 さすがに大精霊達が作ったウイスキーは、地球の品質に追いついていないので、若干味は落ちるものの、繊細な舌を持ち合わせていない俺には大満足な一品となった。


 そして気が付く。


 お酒を使ったメニューに大精霊達が食いつかない訳がないことを。


 甘いものがそれほど得意でないノモスですら仏頂面を緩める味をしていたウイスキーボンボンは、あっという間にシルフィ達やルビー達に食い尽くされてしまった。


 まあ、お土産を食い尽くしてしまったことに反省したルビー達が夜通しウイスキーボンボンを大量生産してくれたので、ストックは十分なのだが……。


「直ぐに出発だから控えめにね」


 期待の視線に抗えず、チョコレートの盛り合わせをテーブルの上に乗せる。


 チビッ子達がチョコレートの山に群がる。


 そして大精霊達の前にはウイスキーボンボンを五粒。


「裕太ちゃん、お姉ちゃんは少し少ないと思うわー」


 それぞれ五粒しかないウイスキーボンボンに不満を漏らすディーネ。他の大精霊達も残念そうにしている。


「まだ朝だからね。夜のおやつとか宴会ではもう少し出すから我慢してくれ」


 おやつまでお酒が主体になったらいよいよ末期だもんな。それにシルフィは今から空を飛ぶのだから、本来なら一粒すら遠慮してほしい気分だ。


 まあ、この世界には飲酒に関する罰則もないし、樽ごとお酒を呑みほす大精霊達には五粒程度のウイスキーボンボンは誤差だろうが念のためにね。


 念のためにと思いながらも、五粒提供してしまう俺は弱いのだろう。


 まあ、いいか。


 大精霊からチビッ子達まで全員がこの反応なんだ。


 お土産用のチョコレートは箱にも拘ったし、採算度外視で品質にも拘っているし、種類も豊富なので、有名高級チョコレートメーカーにも負けていないと自負している。


 妖精もこの手土産を気に入ってくれるはずだ。


「……え、ちょっと……みんな食べ終わったら顔を洗おうね」


 自己満足に浸っていると、チビッ子組がチョコレートで顔をベタベタにしていた。なんで食べやすいチョコレートを食べるだけなのにそうなるの?


 聖域への到着は少し遅くなりそうだ。




 ***




「ここが聖域……」


 眼前に広がるのは見渡す限りの大森林。ローゾフィア王国の大森林と比べても負けていない、いや、それ以上の規模に思える。さすが聖域。


「違うわよ?」


「え?」


 感心したように呟いた俺にシルフィがとんでもない返答をぶちかます。


 迷宮都市とは全然違う方向に飛んで七時間、途中でなんか戦争をしているような場所の上空を通り抜けて、嫌な気分になりながらたどり着いた場所が違うと?


 この大陸では各国で戦争をしていると聞いてはいたが、実際に戦争を確認して地味にショックだったんだが?


「厳密にいうとこの森全体が聖域という訳じゃなくて、この中の一部に聖域があるの。まだ結構距離があるわね」


 なるほど、貴重だと言われている聖域がこんなにでっかいのも変だよな。それにめちゃくちゃ目立つ。


「じゃあなんでここで止まったの?」


 今までなら休憩か目的に到着した時くらいでしかシルフィは止まらなかった。休憩は三十分前にしたばかりだから早すぎる。


「案内を待っているのよ」


「案内?」


 精霊王様に入る許可をもらい場所を教えてもらったと聞いていたはずだが、聞き違いだったか?


「聖域には精霊王様方が侵入を阻止する結界を全力で張っているのよ。案内無しで進むと、大精霊でも迷うわ」


「なにそれ、楽園にも張ってくれたりしないの?」


 マジで? それって俗に言う迷いの森ってやつだよね?


 死の大地の安全度はかなりのものだと思うが、それでも完璧ではないのでそんな便利な物があるなら欲しい。


 それに、妖精と言えば迷いの森はテンプレートともいえる。


 まあ、聞いた感じでは迷わせているのは妖精ではなく精霊のようだし、くぐり抜けても到着するのは聖域のようだけど、その聖域の中に妖精界への出入口があるのであれば、似たような物だろう。 


「無理ね。自然の力を利用した結界だもの。楽園に結界を張るのであれば、今の何十倍も開拓しないといけないわ。頑張ってみる?」


「……遠慮しておくよ」


 今の楽園の何十倍って、確実に持てあます。


 徐々に必要な開拓を繰り返して、結果的に結界が張れる規模に成長したら精霊王様にお願いする感じが無難かな?


 まあ、何十倍だそうだから、俺の寿命の間にその規模まで成長する可能性は限りなく低いけどね。というか、そんなに開拓に翻弄される人生は嫌だ。


「こんにちは!」


「うお!」


 いきなり声を掛けられビックリして声を上げてしまう。ジーナ達とベル達の視線が俺に集まる。ごめんね急に大声を上げて。


「あはは、驚かせてごめんね。僕は光の上級精霊のグロウ、聖域までの案内係をしているんだ。迎えに来たよ」


 明るく挨拶をしてくれたのは、輝くような華やかな雰囲気の金髪碧眼の男の子。


 男の子? 青年とまではいかないが、メラルよりも大きい……なんというか中学三年生くらいのお年頃だな。この辺りは微妙に区切りが難しい。


 まあ、とんでもない年上なことは確かだけどな。


「あ、どうも、俺は裕太と言います。こちらは俺の契約精霊である―――」


 シルフィ達契約精霊とジーナ達弟子達を紹介し、現状を理解できていないジーナ達にも状況を説明する。


 それにしても道案内が光の精霊なのか。姿が見えなかったし、聖域の結界、その中で迷う機能は光を利用した迷彩なのかも。


 ん? そうなると夜は? ……なんか夜は闇の精霊とかが活躍しそうだな。


「手間を掛けて悪いわね。さっそくだけど、案内をお願い」


「うん、分かったよ。道を外れると森の外まで逆戻りだから、僕の後をしっかりついて来てね」


 あ、世間話とか打ち合わせとかはしないんだ。


 まあ、失敗しても森の外に出るだけなら問題ないか。ゲームとかだと無限ループに突入とか怖い罠が設置されていることもあるが、精霊主体の結界ならそれほど危険なことはなさそうだよな。 


11/11日、本日、コミックブースト様にてコミックス版『精霊達の楽園と理想の異世界生活』の第79話が公開されました。

メルとその親友の登場、どたばたと楽しい回ですので、お楽しみいただけましたら幸いです。よろしくお願いいたします。


読んでいただきありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
お酒を使ったお菓子が他にもあるのでは?と疑問持たれるのは時間の問題かな ラムレーズンサンドとか、洋酒のパウンドケーキとかは好きかな お酒のゼリーはそこまでだったな
楽園には迷いの結界よりもユウタの寿命を考えてエルフの移住者を募集した方が良いと思う。
”絵師ガチャ”って言い方はちょっと失礼だし好きじゃないけど、明らかに『精霊達の楽園』も『めざせ豪華客船』もコミカライズ担当で大当たり引いてるよね
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