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七百十二話 ダイエットの新たな可能性

 ウッドデッキを飾るグランピング用のテント、気に入ったものが無かったのでオーダーメイドすることになった。それだけでもワクワクしていたのだが、豪腕トルクの宿に到着すると、さらに衝撃的な展開が……マーサさん、結構痩せていた。




 宿の部屋でのんびりしているとジーナ達とベル達も戻ってきたので、夕食を済ませてまったりする。


「師匠、マーサさん、痩せていたな」


 ジーナが真剣な顔で話しかけてきた。ジーナのようなタイプの女の子でも、ダイエットに興味があるようだ。


 ただ、そこら辺のデリケートな話題を男である俺に振らないでほしい。


 マーサさんとかベティさんなら気にならないのだが、なんかジーナだと緊張する。世の年頃の娘さんがいるお父さんもこんな気持ちなのだろうか?


「う、うん、そうだね」


「なあ、師匠、それって誰でも痩せられるのか?」


「え? まあ、そうだけど、ジーナは痩せる必要はないと思うよ?」


 もしかして男性と女性の認識の違いってやつかな? 男性が良いと思うスタイルと女性が理想とするスタイルは違うと聞いたことがある。


 そうすると、余計なことを言ってしまったかもしれない。


「いや、あたしの話じゃないよ。おふくろがちょっとその辺を気にしていたから、方法があるのなら教えてほしいと思ったんだ」


 ダニエラさんか。あの人も好奇心旺盛で豪快な感じだけど、その辺りは気にするんだな。


「そういうことならもう少ししたらトルクさんに話を聞かせてもらうことになっているから、一緒に話を聞かせてもらう?」


「いいのか?」


「うん、別に秘密にしている訳ではないし、問題ないと思うよ」


 基本的に俺が伝えた情報が元になっているから、トルクさんの性格なら俺達に情報を隠すことはないだろう。


 商売として確立すると話が変わってくるかもしれないけどね。


「なら一緒に話を聞かせてもらうよ」


「了解、たぶん後一時間くらいだから、それまで好きにしていて良いよ」


「分かった。師匠にやることないなら、迷宮のこと色々と教えてもらっていいか?」


「ん……まあ、構わないよ」


 俺に教えることがまだあるのかが疑問だが、俺にはシルフィ大先生がついているから分からなければ聞けばいい。




「あ、トルクさんが来たようだ。続きはまた今度ね」


「ありがとう、師匠」


「どういたしまして」


 部屋の扉がノックされたので、講義の時間を終了する。教えることなんてあるのかと疑問だったが、結構普通にアドバイスができた。


 精霊達に頼りまくりだと思っていたが、それでも一緒に冒険していると経験はそれなりに蓄積されるようで、師匠としての面目は保つことができた。まあ、何度かシルフィに頼りはしたけどね。


「よう、休んでいるところ悪いな」


「いえ、俺も話が聞きたかったので楽しみにしていましたよ。今回はジーナも一緒ですが良いですか?」


「ん? 珍しいな。だがまあ、うちのマーサも熱心だし、女ってのはそんなもんかもな。もちろん構わないぞ」 


 トルクさんの納得が早い。


 まあ、トルクさんの了承が得られたので話を始める。



 なるほど、トルクさんの凝り性が発揮された結果が、マーサさんの変貌に繋がった訳か。


 たしかに色々と話したが、まさかここまで緻密にメニューを組むとは。ほとんど現代のダイエットじゃん。


 トルクさんは俺が話したあやふやな知識を基に、油分カットで糖質控えめタンパク質多めのメニューをかなり開発したそうだ。


 しかも、朝、昼、晩でそれぞれに。


 朝はある程度しっかりと、昼はそれなりに、夜は少なめ、しかもコンニャクの上手な活用方法もいくつか編み出したらしく、それも摂取カロリーを減らす一助になっているようだ。


 聞いた話だから確実とは言えないが、合計カロリーは千八百を超えていないと思う。


 女性は男性と比べると基礎代謝が低いらしいから、それでもちょっとオーバーしている可能性があるが、マーサさんは働き者。


 宿が大きくなって従業員が増えても宿の仕事をバリバリ熟しているから、仕事でかなりのカロリーを消費していると思う。


 ただ、それでもマーサさんの痩せるペースは速いように思う。一ヶ月に五キロ程度、ダイエットの最初は痩せやすいと聞くが心配になる。


 俺の中途半端な知識から判断すると。一ヶ月に一キロから二キロ程度な減量ペースになると思うんだけどな……知識と現実が噛み合わなくて少し怖い。


「マーサさん、無理をしていませんか?」


「それなんだよ」


 俺の質問にトルクさんが困った顔をする。やはり無茶をしているのか。


「マーサのヤツ、最初は半信半疑だったんだが、結果が出始めると嬉しかったみたいでな。俺がしっかりメニューを決めているのに量を減らそうとしたり、仕事も動く仕事を積極的に増やそうとしたりで止めるのが大変なんだよ」


 やはりそうか。ダイエット初心者が陥りがちな、調子がいいと頑張り過ぎてしまい長続きしない罠に、マーサさんもハマりかけているようだ。


 無茶をしないと一ヶ月で五キロ程度の減量は無理だよね。


 ん? あれ?


「トルクさん、マーサさんを止めることには成功しているんですか?」


「ん? ああ、裕太に無理な減量は体に悪いと聞いていたからな。俺が出した飯は全部食わせているし、仕事も休憩を兼ねて受付に座らせる時間を長めにとっている」


 そうなのか。無理をしていないのであれば安心だが、そうなると痩せる速さに疑問が残る。


「こっそり運動量を増やしたり、食事を食べていなかったりしませんか?」


「それは大丈夫だ。マーサは基本的に宿に居るからな。飯の時間は俺か従業員が見張っているし、仕事量も把握できている」


「それなら良かった……です?」


 新たなミステリーが生まれてしまった。俺のあやふやなダイエット知識は間違っていたのか?


 地球人と異世界人って似ているけど代謝とかが根本的に違う?


 あ、レベルか。それに運動量。


 この世界では運動以外でもレベルで体が強くなるし、地球のように便利な乗り物や道具がないから必然的に運動量が増える。だから女性でも基礎代謝が高く、痩せやすい体質なのかもしれない。


 ベティさんは……戦っていなさそうだしレベルも低そう、そして運動量も仕事以外では少なそう。


 そしてなにより、摂取カロリーがハンパなさそう。あの人はしっかり管理されないと痩せられないタイプだ。もしくは魅力的なご褒美だな。目の前のニンジンを頑張って追いかけるタイプだから。 


「ん? ジーナ、悩んでいるみたいだけど、どうしたの?」


「うーん、ちょっとうちのおふくろでは実現が難しいなって思ってな。うちの親父も料理はするけどトルクさんほどの腕はないから再現はできないし、なにより愛のたまものだよ。親父がおふくろの為にそこまでできるとは思えない」


「おい、照れること言うんじゃねえよ」


 トルクさんがジーナの会話を遮った。愛のたまものって部分が引っ掛かったらしい。


 でも、確かに愛のたまものだろうな。


 トルクさんは凝り性だし料理に対する熱量も凄いけど、それでもこの短期間でかなりのダイエットメニューが開発できたのはマーサさんへの思いがあるからだろう。


 しれっと娘から奥さんへの愛が足りないと思われているピートさんについては、聞こえなかったことにしよう。


「おい、裕太、その目を止めろ」


 いつの間にか生暖かい目をしてしまったようだ。


「それにしても、嬢ちゃんは痩せる必要があるようには見えないが、なんか不満があんのか?」


 トルクさんが強引に話題を変える。夫婦愛についての話題が恥ずかしいらしい。ツルツルなスキンヘッドが少し赤みを帯びている。


 もう少しからかいたくもあるが、本気でスネそうなので止めておこう。トルクさんのスネる姿にはまったく魅力を感じない。


「あたしは今のところ不満はないよ。ただ、あたしの家族がちょっとね。最近はカレーばっかり作っているからか、親父もおふくろも兄貴も結構太ってきているんだ」


 ……カレーが原因でしたか。カレーは栄養価が高いがカロリーも高い。なにより、カレーは美味しいところが罪深い。


 それでも数日続けば飽きるものなのだが、ジーナのところは商売だからあまりでカレーが出たりするんだろうな。


 それをしっかり食べていたら……たしかに太っても仕方がない。


 ジーナの家族のメタボ化は俺に原因があったようだ。


 冒険者ギルドで暴れた結果の自業自得は、覚悟の上だから受け入れられるが、弟子の家族のメタボ化の原因が自分だというのは呑み込めそうにない。


 どうしよう? 


「それなら俺が協力しようか?」


 悩んでいるとトルクさんが男前な発言。カッコいいが少し悔しい。


「協力ってどうするつもりなんですか?」


 なぜか俺が質問してしまった。


「とりあえず太り辛いメニューの中で簡単に作れる物を教えたら少しはマシになるんじゃないか?」


 凄くシンプルで効果がありそうな提案だな。


 でも、それでも残ったカレーを食べていたら減量は難しい気がする。


「ありがたいけど、そんなことをしてもらっても構わないのか?」


 今度はジーナが質問した。


「ああ、だが、一つ条件がある」


「条件?」


 条件付きか。その条件によっては俺が交渉に出ないとな。


「ああ、今の減量メニューを試してもらっているのはマーサだけなんだ。そこでジーナのところの誰か一人に協力してもらいたい。ただ、俺が用意したメニュー以外は食べられないから結構大変だと思うぞ」


 食事管理が条件か、悪くない条件だけど、トルクさんの言うとおり結構厳しい条件だよな。ベティさんに近い条件だ。


「それならおふくろをお願いするよ。一番綺麗でいてほしいからな」


「おう、それなら話を通しておいてくれ。こっちもメニューを用意しておく」


 ジーナって親父さんとお兄さんに厳しいよね。たぶん散々過保護にされたから、ちょっと面倒に思われているのだろう。


 それにしても、俺が手を出す前にある程度解決しちゃったな。


 んー、ちょっと思いついたことはあるんだけど、ジーナの家族の誰かが痩せるのを失敗したら手を出してみようかな。


 レベルをあげたら痩せやすくなる。その検証がしてみたい。


今年最後の更新となります。

読んでくださっている皆様のおかげで、今年も無事に更新を続けることができました。

本当にありがとうございます。

来年も頑張りますので、今後ともよろしくお願いいたします。

皆様、良いお年をお迎えください。


読んでいただきありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
あけおめ、ことよろ コミック今更最新刊読んだけど シルフィがどんどんまな板になってて草 最初はわりとでかかったのに… コミック見てて思ったけど、カールとかってあれからどうなったんだっけ 仲間の誘拐…
あけおめです この作品のおかげで1年乗り切ることができました。 お体に気を付けてくださいな更新楽しみにしてます
あけましておめでとうございます!
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