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六百五十四話 光のエリア

 サクラの為の森の下準備が完成し、後はタマモやドリー、トゥルやノモスに任せればいいやと終わった気になっていたが、楽園全体のリフォームが残っていることをシルフィに思い出させられる。森ができて完成じゃなく、森は最初の一歩でしかなかった。あんなに苦労したのに……。




「ようやく基礎が終わった。土木作業は慣れたものだけど、それでもやっぱり疲れるね」


 森の造成で資材のほとんどを使いきってしまったので、再び岩山を切り崩し地面を掘り返し、生きた森から土を確保してきて楽園南側の基礎を終わらせた。


 何度も繰り返した作業だから気楽ではあるが、広さが広さだから心と体に負担がかかる。というかもう飽きた。


 一周廻ってなんか楽しくなったけど、そこからもう一度飽きるくらいに飽きた。


「そうね、ようやく半分終わったわね。東側の基礎工事までもうすぐね」


 シルフィ。単純に東側の工事が待ち遠しくて悪気がないのは分かるけど、もう少し達成感に浸らせてほしい。


 でも、そうか、西と東が残っているからまだ半分か。


 いや、範囲的にはほとんど終わったと考えてもいいんじゃないだろうか?


 北は森だから洒落にならないほど広くしたし、南側も精霊王様達のお願いを考えて広くした。でも、西と東は村と醸造所だからそれほどの広さは必要ない。だから大丈夫、心は折れていない。


「さて、後は精霊王様達のリクエストか。洞窟は流石に無理だからノモスに任せるとして、光茸の栽培地くらいは自分でやるか。基礎が終わってもまた土木作業だな」


 地下空間はノモス達土の精霊に丸投げ、火に関してもイフが主導して遊びに来るチビッ子達と環境整備をする予定なので、どちらもスペースだけ確保してある。


 精霊王様達のお願いを全部丸投げするのも気まずいから、自分でできる光茸の栽培地くらいは自力でやろうと思う。


 まあ、開拓して聖域の範囲を広げているから立派に仕事していると言えなくもないが、気分の問題だ。


 別にライト様が細かいところまで気にして色々と質問してきそうだな、とか、その時に精霊に丸投げして何も分かりませんとかだと面倒な事になりそうだとかはまったく思っていない。


 お世話になっている精霊達の為に、できるだけ自分も協力しようという善意の気持ちだ。自己保身のためなどではまったくない。




 ***




「裕太、連れてきたわよ」


「ありがとうシルフィ。ノモスも忙しいところ悪いね」


 シルフィに呼んできてもらったノモスは、現在本当に忙しい。闇のエリアの工事をお願いしているうえに、火のエリアにも頻繁に呼ばれて忙しなく動き回っている。


 技術職はこういう時に大人気だ。


 まあ、半分は自業自得なんだけどね。


 闇の上級精霊であるオニキスのアドバイスを聞きながらの作成なのだが、地下空間ということでお酒の保存施設も同時に造っているからだ。


 海洋熟成と本来の方法で寝かせたお酒の違いを確認したいんじゃ、別に自宅のセラーが満杯になりそうだからではないとのことだが、本当かどうかは微妙だ。


「仕事じゃから構わんが自力でやると言っておったじゃろ。なんのようじゃ?」


「うん、俺だけでも大丈夫だったんだけど、思いついたことがあってね。それにノモスの力を借りたいんだ」


 光茸の畑は問題なく完成した。


 全体に光が当たるように計算して穴を掘るのは少し面倒だったが、普段の作業の延長なので問題なく完成にこぎつけることができた。


 途中で日当たりを求めるキノコの生態に疑問を覚えたり、俺とシルフィだけの作業でちょっと寂しくなったりもしたが大丈夫だった。


 でも次の機会があったら、全員で作業できるように取り計らいたいと思う。


 今回はしょうがなかった。


 火のエリアの作業、遊びに来たチビッ子達や中級精霊がワイワイと文化祭のノリで楽しんでいるから、ベル達やジーナ達も参加させてあげたくなってしまったからだ。


 その思い付きのおかげで寂しくなったが、ベル達もジーナ達もかなり楽しそうなので自分の決断は間違っていなかったと思う。


 ただ、別のところで問題が起こった。


 完成してからのお楽しみと言うことで詳しくは知らないが、火のエリアは精霊達が楽しんで作業しているので凄いことになっているらしい。


 ノモスとオニキスに丸投げした地下空間。


 最初は地下に大きな穴を掘って終わりだと思っていたが、セラー設備の許可を出したあたりから雲行きが怪しくなった。


 ノモスが凝り始めたのだ。


 土の大精霊のこだわりが詰まった地下空間。言葉だけでも凄そうなのが分かる。


 両方とも凄いのは良いことではあるのだが、そうなると残りの一つ、つまり俺担当の光エリアにプレッシャーが掛かる。


 今のところ地面を掘り下げただけだし、後は光るキノコを植えるだけなんだもん。


 ライト様の希望通りではあるが、なんか光エリアだけショボくね? 裕太が担当したから? とか言われたら立ち直れない。


 優しい精霊達がそんなこと言うはずがないのは分かっているが、内心でガッカリされる可能性を考えると恐怖でしかない。


 だから俺は必至で考えた。少しでも他のエリアとの差をなくし、光の精霊に喜んでもらうために。


 その甲斐あって自分ではナイスなアイデアだと思える施設を思いついたのだが、特殊な施設なので自分では造ることができない。それでノモスに来てもらった。


「これなんだけど、できるかな?」


 急いで描いた図面をノモスに見せる。


「……ふむ。これくらいなら可能じゃが、大掛かりな設備は造らんのではなかったか? いや、そうか、だから規模を小さくしておるんじゃな?」


「うん、その程度ならちびっ子達でも対応可能だし、楽しんでもらえると思ったんだ」


 思いついたのは単純な設備。


 光量を弱めていない本来のままの光茸を室内で栽培する。


 ライト様にお願いされて最初に思いついた設備だが、ライト様の要望が体育館クラスの広さでも足りなかったので断念したが、八畳程度の広さなら設備も簡略化できるしチビッ子でも問題なく管理できる。


 俺のイメージはスーパー銭湯。


 光量を弱めた光茸の畑は湯船で、本来のままの光茸の部屋はサウナって感じだ。


「光茸を植える地面以外を鏡張りにして、天井を開閉式にするのも可能? あと、鏡で反射する予定だけど、光が強すぎて光の精霊が嫌がらないかな?」


 ただ部屋を造るだけでは他のエリアに追いつけないから頭を絞ったけど、それで嫌がられたら本末転倒だ。


「これだけの大きさなら自作になるが、素材が用意できるなら問題ないじゃろう。光量に関しては心配するだけ無駄じゃ。光が強いことを喜びこそすれ嫌がることなどない」


 光が強ければ強いほど喜ぶのか。レーザー的な物が用意できたら光の精霊が狂喜乱舞しそうだな。まあ、そんなの用意できないけど。


「素材は問題ないよ。ガラスを造る砂とメッキ用の銀があればいいんだよね? それともミスリルやアダマンタイトの方がいい?」


 それなら魔法の鞄に入っているし、足りなくても用意は可能だ。アダマンタイトなんか鞄の中で大量に眠っている。魔物の形をしているけど……。


 オリハルコンだとちょっと難しいな。迷宮でソードフィッシュを乱獲しないといけなくなるから、迷宮のコアが泣いてしまうかもしれない。


「光の精霊が光茸の光を喜ぶのは日の光と変わらぬ光を発するからじゃ。魔法的な性質を持つ金属は反射する光を変質させる。銀の方が適切じゃな」


 なるほど、希少であれば良いという話ではないんだな。


「了解。全部手元にあるからすぐに……あ、滑車がないか」


 風車の受け取りついでに、滑車を買ってくるか? いや、さすがにまだ風車は完成してないか。普通の家よりもギミックが多いもんな。


「それなら問題ない。シルフィ達の家の滑車をみて作り方は理解しておる。ああ、滑車にアダマンタイトを使うのはいいかもしれんな。簡単には壊れん」


 滑車にアダマンタイト? 量はかなりあるから構わないけど、贅沢というか本職の鍛冶師に怒られそうな利用法だな。


 まあ、楽園に来る鍛冶師はメルくらいだし、メルは俺が希少金属を大量に抱えているのを知っているから問題はないか。


「じゃあそれでお願い」


「うむ。どこに造るんじゃ?」


「キノコ畑の傍で端っこの方にお願い。あのあたりが良いかな」


 今更だけどキノコ畑って言葉は違和感が強いな。


「分かった。ならさっさと造ってしまうか」


 建設予定地に移動すると土が持ち上がり、サクッと豆腐型の建物が完成する。


 建築センスに関して色々と言われているからか、ノモスは俺に何も聞かずにシンプルな建物を建ててしまう。


 いっさいの装飾が省かれた長方形の建物。これはこれで凄いし、素材が土だと思えないほど凝縮されていて光沢があるから悪くはないが、ちょっとシンプル過ぎる。


 あとでシトリンに頼んで装飾を施してもらおう。


「裕太、アダマンタイトを出せ」


 俺の考えていることが分かっているのか、ノモスがちょっと不機嫌になっている。あとで賄賂のお酒を送ろう。


 アダマンタイトは……ゴブリンの奴でいいか。溶かしても心が痛まないところがゴブリンゴーレムの良いところだと思う。


 ノモスが手をかざすとアダマンタイトが液体のようにグニャリと形を変える。アダマンタイトってひたすらに固く、加工がとても難しい金属なはずなんだけどね。


 アダマンタイトが様々な形に姿を変え、それをノモスが建物の壁に埋め込むと天井が開閉する建物が完成した。


 さすが土の大精霊。芸術的センスは皆無だが、技術は人間では追いつけない領域に居る。


「次は銀と砂を出すんじゃ」


 言われたとおりにすると、銀がアダマンタイトと同じく液状になり、壁に張りついていく。


 壁をダイレクトに鏡にするようだ。次に砂からガラスが造られ、これを銀と同様に壁に張りついていく。


 あっという間に遊園地にあるような鏡の部屋が完成した。


 俺の開拓ツールも性能がチートだけど、大精霊クラスになると存在がチートだよな。


「終わったぞ」


「ありがとう。あとでお酒を届けるね」


 お酒という言葉にノモスの機嫌がコロリと回復する。こんなに簡単でいいのかとても心配になる。あと、一緒にお酒に反応しているシルフィも心配だ。


 ……まあいいや。あとはヴィータに頼んで植え付けだな。キノコ畑のと一緒にやればいいだろう。


 これでライト様も満足してくれるはずだ。たぶん……。  


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 火のエリアどうなってんだろ~
[一言] ってことはミラーボールでもあれば小さい光の精霊とかは喜びそうだな……精霊王さまはほら……威厳がね
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