六百二十三話 エルフの秘薬
今回で下ネタの連続は終わりになります。
長々と申し訳ありません。
ケモミミの美女達五人を相手に勝利し、俺は自分の実力が上がっていることを実感する。だが、美女に囲まれ浮かれて派手に移動したことで、サキュバスのお姉さん達に居場所を嗅ぎつけられてしまうことになる。コソ泥のように逃げ出すことでなんとか身の安全は確保できたが、逃げたままでは終われない。俺は戦うことを決意した。
最初に取った宿を避け、新たに別の宿に部屋を確保することができた。
徹夜ではしゃいだからすぐにベッドに飛び込みたいところだが、時間を無駄にはできない。寝る前に対策できるところはしておくべきだろう。
魔法の鞄の中から各種エルフの秘薬を取り出す。
エルフの秘薬は秘薬という名の割には様々な種類がある。中には秘薬の名にふさわしい効果を持つ物もあるのだが、怪我を一瞬で治す秘薬も、病を一瞬で治す秘薬も、ヴィータと契約している俺には不要。
必要なのはエルフが普段使いしている飲み薬、その中でも子供が欲しいエルフが頼る飲み薬セット。俺はこれに天啓を得た。
詳しく聞いてみると、亜鉛等の性欲に作用する栄養素を豊富に含んだ植物が加工されており、あやふやな地球の知識から見ても効果が期待できることが分かった。
もらった夜にさっそく服用をとも思ったが、性欲はすでに爆発寸前まで高まっていたので保留にする。
だがしかし、程よくというか全力で放出した今この時なら、これらの秘薬の回復効果に期待が持てる。
えーっと、寝る前だから即効性の飲み薬は後回しで、内臓から体調を整え精力と体力を回復させる飲み薬からだな。
ケースの中から目的にそう丸薬を取り出す。
なんといえばいいのか、まとめると鹿の糞にしか見えない。植物を加工したものだから大丈夫なはずなんだけど、本当に呑んでも大丈夫なのか?
……漢は度胸。強敵との戦いが目前に迫っているのに、こんなところでビビっていたら、割と本気で命に関わる。
これはサプリ。少し見た目が悪いが、効果抜群のエルフのサプリ。そう暗示をかけてグイっと水で流し込む。
さて寝る準備をしよう。
「え? もう?」
体の内部が熱を持ち全体的にポカポカしてきた。体を浄化し寝巻に着替える時間しか経っていないのにこの反応。エルフの秘薬、効果がかなり期待できそうだ。
ふふ。起きた時が楽しみだ。
***
「体調は万全、いざ決戦の時!」
軽くなった体を動かし、気合を入れる。
エルフの秘薬の効果は本当にすごかった。起きた時には体のだるさも解消され、スッキリとした気分で目覚めたし、内臓の調子が整えられたからか食事が美味しくて仕方がなかった。
この効果に気を良くして、定期的に秘薬を摂取しながらしっかりと食事を摂り、宿に引きこもって十分に体を休めた。
これだけで体中に活力がみなぎっている。
気分的にはこのまま無双できそうだが、相手はサキュバスのお姉さん達だから油断は禁物。
今の状態に即効性がある薬を重ねる。
なんだかドーピングしまくっていて体に悪そうだが、エルフの秘薬は自然派由来で、長い時を重ねて発展してきた物だから、用法用量を守れば問題はないのだそうだ。
という訳で、グイっと即効性のエルフの秘薬を水で流し込む。
目をつむって少しジッとしていると、エンジンが躍動するかの如く体がドクンドクンと脈打ち始めた。
安全だとは聞いているが、ここまで効果が高いと少し心配になってくる。
なんか全能感というか、最高にハイってやつだ! みたいな精神状況になっているのだが、本当に大丈夫か?
すでに臨戦態勢なのでサキュバスのお姉さん達に挑むのは確定だが、悩ましい問題が一つある。
今の状況に更に重ねるか重ねないかだ。
今の状況でも戦えるのは間違いない。
当初の予定通り、コッソリとサキュバスのお姉さんに声をかけて、三人くらいで宿にしけこめば最低でも善戦はできるだろう。
「……重ねるか。俺が望むのは善戦ではない。圧勝! 蹂躙とも言えるほどの圧勝をしてこそ、トラウマが完全に払拭される」
覚悟を決めて魔法の鞄から一本のガラスの小瓶を取り出す。
これこそが本当のエルフの秘薬。
丸薬ではなく液状の薬だが、精霊樹の素材とエルフの森の希少素材がふんだんに使われた、エルフの技術の粋が詰まった逸品。
エルフの森の精霊樹が復活する前は、もはや二度と作ることができないと言われていた貴重品。
効果はシンプルで、生命力の増加。
本来の使い道はエルフでさえも容易に達成できない儀式の為の秘薬なのだそうだが、俺はピンときてしまった。
サキュバスのお姉さん達、精力と一緒に生命力も吸ってるよね? じゃあ、この秘薬があれば? ということに……。
過ぎたるは及ばざるが如しという言葉が脳裏をかすめるが、相手は性のプロフェッショナル、蹂躙するには相手の予想を超える何かが必要だ。
ちょっとした躊躇いを勇気で振り払い、小瓶の中に入った液体を一気飲みする。
「ウゲ、とんでもなく不味……カハッ」
ヤバい。ただでさえ臨戦態勢だったエンジンに燃料を追加投入したからか、体の中からとんでもない熱が溢れだしてくるように感じる。
今なら金色の髪のスーパーな戦士に変身できそうな勢いだ。早く発散しないと……。
熱に浮かされフラフラと宿を出て歓楽街に向かう。夜風が火照った体の熱を奪い心地良さを感じる。
生活を改めて、夜型生活に変更しておいて良かった。
「太郎君みっけー」
歓楽街に足を踏み入れた途端に、柔らかいなにかと良い匂いに包まれる。
あっ、サキュバスのお姉さんだ。こちらから探す前に見つかってしまったが、今は熱で物事が上手く考えられないからちょうどいい。
サキュバスのお姉さんが笑顔で話しかけてくれているが、ボーっとしてしまって上手く理解できない。
でもまあ、この状況から始まることなんて一つしかないんだから、とりあえず頷いておく。
あっ、交渉して相手を三人くらいに……まあいいか。なんとなくだけど、今の俺の熱量をサキュバスとはいえ三人程度では呑み込めない気がする。
明日には後悔していそうな気もするが、制限なしで勝負しよう。
サキュバスのお姉さんに手を引かれ、フラフラと歓楽街の奥に進む。この方向は、たぶん淫魔の館がある方向だな。
歩くにつれて、綺麗なサキュバスのお姉さんが次々と合流してくる。全部で六人か。なんとかなりそうだな。
「さあ到着したわ!」
サキュバスのお姉さんに連れられて淫魔の館に入る。頭がふわふわしていて丁度良かったかもしれない。思考が明確だったら、たぶん逃げ出していた。
以前連れ込まれた大きな部屋に入り大きなソファーに身をゆだねると、次々とセクシー過ぎる格好に変わったサキュバスのお姉さん達が群がってきた。
眼福だけどいつの間に衣装チェンジしたの? 凄く眼福だけど……あと、なんか人数が増えている気がするんですけど? 話が違いませんか?
***
「クフッ、クフフフフ」
駄目だ。笑いが抑えきれない。
勝った。勝っちゃった。大勝利しちゃった。
まさしく蹂躙、これこそが蹂躙!
最初はふわふわな中にも恐れがあり、それが快楽と共に溶けていった。
ようするに一発出したらスッキリしたということだと思う。
そして、俺の熱がサキュバスのお姉さんに移ったのか、最初に出したお姉さんは色々な液体を噴出しながらのけぞり失神。
俺の予想通りサキュバスのお姉さんは精力と共に生命力も吸っていたみたいで、元々高レベルで強い生命力を獲得していた上に、ドーピングにドーピングを重ねた暴走状態の生命力の破壊力に耐えきれなかったのだろう。
そして一度発散したことでオーバーヒート気味だった生命力が適量に落ち着いたのか、体中から溢れんばかりの生命力は感じるが、思考はクリアに変化し全てを掌握した感覚を得た。
何でもできると断言できそうなくらいの万能感の中、失神した仲間を見て引いてしまったサキュバスのお姉さん達に俺は襲い掛かった。
そこからはまさしく蹂躙。
サキュバスのお姉さん達も本職としての意地からか、対抗しようと様々なテクニックを駆使してきたが、無敵状態の俺の前ではウブな小娘と変わらず、一人、また一人と沈んでいった。
サキュバスのお姉さん達曰く、俺の精力と生命力が桁違いに精錬され、上質すぎる物に変化、簡単に全てを満たしてしまうから大変とのこと。
そんなことを聞いても俺は止まらない、復活してきたサキュバスのお姉さんも改めて返り討ちにし、欲望の限りを尽くした。
その結果、ちょっと大丈夫かと心配になるほどだらしない姿で失神している九人のサキュバスのお姉さん達が眼前に……これを大勝利と言わずになんというのか。
サキュバスのお姉さん達に対するトラウマを完璧に克服したし、もしかしたら逆にサキュバスのお姉さん達にトラウマを植え付けてしまったかもしれない。
まあそれもしょうがないだろう。誘ってきたのは向こうだもんね。
さて、みんな寝てしまったし、俺もそろそろ退散するか。
「うわー。雄の匂いが充満しているわー」
帰ろうとしたら、部屋の扉が開きサキュバスのお姉さん達が中に入ってきた。
「あら、みんな満足そうに寝ているわね。で、これをやったのはあなたかしら?」
「あっ、太郎だ! 来ているって聞いていたけど、本当に来ていたのね」
「仕事、休めばよかったわ。探しても見つからないからもう王都から出ちゃったと思ってた」
「……でも、まだまだ元気に見えるわよね?」
「え? みんな寝ちゃうくらい搾り取って……そうね、元気に見えるわね」
ギロっとサキュバスのお姉さん達の視線が俺に集中する。
え? もしかして狙われている?
第二ラウンド突入ってこと?
いやいやいや。無理だって。ドーピングしまくったとはいえ、九人ものサキュバスのお姉さん達と戦ったんだよ。生命力には余裕がある気もするが、さすがに肉体的にも精神的にも疲れている。
「あの、俺、今から帰るんで……」
「まあまあまあ」
「そう急がなくても大丈夫よね。だってまだ夜中だもの。今から用事なんてあるはずないわよね?」
「そうそう、お姉さん達と楽しいことをしましょ。少しだけ、少しだけでいいから」
「いや、そんなこと言われても、さすがにもう限界が……」
「「「「まあまあまあ、大丈夫大丈夫」」」」
ガシっと肩を押さえつけられる。あっ、これ、逃げられない奴だ。
……神様、追加でサキュバスのお姉さんが四人とか、聞いてないです。助けてください。
読んでくださってありがとうございます。




