表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
620/774

六百十八話 まだ早い

若返り草について、たくさんご指摘を頂きました。

私の勘違いでお手数をお掛けして申し訳ありません。

いずれ修正したいのですが、余裕がなく更に前の修正も終わっていないので、しばらくこのままで更新を続けることにしました。

中途半端な対応で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。

 エルフの国で手に入れた絹を持ってマリーさんの雑貨屋に顔を出すと、マリーさんが暴走した。そして地味に不愉快なことがあったので、罰ゲーム的な物をマリーさんとソニアさんに押し付けることにした。




「ゆーたー」「キュキュー」「かんぺき」「クゥ!」「いよいよだぜ!」「……」


 マリーさんとソニアさんに罰ゲームを課して五日、宿の部屋でのんびりしているとベル達が飛び込んできた。


 昼食にはまだ早い時間だが、なにかがあったらしい。


「どうしたの?」


「あのねーぜんぶみたー」


 俺の質問にベルがふんすと胸を張って答えてくれる。とても可愛いが、ちょっと分かり辛い。まあ、待ち望んだ瞬間だから理解はできるけど。


「マップを完成させる準備が整ったんだね」


「かんせいー」「キュー」「がんばった」「クゥ」「らくしょうだぜ!」「……」


 わらわらと俺の周りに集まってきながら答えるベル達。おそらく褒めろということなので、褒めながら撫でくり回す。


 それにしても長かった。ようやく、ようやくこの時が来たのか。


 ベル達を褒めながら、長くつらい道のりを思い出す。


 ベル達がお出掛けして迷宮都市を調べている間に、俺も色々と動いてはいた。


 こっそりマリーさん達の様子をうかがい、恥ずかしがりながらにゃんにゃんわんわん言っている美女を観察したり、トルクさんのラーメン談義に付き合ったり、メルの工房に顔を出したり……その間、ずっと悶々としていた。


 普通なら五日くらい平気で耐えられるのだが、楽しみが目前に迫っていると話は違う。


 百里を行くものは九十を半ばとすとの言葉通り、あと少しというタイミングが一番辛い。


 どの店にしようか、どんな遊びをしようか、そんな妄想がほとばしる五日間だった。それがもうすぐ報われる。


「じゃあそろそろ楽園に送還する?」


 しっかり撫でくり回しベル達が満足したところで話を切りだすと、ベル達は満面の笑みで頷く。


 この可愛らしい笑顔としばらく離れ離れになるのに、内心で喜んでしまう俺は汚れているのだろう。


「うーん、今回は沢山調べていたみたいだし、サクラの相手や楽園の見回りもお願いしたいから、召喚するのは五日後くらいかな? みんな、それでいい?」


 むむっと考え込むベル達。ついには頭を寄せ合って相談を始めてしまった。五日は長すぎたか?


「いつかでだいじょうぶ。まっぷもさくらもみまわりもがんばる!」


 なぜかベルではなくトゥルが代表で答えてくれた。俺に分かりやすいように配慮してくれたのかもしれない。


 というか、ベル達の反応は五日だと短いかも? という反応だったようだ。どうやら俺は失敗してしまったらしい。


 あと数日大人の時間が増えた可能性を思うと悲しくなるが、五日で全てを終わらせるぜ! と張り切った様子のベル達に今更延長を申し込めない。


 ならば、手に入れた五日間を精いっぱい楽しむために全力を尽くすべきだ。


「分かった。みんなのマップ、完成を楽しみにしているね。じゃあ送還するよ」


「いえっさー」「キュキュッキュー」「いえっさー」「ククックー」「いえっさーだぜ!」「…………」


 敬礼しながら送還されていくベル達。


 ムーンが敬礼しているのかは分からなかったが、過去のハイテンションな過ちを忘れた頃にほじくり出されるのは辛い。あの子達、あとどれくらい経てば忘れてくれるのだろう?


 少しだけテンションが下がってベッドに倒れ込む。


「それでみんな居なくなっちゃったけど、裕太はこれからどうするの?」


 下がったテンションが急上昇する。シルフィからのこの質問を待っていた。俺からベリル王国に遊びに行くと言いだすのは、ちょっと露骨だもんね。


「あーそうだね……迷宮都市でやることは終わっているし、少し暇だよね」


「そうよね。なら裕太も楽園に戻る? ジーナ達が迷宮から出てくる前に戻ってくれば平気でしょ?」


 いや、特定部位が爆発しかねないから全然平気じゃない。シルフィから予想外の提案が出されてしまったが、ここで慌ててはいけない。


「うーん……ベル達は自分達だけで頑張りたいみたいだし、俺もベル達に頑張ってほしいから、楽園に戻るのはなしかな」


「そう? まあ、あの子達も色々と考えているみたいだし、それもいいかもしれないわね」


 シルフィが納得した様子で頷いてくれた。俺ってこういう時は口が上手に回るよな。


「じゃあ俺達は休暇にしようか。シルフィもいつも俺と一緒だし、自由な時間も欲しいでしょ? 俺は……ベリル王国にでも遊びに行こうかな? 送り迎えはシルフィにお願いすることになっちゃうけど」


 結構自然な感じで提案できた気がするが……シルフィの表情がちょっと微妙な感じだ。何かを間違えたか?


「偶には自由に飛び回りたいし休暇は悪くないのだけど、裕太はベリルで地味に酷い目に遭っているのに、またベリルに行くつもりなの?」


 シルフィの微妙な感じは呆れていたかららしい。


 でも、そんなに酷い目に遭った覚えは……いや、ブラストさんの時のスラムの抗争は地味に嫌だったが、それ以外は自業自得というか、サキュバスに負けてしまっただけで……うん、たしかに酷い目には遭っているな。


 でも、俺は遊びたいんだ。『大きさこそ正義』以外の店にも入ってみたい。その為なら多少の酷い目は許容範囲内だ。


「まあ、ちょっと危険かもしれないけど、ウナギのストックも欲しいからちょうどいいんだよ」


 楽園食堂でも酒島でもウナギは結構人気だからストックが減っているのは事実だし、シルフィ達も割と好んで食べているから説得力もあるだろう。


「ウナギの補充ね……うーん、たしかにあれは小さい子達も好きだし、補充できるのなら補充しておいた方がいいわね」


「うん、そういうことだから、俺はベリルで休暇、シルフィは俺をベリルに送った後に休暇って感じでいいかな?」


「そうね。じゃあそうしましょうか」


 勝訴!


 別に裁判をしていた訳ではないが、表に走り出て勝訴と叫びたいくらいにはテンションが上がっている。まあ実行はしないけど。


「了解。じゃあマーサさんに出かけてくることを伝えてくるよ」


「あら、もう出発するの?」


 ちょっと焦り過ぎたのか、珍しくシルフィが目を丸くしている。いきなりハリキリだしたらたしかに驚くよね。


「うん、どうせ行くなら早い方がいいと思ってね」


 それだけ遊ぶ時間が増える。戸惑っているシルフィには悪いが、さっそく行動だ。




 ***




 ついに俺は自由を手に入れた。


 いや、まだ駄目だな。たしかに一人にはなったけど、別れる前にシルフィにかなり心配されたし、まだ様子を見られている可能性がある。


 いきなり大人の遊びにくりだすのは止めて、先にウナギの手配をしておこう。まともな行動を見せておけばシルフィも安心するはずだ。


 ウナギはブラストさんが仕切るって言っていたから、スラムに行けばなんとでもなるだろう。


 さっそくスラムに……一応、フード付きのローブに着替えておくか。すでにバレバレだけど、それでも無意味ということはない。


 スラムに向かい細い路地に入り込むと、すぐに男達に囲まれた。


 相変わらず治安が悪い。


「怪しい兄さん、悪いがここから先は俺達の縄張りなんだ、出すもん出してもらおうか」


 ん? ちょっとビビってる?


 そういえば囲んでいる男達の年齢が若い気がする。なるほど、経験不足でフードを目深に被った俺に少しビビっているってことだな。


 ジュードさん達の時はビビっている様子もなかったし、これが経験の違いと言うやつなのだろう。


 それにしても俺ってこの街のスラムでは結構有名なはずなんだが、まったく気がつかれていない気がする。もしかして新入りかな?


「俺はブラストさんとジュードさんの知り合いなんだ。出すもんも出したくないし、悪いが呼んできてくれるかな? ゆう……太郎が来たって言えば分かる」


 危ない危ない。偽名を使っていたのを忘れて、普通に本名を名乗ろうとしていた。


 冷や汗を掻いていると、男達がざわつきだした。


「……親分や兄貴、そしてその恩人の名前を出して嘘だったら冗談では済まされねえぞ、いや、です?」


 敬語苦手か!


 最後にですを付ければ敬語になる訳じゃないんだが、いや、俺が本物かどうか分からないから態度を決めかねているのか。


「本物だから問題ないよ。証拠はないけど、ジュードさんなら前回、楽しいところに連れて行ってもらった太郎だと言えば分かってくれると思う」


 楽しかったけれど、トラウマにもなった淫魔の館。レベルアップし、そしてアレを手に入れた今ならリベンジも……いや、いきなり強敵に挑むのは間違っている。


 今回はアレの性能テスト。挑むのは別の機会にしておこう。他のお店も楽しみたいよね。


「あっ、これを見せた方が早いか」


 魔法の鞄から取り出すふりをして、巨大なハンマーを召喚する。最初にジュードさんに会った時にはこれを持っていたから俺が太郎である証拠になるだろう。こんなバカでかいハンマー、他にはないはずだ。


「……少しまっていろ……です」


 ハンマーを見た後、男達の中の一人が走っていった。どうやら確認に向かったようだ。

 



「太郎の兄貴―。お久しぶりっすー」


 あっ、強面なのに、~~す、が口癖の男が走ってきた。たしかにこの男なら判断できるな。名前は知らないけど。


 でも、意外と地位は高いのかもしれない。俺を囲んでいた男達が、俺を囲んでいた時と比べ物にならないほどピリッとしている。


「久しぶり」


「はい、お久しぶりっす。それで、申し訳ないんですが、今日は親分もジュードの兄貴も出かけているっす。緊急でしたらすぐに使いを出しやすが、いかがするっすか?」


 二人とも出かけているのか。


 別にウナギが欲しいだけだから、無理して二人に会う必要はないよな。


「あー、ウナギを沢山手に入れたいだけだから、二人を呼び戻す必要はないよ」


「あっ、ウナギっすか。あれ、太郎の兄貴のおかげで大人気っすよ。それなら俺が手配しておくっす。どれくらい必要っすか?」


「五日後に王都を出る予定だから、それまでに無理せずに集められるだけ集めてもらえるかな? あと、前回と同じように最終日にウナギの処理をしたいから、手伝ってくれる人を集めておいてほしい」


 一人で魔法の鞄に入るようにウナギを処理するのは地獄だ。


「了解したっす。五日あればかなりの数が集まるっすけど、大丈夫っすか?」


「うん。すべて買い取るよ。多ければ多いほど嬉しいけど、無理しない範囲でお願いね。他の人に迷惑をかけると、ウナギが美味しく食べられなくなる」


 あと、乱獲になってウナギが減るのも困る。


「了解っす。あっ、今日は親分達が居ないんで俺が歓迎するっす。サキュバスの姉さん達に太郎の兄貴のことをいつも聞かれるからちょうどいいっす」


 なんて?


「い、いや、今日はこの後予定があるんだ。またの機会にね。じゃあ五日後」


 俺は逃げ出した。サキュバスに挑戦するのはまだ早い。背後から呼び止める声が聞こえる気もするが、たぶん勘違いだ。


本日3/14日コミックブースト様にてコミカライズ版『精霊達の楽園と理想の異世界生活』の52話が公開されました。

裕太の頑張りとシルフィの活躍が光る回ですので、お楽しみいただけましたら幸いです。


読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
人間として未熟だからこそ面白いんじゃないか何言ってるんだ
[一言] サキュバスからなぜ?
[一言] ウナギ大人気 サキュバスお姉さんも強化されてるはず
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ