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六十話 買い物終了

 ちょっと雑貨屋で知識? をふりかざし、本屋で買い物を終える。後は家具屋と冒険者ギルドか。


 地図を見ながらテクテクと迷宮都市を歩く。ベル達は縦横無尽に都市内を飛び回っている。偶に他の精霊に何かを聞いているが、どんな受け答えがなされているのかは不明だ。


 今のところベル達が興味があるのは食べ物の事が多いから、美味しい食べ物の事を聞いてるのかもしれないな。


(シルフィ。あのチンピラ達はどうなった?)


「バラバラになったわ。ずっと一緒に居た相手以外は信用出来なくなったみたい」


(そうなんだ。ありがとう)


 これで俺の方にはちょっかいを掛けて来る事は無いだろう。友人関係にヒビを入れてしまったが、自業自得だ。



 ***



 家具屋に到着する。……あれ? 木の椅子やタンスなんかはあるんだが、肝心のベッドが見当たらない。小さな店だし、来る店を間違えたか? 念のためカウンターにいるおばちゃんに聞いてみるか。


「すみません。ベッドが欲しいんですが、何処に置いてあるんですか?」


「ベッドかい。ベッドは注文を受けてから作るよ。魔物の素材を使うし場所を取るからね。どんなのが欲しいんだい?」


 受注生産なのか。迷宮都市にいるあいだに出来るのか? まあ取りに来れば問題無いか。飛んでくればそんなに時間は掛からない。


「今、豪腕トルクの宿屋に泊まっているんですが、あの宿のベッドの事は分かりますか?」


「ん? ああ知ってるよ。うちの仕事だからね。あれが欲しいのかい?」


 あのベッドを作ったのもこの店なのか。なら問題なさそうだ。


「あのベッドの大きさを倍にして、もう少し柔らかくする事は出来ますか?」


 宿のベッドはシングルよりも少し小さいからな。出来れば大きいベッドでゆったりと眠りたい。一緒に寝る相手が出来てもこれで安心だね。見つかるかどうかも分からないけど。


 一番相手が見つかりそうな冒険者ギルドに嫌われてる。受付嬢に女性冒険者……素晴らしい出会いが待っているはずだったのに。一時の感情に流されると後が大変だよな。


「大きさは何とかなるけど、柔らかくとなると素材のランクが上がるから値段も上がるよ?」


「全部で幾らぐらいになります?」


「そうだね、一つ上のランクを使うと、四十万エルトって所だね。トルクの所のベッドは十五万だったね」


 四十万……高いは高いけど、十分に買える値段だ。そうなると、もう一つ上が気になって来るな。



 ***



「では、これでお願いします。値段は百二十万エルトで良いんですね」


「ああ、しかしあんたもこだわりが凄いね。このクラスだと小金持ちが使うレベルだよ。大丈夫なのかい?」


 小金持ちレベルってどのぐらいなんだ? 一応小金は持っているんだが……。しかし、注文だと細かい所まで頼めるから、ついつい熱が入ってしまった。素材のランクもあげちゃったし……でも後悔はしていない。


「人生の三分の一はベッドで過ごすんだから、良い物を使えって俺の故郷では言われているんですよ。だから奮発したんです」


「へー。ベッドの売り文句に良さそうな内容だね。参考にさせてもらうよ。出来上がりは……十日後って所だね。配達も請け負うよ」


 んー、迷宮都市滞在予定よりも少し先か。まあ、少し滞在を伸ばしてベッドを受け取ってから戻るか。流石に死の大地には配達してくれないよね。


「分かりました。店に取りに来ますから配達は大丈夫です。他にも家具が必要なので、支払いは全部揃えてからで良いですか?」


「あいよ。沢山買っておくれ」


 おばちゃん上機嫌だな。さて、必要なのはテーブルと椅子。椅子は今のメンバーだと使うのは、俺と大精霊達だけだよな。ベル達は浮かんでご飯食べてるし……お客さん用に余分に買っておいたほうがいいか。 


 死の大地だから普通のお客さんは来ないだろうけど、シルフィ達の友人が遊びに来たり、メンバーが増えた時に困るからな。二脚ほど余分に買おう。テーブルはあの大きなのを買って、タンスと食器棚は……必要なのか?


 全部魔法の鞄に入れておけば要らないよな。インテリアとして小さな食器棚を買っておくか? ……いらないな必要になった時に買いに来よう。


「あの大きなテーブルと、椅子を七脚欲しいんですが、いくらになりますか?」


「あれは、テーブルが八万。椅子は一脚六千だね。五脚しかないから、追加で作るかい?」


「じゃあ、お願いします。追加はベッドと一緒に取りに来ますね」


「あいよ」


 お金を支払いテーブルと椅子を収納する。ここでも店で働かないかと勧誘された。魔法の鞄があれば配達業で食うには困らなそうだ。十日後以降に再び来る事を伝えて店を出る。


「ゆーた。べっどかったの? べるもねる?」


(うん。大きなベッドを買ったよ。出来上がりは十日後だけどね。ベルも気に入ったら寝てみると良いよ)


「ねるー」


 話を聞いていたレイン、トゥル、タマモも群がってきた。ベッドが出来たらベル達と寝る事になりそうだな。喜んではしゃぐベル達を宥めて冒険者ギルドに向かう。


(シルフィ。ギルドに入ったら、周りの人達の話をチェックしてくれる? 俺がどう思われているのか知っておきたいんだ)


「分かったわ。確認しておくわね」


(頼むね)


 さて、数時間前の出来事なんだけど、噂は広まってるかな?




 ***



 がっつり広まってました。ギルドに入ると視線が集まり、ヒソヒソ話が増える。シルフィがチェックしてくれているだろうけど、表情が楽しそうなのが怖い。


「エルティナさんこんにちは」


「こんにちは。何か御用ですか?」


 おお、義理の笑顔すらない。完全なる無表情だ。あと周りの喧騒が止んで、注目が集まっている。日本ではこんなに目立った経験が無いから、ちょっとビビる。


「冒険者ギルドでは初心者講習をやっているんですよね。申し込みをしたいんですけど、大丈夫ですか?」


「……あなたに必要なんですか? 随分自信がおありの様でしたけど。魔石も沢山確保してらっしゃいましたよね? 自分で倒されたのでは無かったのですか?」


 ついに名前すら呼んでくれなくなったか。なんか心にダメージが。しかし、あの魔石の事も疑われているのか? ハンマーの威力を見たんだからそこまで疑わなくても良いだろうに。死の大地って言ったのがいけなかったかな? 


「初心者ですからね。自信と知識は別問題です。初心者講習はいつあるんですか?」


 面の皮を厚くして、図々しく行こう。


「……明日。朝八時から始まります」


 ナイスタイミングです。


「分かりました。参加しますので手続きをお願いします。あと魔法薬を購入したいんですが、何処で売ってるんですか?」


「手続きはしておきます。魔法薬は酒場隣の売店で販売しております」


 ピクリとも表情が変わらなかったな。売店でも同じような無表情で出迎えられた。質問をすれば最低限の返事だけは貰えたが、孤立感がハンパじゃないな。


 取り合えず下級ポーションと中級ポーション。下級解毒薬と中級解毒薬を購入しておいた。下級は両方とも七千エルトだったが、中級からは桁が上がった。


 中級ポーション十五万エルト。中級解毒薬二十万エルト。上級とか特級もあるらしいけど、いくらなんだろうね。ちょっとボったくられて無いか不安だ。


 視線を感じながらギルドから出る。完全に噂が広まってたな。シルフィの話は宿に戻ってから聞こう。


 あっ、ヤバい忘れてた。迷宮都市に入場する時に貰った、仮の身分証を返却しないと犯罪者になるんだった。ギルドカードを貰った後に、色々あり過ぎて忘れてたよ。


 宿に戻る前に城門に寄ってから帰ろう。遠回りだけど明日の初心者講習の後に、返却を忘れたら犯罪者だからな。ギルマスなら喜んで俺を衛兵に突き出しそうだ。



 ***



「おやお帰り。旦那が待ってたんだよ。ちょっと話を聞いてやっておくれ」


 俺が何かを言う前にマーサさんが「あんたー、戻って来たよー」っと叫び、トルクさんを呼んでしまった。俺の話も聞いて欲しい。


 ドドドドドっと走って来る音が聞こえる。床が抜けないか心配な音だな。


「おお、お客さん。あんたすげえな。半信半疑だったが、やってみたら肉が美味くなったぜ。なんでなんだ?」


 バシッバシッっと背中を叩かれながら聞かれる。とても痛い。購入した鎧の効果に疑問を覚える。豪腕だから鎧を超えて痛いのか?


「ちょっと、痛いので、止めてください」


「おお、悪いな。つい興奮しちまったよ。それで、なんで炭で焼くと肉が上手くなるんだ?」


 好奇心いっぱいで切り傷が付いたゴツイ顔を近づけて来る。正直怖いです。えーっとなんて説明しよう。赤外線とか流石に通じないよな。


「えーっと、炭で焼くと中まで火が通りやすく、肉の旨みを逃さないんだと思います。あと炭に落ちた脂が煙になって食材に良い匂いを付ける効果もあるみたいです」


 あやふやな説明だが、これ以上の説明は無理だ。炭で焼いたら美味しくなると納得して欲しい。


「なるほどな。そう言えば肉が焼ける時間も早かった気がするな。煙の香りか、燻製みたいなもんだな。良い事教えて貰ったぜ。今夜はエール飲み放題だ。たっぷり飲んでたっぷり食ってくれ」


 ガハハと笑って厨房に戻るトルクさん。豪快な人だよね。


「あたしも、食べたけど確かに美味しくなってたよ。またなんかあったら教えておくれ」


「はは、思いついたらお話します。カギをお願い出来ますか?」


 美味しい料理が増えるのは嬉しいんだが、この人達を相手にするのは疲れそうだ。どうしようかな。パンの改良を頼むのが不安だ。もう少し考えてからにしよう。


「そうだったね。はいよ、カギだよ」


「あっ、滞在期間が長くなったので、五日間宿泊を延長したいんですが、大丈夫ですか?」


「問題無いよ。炭の事も教えてくれたし、今回は三万エルトで良いよ。本当はタダにしたいぐらいだけど勘弁しておくれね」


 おお、二万も安くなった。流石にタダで泊まるのは気が引けるし十分だ。お礼を言って支払いを済ませる。


 さて、夕食前に部屋でシルフィの話を聞くか。さんざんな事を言われてそうだから心を強く持たないとな。

読んでくださってありがとうございます。

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