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五十八話 調理道具

 鎧を装備して、良い気分で迷宮都市を歩く。冒険者ギルドでは揉めたけど、都市の中は良い感じだ。


 ここだな。食料品店が集まっている場所みたいだ。ここで目についたものを買い溜めして行くか。


 お店の人に話を聞きながら、肉や野菜を買い込む。迷宮都市だけあって、ここで売られている物の多くは迷宮で取れた物らしい。


 野菜は周辺の町や村で育てた物を運んでいるらしいが、肉や果物は迷宮産らしい。果物も迷宮で手に入るのか。


 野菜には近づかないベル達も果物は気になるのか、並んでいる果物に顔を近づけて、フンフンと匂いを嗅いでいる。食べちゃダメだよ。


 これいい匂いーっと教えてくれる果物を買い集める。ベル達が喜ぶので、ついつい多めに買ってしまう。本当は味を確認して買った方が良いんだけど……みんな、俺を引っ張って行って、コレコレっと合図をする。それを購入すると踊るように喜ぶんだよな。


 ベルとトゥルは満面の笑みで手足をワチャワチャさせるし、レインはヒレをパタパタ。タマモは尻尾ブンブンでとても可愛らしいから、ついつい沢山買ってしまう。


 お肉類は、調理していないと美味しそうなのか良く分からないみたいで、みんなの興味は薄い。迷宮産なんだから種類を優先して、量は少なめに購入した。


 ここらへんのお店は、庶民が集まる商店街みたいなとこらしく、迷宮の比較的浅い階層の物が集まっているそうなので、自分で倒して手に入れた方がお得っぽいよね。処理が大変そうだから肉屋に伝手が欲しいな。


 野菜も日本にあったような野菜や、まったく見た事も無い野菜もあり、結構種類が豊富だ。知っている野菜は大量に、初めて見る野菜は試しに少しだけ購入した。


 野菜で嬉しかったのはトマトとジャガイモと玉葱を見つけた事だ。両方とも大量購入しておいた。トマトは水分量が少ないと美味しく育つって聞いた事があるから、苗を手に入れたいな。


 でもトマトって温かい所で育つんだっけ? この辺も暑いんだから大丈夫か。泉の家に戻る前には、近くの村も回ってみよう。


 結構な量を買い込んだから、良い魔法の鞄を持っているんだねって言われてしまった。久しぶりの買い物と、美味しそうな食材に浮かれてはしゃぎ過ぎたな。これ以上、ここで買い物するのは不味いかもしれない。次に行こう。


 地図を見ながら雑貨屋に向かって歩く。料理道具、食器、調味料、衣服しっかり手に入れないとな。


「裕太。四人つけて来るわ。話を聞いていると、あなたの鞄が目当てみたいね。一人は様子を見ようって言ってるけど、残りの三人は武器を持っていないから、大丈夫だって言ってるわ。人気のない所に入ったら一斉に襲う気よ」


 いやん、冷静になるのが遅かったらしい。テンションが上がっちゃったもんな。大量買いでお金を持っている所も見せちゃったし、魔法の鞄も性能の良さがバレてしまった。容量無限と時間停止がバレたら、もっとシャレにならないのに狙われるんだろうな。


(人気が無い所を通らないと、襲われないんだよね? 細い道には入らないから大丈夫だと思う。一応監視をお願い)


「分かったわ」


 異世界で治安が悪いって分かっていたのにはしゃいでしまった。日本でだってあんな事してたら目を付けられる可能性はある。異世界ならなおさらだ。


 でも、死の大地で頑張って植物を育てたし、お肉なんてゾンビの腐ったお肉しか見てなかったから、普通の食材が輝いて見えちゃったんだもん。物凄く嬉しくてテンションが上がるのも仕方がない事だと思う。


 今回は人通りがあれば襲われないみたいだから、ある意味助かった。しかし魔法の鞄があるから武器を持ってなくても不思議じゃないって思わないのか? 少し速足で雑貨屋に向かう。


 ここだな。色々集まっているだけあって大きな雑貨屋だ。デパートみたいな感じなのかな? 取り合えず中に入る。


(シルフィ。まだ付いてきてる?)


「ええ。付いて来てるわ。ん? ちょっと待って。……一人は表を見張って、もう一人は裏を見張る。残りは仲間を呼びに行くそうよ。あと三人増えるみたい。面倒だから言いがかりをつけて裏道に引きずりこむつもりね」


 状況が悪化した。シルフィが居れば、問題は無いんだろうけど、荒事はうんざりだな。人数が少ない内に逃げ出すか? 見張っている奴らが後を付けて来るだけか。飛んで逃げたら別の意味で騒ぎが大きくなりそうだしどうしたものか。


(シルフィ。つけてくる奴らって強そうなの?)


 助けを求めるにしても、後をつけられてるので何とかしてくださいで何とかなるのかな? しらを切られて終わりだよな。


「いいえ。単なるチンピラね。ベルの風壁だけで手も足も出ないわ」


 それなら問題は無いか。宿まで付いて来られたら面倒だから、出来るだけ穏便に追い払おう。一人、二人、蹴散らしても、人数が増えたらまた襲って来るだろうから、全員集まって対処しよう。今は放っておいて買い物だな。買いたい物が多いから店員に声を掛けるか。

  

(ベル達は店内を見ておいで。欲しい物があったら呼びに来て良いからね。シルフィは悪いけど側に居てくれ)


「分かったわ」「わかったー」「キュー」「うん」「クー」


 楽しそうに飛んで行くベル達を見送り店員を探す。どの人が店員なんだ? 冒険者ギルドの受付嬢は同じ服を着ていたし制服はあるはずだ。……おなじ服……あの服が制服っぽいな。


「すみません。欲しい物の種類と量が多いんですけど、手伝って貰えますか?」


 異世界でも頼んだら商品の案内ぐらいしてくれるよね?


「おー。大量購入ですか。大歓迎ですよ。お手伝いはお任せください。何をお求めですか?」


 声を掛けた店員さんはニコニコで応対してくれる。商売人っぽい女性だ。目がお金のマークになっているのが少し気になる。


「えーっとですね。必要な物は調理道具一式。特に鍋のたぐいは多めに必要です。次に食器類。普通のお皿とスープ皿は多めに欲しいですね。コップも十個ほど必要です。次に調味料ですね。種類があれば嬉しいです。最後に下着や寝間着。下着は五着。寝間着は二着お願いしたいです」


「畏まりました。ご案内しますね。まずは調理道具からご案内します」


 なんか。ぐふっ。上客掴みましたって声が聞こえた。店員の声でない事を祈りたい。案内されてついて行くと、料理関連の商品が並べられている棚に到着した。あといつの間にか店員が三人増えている。なんかこの店怖いな。忍びか?


「では必要な商品を仰っていただければおとりします。お勧めもご案内出来ますので、分からない事があれば、このマリーに何でもお聞きください。ただし、スリーサイズはひ・み・つ・です」


 指を軽く振りながらパチリとウインクするマリーさん。異世界にもこんな人が居るんだな。スリーサイズネタを異世界でぶっ込まれるとは思わなかったよ。日本だとテレビで見た事があるぐらいだからな。


「そ、そんな、珍獣を見るような目で見ないでください」


 あまりの珍しさに思わず凝視してしまった。


「あ、ああ。申し訳ない。えーっと。本当に何も無いので、基本的に料理に必要な道具をお願いします。普通の一般家庭で使われる金額の物でお願いします」


「分かりました。ご用意致します」


 顔を真っ赤にして、おかしいです。他の男性たちは喜んで購入量アップしていたのに。あの人男色ですか? と失礼な事をブツブツと呟きながら調理道具を選んでいる。周りの店員もマリーお嬢様の必殺技をかわすとはって驚いている。俺はお嬢様って言葉の方が驚きなんだけど。


 しかし、スリーサイズネタが必殺技なんだ。この世界では最先端のネタだったのかもしれない。確かに美人だし、スリーサイズネタに驚かなかったら、ほいほい物を買っていたかもな。あと俺は男色ではない。女性が好きです。


「こちらが調理道具一式ですね。包丁。まな板。お玉。フライ返し。フライパン。お鍋です。他に何か必要な物はありますか?」


 基本的な調理道具は普通にあるんだな。品質を確認してみるが良く分からない。ただ大量生産品とは違った重厚感が有るような気がするな。取り敢えずこれで構わないだろう。


「大き目の鍋をあと四つお願いします。それと焼き網があったらそれもお願いします。調理道具だけで幾らになりますか?」


「畏まりました。焼き網もご用意いたします。えー、全部で六万エルトになりますね」


 高い。調理道具って予想以上に高いな。全部手作業だからこんな物なのか? ……必要な物だから買うしか無いよな。調理道具でこの値段だと、家具とか幾らなんだろう?


「分かりました購入しますのでまとめておいてください」


「畏まりました」


 マリーさんがパチンと指を鳴らすと三人の店員さんが、調理道具を運んで行く。教育は素晴らしいと思うが、動作がなんか古いんだよな。日本人だからそう感じるだけなのか?


「食器は直ぐ隣です。こちらにどうぞ」


 隣に移動すると様々な種類の食器が置いてある。おお、陶器の食器もあるんだな。ガラスの食器は無いのか。料理を盛り付けるのは木の皿で十分だよな。


 コップは陶器の物が欲しいけど、ノモスと契約すればガラスで色々作ってくれるから、必要かどうか微妙だな。あっ、でも陶器のカップは欲しい。コーヒーが美味しく飲めそうだ。


「えーっと。普通の木のお皿とスープ皿を三十枚ずつ。木のコップは二十個。ナイフとフォークとスプーンを二十セット。お願いします。あの陶器のカップは高いんですか?」


「畏まりました。陶器のカップは一つ五千エルトになります」


 カップ一個五千エルト。高いのか? 異世界の場合は安い気もする。でも高いと言えば高いよな。うーん、皆の分を揃えたら四万五千……結構な値段だ。


 家具がいくらになるか分からないし、今回は我慢するか。余裕があったらまた買いに来よう。


「陶器の物は値が張るんですね。貴重なんですか?」


「陶器の場合は炭を大量に使いますので、どうしても値段が上がってしまいます。ポーション等の魔法薬でも陶器の容器を使いますので、カップ等はさらに割高になりますね」


 おうふ。魔法薬とか物凄く大事じゃん。何で忘れてた? あと此処で炭も買えないかな?


「マリーさん。ここで魔法薬と炭は買う事が出来ますか?」


「炭と魔法薬ですね。どちらもございますが、魔法薬は一般向けの切り傷や、軽度の体調不良に効果があるものしかございません。効果が高い物が必要でしたら、薬局、または冒険者ギルドでご購入ください」


「では、炭だけお願いします」


 ポーションか。絶対に手に入れておかないとな。必要な物がドンドン出て来る。鎧、高いの買い過ぎたかも。お金が足りるか不安になってきた。

読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
このマリーに何でもお聞きください。ただし、スリーサイズはひ・み・つ・です ↓
[気になる点] 地の文でいきなり店員の名前マリーがでてきたけどいつきいたの?明らかに不自然。この作者は雑な文が目立つ
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