表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
575/773

五百七十三話 大会翌日

劣化版ダマスカスについてですが、インゴットを加工して混ざらないのかといくつか感想を頂きました。


ダマスカスとして固定されて完成したので、追加加工しても混ざりあわないと考えていただけましたら幸いです。


分かり辛くて申し訳ありません。

 鍛冶大会でメルが無事に優勝を勝ち取り、迷宮都市の鍛冶師達にメルの実力を見せつけることに成功した。ついでにゴルデンさん達を精神的にも立場的にも追い詰めることができたので、俺としてもかなりスッキリした。あとはゴルデンさん達をユニスに任せて、外野から楽しもうと思う。




「一段落したし今日はのんびりしようか。ジーナ達もベル達も自由行動ね。でも、危ないことはしないように」


 鍛冶大会翌日、美味しい朝食を食べおわり、のんびりしながら今日の予定を告げる。


 予想外に長居してしまったから楽園に戻ってもいいのだが、メルの状況も気になるしラーメンも完成に近づいているので、それに目途をつけてから帰りたい。


 それに、昨日は少し飲み過ぎてしまったから、今日くらいはのんびりしたい。


「んー。じゃあ久しぶりに実家に顔を出してこようかな? サラ達も一緒に行くか?」


 自由行動と聞いて、ジーナが少し嫌そうに実家に顔を出すことに決める。少し嫌そうなのは父親と兄の相手をするのが面倒だからだろう。


 それでも顔を出すのだから家族仲は悪くないんだよね。まあ一人で相手をするのが嫌だからサラ達を巻き込もうとしているけど……。


 どうやらサラ達もジーナと行動を共にするらしい。


「ベル達はどうする?」


「おにごっこー」


 元気いっぱいに宣言するベル。鬼ごっこがしたいようだ。


 迷宮都市で仲良くなった精霊達と遊ぶのが楽しいのか、すでに目がキラキラしている。楽しそうで何よりだ。


「そっか。じゃあ楽しんでおいで」


「わかったー」「キュー」「たのしむ」「クゥ!」「まけないぜ!」「……」


 笑顔で窓から飛び出していくベル達。今日の迷宮都市は賑やかになりそうだ。


 ……いままであまり気にしていなかったけど、猛スピードで迷宮都市を駆け回るベル達のことを、他の精霊術師はどう思っているんだろう?


 ……まあ実害はないから問題ない……よね?


「「「いってきます」」」


「うん。気をつけてね」


 飛び出していったベル達に続いてジーナ達も出かけていった。さて、俺はどうしよう?


 のんびりするのは確定として……まずはもう一杯コーヒーを楽しむか。そんで、ゴロゴロしてシルフィと駄弁って、美味しい物を食べてまったりと無駄な一日を過ごそう。




「ん? メリルセリオ?」


 コーヒーを飲みながらまったりしていると、ベル達が飛び出していった窓からメリルセリオが飛び込んできた。


 なんだか慌てているようだ。


 メルに何か……あるわけないな。メラルとメリルセリオが居るんだから、よっぽどのことがなければ傷つくことはないし、よっぽどのことがあったら確実に騒ぎになっているはずだ。


 騒ぎになればシルフィが気がつかない訳がない。


「あう!」


 そんなメリルセリオが俺の服を掴み、あうあうと扉の方に引っ張っていく。ちょっとムスッとした感じの赤ん坊、可愛い。


「一緒に行けばいいんだね? メルの工房かな?」


「あう!」


 どうやら正解のようだ。メリルセリオの雰囲気からも緊急事態の可能性は低い。そうなると……まあ劣化版ダマスカス関係で何かあったんだろう。


「シルフィ、どんな様子なの?」


「……人が詰めかけているみたいね。鍛冶師、商人、冒険者、色々いるわ」


 やっぱりか。鍛冶師ギルドで俺と国の後ろ盾を宣言しておいたから大きな騒ぎになることはないと思っていたのだが、甘かったらしい。


「メルに危険は?」


「ないわね。メルに見学料を支払うついでに、質問をしようとする鍛冶師と、メルと商売がしたい商人、武器が欲しい冒険者が集まっているようね」


 強引な行為は禁止したけど、真っ当な商売は禁止していないから文句は言えないよな。そこまで禁止してしまってはメルが工房を構えている意味がないもん。


 でも人が集まりすぎて手に余るから助けを求められたって感じかな?


 のんびりしたかったけど、俺が蒔いた種でもあるし応援に行くか。メリルセリオに引っ張られながら宿を出る。


 出がけにトルクさんから夜のラーメン開発を誘われたから、今日一日まったりと過ごすのは無理なようだ。




 凄まじい人だかりと共にメルの工房が見えてくる。メル、大人気だ。


「こら割り込むな。見学料の支払いはこちらに並べ! 商談は向こうだ! というか帰れ!」


 なぜかドルゲムさんを捕らえに来た騎士達が人員整理をしている。もしかして、追加任務でメルの護衛が割り振られたのかな?


「雑用二番! 列が乱れているから、騎士様方に協力してさっさと整理しなさい! 雑用三番! 新しく来た奴等に状況の説明! 雑用一番、ご近所に迷惑を掛けているから、あんたが土下座して謝ってきなさい」


「はぁ、なんで土下座なんか」


「口答えするな! いけ!」


「「「……はい、お姉様」」」

 

 この騒ぎにユニスもゴルデンさん達をフル活用しているようだ。


 というか、名前すら呼んでないのが酷い。日本だと捕まりかねない所業なのだが、この世界なら大丈夫なのだろうか?


 あと、ゴルデンさん改め雑用一番へのあたりがキツイな。先頭を切ってメルに迷惑を掛けていた弊害だろうか?


 そしてなにより……お姉様ってなんだ? どう考えてもユニスの方が年下だよね? それ以前にあんな奴等に大声でお姉様と呼ばれて恥ずかしくないのだろうか? 


 ……ちょっと涙目で走っていくゴルデンさん改め雑用一番をみて、少しだけ同情した。


「あう!」


 グイグイとメリルセリオに引っ張られて裏路地に入る。どうやら裏口に案内してくれるようだ。


 あの人ごみに突入しないで済むのは正直助かる。


 裏口から工房に入り、そのまま応接室に向かう。


「むっ、まだ客は帰っておらん……裕太殿でしたか。どうぞお入りください」


 ドアを開けると騎士に制止され、俺と気付いてすぐに通してくれた。外だけではなく、中まで騎士が付き添ってくれていたらしい。


 騎士の目の前では乱暴なことも、悪辣な商売もし辛いだろうからメルも心強かっただろう。あとでお礼をしておこう。


 騎士に一礼して中に入る……なんで?


「あらあら、劣化版とはいえダマスカスですのよ? さすがにこの値段でこの量はありえませんわね。そもそもメル様は販売に乗り気では……」


 なんでマリーさんとソニアさんが居るのだろう。そして、なんでイキイキと商談をしているのだろう? さっぱり状況が読めない。


 メルは……イキイキと商談をしているマリーさんの隣で、限界まで身を小さくして気配を消しているな。


 役目は果たしたとメルにジャレついているメリルセリオにも気づいていないようなので、かなり余裕がない状態のようだ。


 あと、メラル。メルの隣で商人をにらんでいるけど、燃やしたら駄目だからね。  


(メル、メル)


 商談の邪魔をしないようにコッソリメルに話しかけるが、俺の声にも気づいてくれない。


(メル。ドアの方に来て)


 シルフィに視線を送り、もう一度メルに呼びかけると、少し驚いた後にコソコソとメルがやってきた。


 俺を見て笑顔になってくれるのは嬉しいが、かなり疲れた様子なのが痛々しい。


「メル。大丈夫?」


「……はい、なんとか大丈夫です」


「そっか」


 あまり大丈夫には見えないが、メルが乗り越えるべき問題なので納得しておこう。でも、手助けはするよ。迷宮都市が火の海になったら困るもんね。


「それでなんでマリーさんとソニアさんが居るの?」

 

 手助けはするつもりだけど、その前にこれだけは知りたい。


「えーっと、早朝に突然訪ねてこられて、私とメルさんの仲じゃないですか、心配しないで全部私にお任せくださいって言われました」


 分かるような分からないような……いや、やっぱりサッパリ分からないな。メルも困った顔をしているから、なんでこうなったのか理解できていないのだろう。


 まあ、どうせ金の臭いがしたとかそんな理由だろうな。放っておこう。


「マリーは凄いぞ。中途半端な見学料を持ってきた鍛冶師を言葉でボコボコにしてた!」


 とても嬉しそうにメラルが教えてくれる。


 メルは困惑しているが、メラルにとってマリーさんとソニアさんは心強い味方のようだ。


 まあ、メラルが言うとおり、お金が絡めばマリーさん達は強い。交渉に関しては任せても大丈夫だろう。


「ん? じゃあなんで俺が呼ばれたの?」


 交渉も身の安全も問題なさそうだし、俺必要?


「あの、申し訳ないのですが、鍜治場にある見学料をなんとかしていただけたらと……凄く高価な物まであるんです」


 涙目のメル。どうやら見学料の始末を俺に任せたいようだ。


「あれ? でも、魔法の鞄を貸しているよね? それに入れておけば良いんじゃないの? 高価な物も何も、メルの工房にはオリハルコンとかもあるんだから今更じゃないの?」


 迷宮で手に入れた沢山の魔法の鞄。俺にはチートな魔法の鞄があるから必要ないし、弟子達に貸し出している。


 それに入れておけば問題は解決するし、実際、俺があげたオリハルコンとかもそうやって管理しているはずだ。


「本当に高価な物が沢山あって、私が管理していると無謀な馬鹿が湧いてくるからお師匠様にお任せした方が良いとソニアさんが……」


 あぁそういうことか。おおっぴらに高価な物が集まっていて、その場所に他人の目から見たら小さなメル一人しか住んでいないってのが問題なんだな。


 たしかに馬鹿が集まってきそうだ。


「了解。鍜治場の荷物は、外から見えるようにして俺が回収するね」


 俺ならAランクの冒険者だし、無謀な馬鹿もそれなりに躊躇うだろう。襲ってきてもシルフィが一瞬でやつけてくれるからなんの問題もない。


「うわー。思っていたよりも凄い」


 メルにことわって鍜治場に移動すると、想像していた以上に混沌としていた。


 鉱石やらキラキラとした各種武器、鍛冶の道具と思わしき物が無造作に積み重ねられ鍜治場が埋まっている。


 だれだ? 巨大なバトルアクスなんて持ち込んだバカは……。


 でもまあ、それだけメルの公開鍛冶が評価されたってことなんだろう。見た目からして高そうなものでいっぱいだ。


 ……今日一日は見学料回収で潰れそうだな。とりあえず入り口を開けて誰にでも見えるようにしてから回収しよう。


読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 鍛"治"屋 この誤字何とかしてほしい
[一言] 常に守ってくれるボディーガードの最大の欠点が「見えない」「認知されていない」ってことですからね それはそれで役に立つ場面はありますが、抑止力にはなりませんからね ユニスが居るとはいえ気弱なメ…
[一言] いや~いまだにAランクの冒険者に見えないので 騎士もいる衆人環視の前で全く臆さない堂々した盗人としか思われないのでは 「やつは大変なものを盗んでいきました 俺の全財産の見物料です」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ