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五百十五話 楽園の拡張

 精霊王様方と中級精霊達を迎えて行われる宴会、いや、大宴会の準備は、ベル達の要望等に応えることで、大混乱の様相を呈してきた。中級精霊達を温かく迎え入れるだけのつもりだったのに、大変なことになってしまった。


「では、これより楽園を拡張する!」


 楽園の中心にある泉。


 その泉の上空に浮いている、この楽園を聖域たらしめている六つの属性が入り混じった玉の前で、光の精霊王であるライト様が厳かに宣言する。


 ……厳かなんだけど、玉の前に真ん丸な兎の姿のライト様、縮尺が狂うというかなんというか、集中できないのがもどかしい。


 俺のそんな些細な違和感はともかくとして、粛々と儀式は進む。


 ライト様の宣言の後、他の属性の王達、風の精霊王ウインド様、水の精霊王のウォータ様、火の精霊王のファイア様、土の精霊王のアース様、闇の精霊王であるダーク様が玉を囲むように集まる。


 そして精霊の王達によってそれぞれの属性の光が玉に注がれ、楽園全体を優しい光が包み込む。


「これにて、楽園の拡張は完了した! 中級精霊よ、妾達が許す。思う存分、新たな楽園を楽しむがよかろう!」


 ライト様の拡張終了の合図とともに、楽園の外で待機していた中級精霊達が、楽園の中心であるこの泉に向かって集まってくる。


 人型、動物型、植物型等々、様々な姿形をした精霊達が集まってくる姿は神秘的で、離れた場所で儀式を見守っていたジーナ達もはしゃいでいる様子が見える。


 たしかに、中級精霊クラスがあつまると雰囲気がある。


 浮遊精霊や下級精霊は赤ちゃんや本当に幼い子供の姿で微笑ましさが先に立つが、中級精霊は少し成長し自我がハッキリしたことで、子供の姿でありながらも精霊としての在り方が定まり、自然を内包した威を感じる。


 まあ、集まればの話で、個人になると話は違う。


 個別に俺のところにやってきて、招待してくれてありがとう、楽しみにしていたと口々にお礼を言ってくれる中級精霊達からは、子供らしい無邪気さを感じる。


 メラルと同じく、ベル達よりも成長し考えも深くなったけど、まだまだ子供ということなんだろう。


 さて、壮大な茶番も終わったし、まずは楽園を楽しんでもらうか。


 ちなみに茶番というのは、精霊王様方の演出の事だ。


 本来、聖域の拡張はノモスだけでも問題が無い作業で、地味に終わらせることも可能だった。


 それを、それでは威厳がないとライト様がおっしゃり、あの儀式が行われることになった。


 ……茶番だよね?


「みんな、お願いね」


 今か今かと待ち構えていたベル達にお願いすると、出番が来たと中級精霊達の集団に突撃する。


「べる、あんないするー」


 手足をワチャワチャと動かし、興奮気味に中級精霊達に話しかけるベル。


「キュー。キュキュ! キュキュキュキュキュー!」


 ヒレをパタパタさせながら、水の生物を模した精霊達になにやら話しかけるレイン。


 言葉は分からないが、ベルと同じく、案内するよと言っているんだろう。


 トゥルもタマモもフレアもムーンも、ベルとレインと同じように中級精霊の集団に突っ込んでいく。


「裕太、なんでそんなにハラハラした顔をしているの?」


 隣に居たシルフィが、不思議そうに質問してきた。


 ハラハラした顔をしている?


 ……うん、ハラハラした顔をしている気がする。


「ちょっと、ベル達がちゃんとできるか心配になっちゃったんだ」


 だって、トゥルとタマモはともかく、フレアなんか、胸を張って『あたいについてきな!』とか言っているし、ムーンに至っては中級精霊達の前でプルプルと震えているだけだ。


 ちゃんとコミュニケーションが成立しているの?


 もう、ハラハラしっぱなしでしかないから、ハラハラした顔になるのも当たり前だ。


「ふふ、心配は要らないから、安心して見ていなさい」


 シルフィが自信ありげに言う。


 シルフィがそう言うのなら安心なんだろうけど、初めてのお使いを見守っているようで、気分がソワソワして落ち着かない。


 ん? 中級精霊達がなにやら相談を始め……それぞれが分かれてベル達の周りに集まっていく。


 ……なるほど、姿形や属性が似たグループに分かれているようだ。


 組分けが終わると、張り切ったベル達を先頭に、分かれて楽園の各方向に散らばっていく。


「……中級精霊達がフォローしてくれるから、安心なんだね」


 ベル達が案内というよりも、中級精霊達がベル達を見守りつつ楽園を見て回る形になるのか。


「えぇ、中級精霊くらいの時って、自分よりも下の子達の面倒を見るのが楽しいのよね。ああやって、ベル達が一生懸命お世話しようとすると、喜んで受け入れて見守ってくれるわ」


 ……本末転倒な気がするが、みんな笑顔だったのでそれでいいのだろう。


「……じゃあディーネは今もその気持ちが強いんだな」


 なぜかディーネがレイン達の組の最後尾に交ざっている。


 何をしたいのかがいまいちわからないが、いつもお姉ちゃん、お姉ちゃんと言っているし、ちびっ子達の面倒を見てあげたいんだろう。


「……そうね」


 シルフィがそっと俺から視線を外す。


 シルフィでもディーネの行動は理解しがたいようだ。


「……そんなことよりも裕太、こんなところでのんびりしていていいの? 宴会の準備は?」


「そうだった。じゃあ俺は準備を始めるから、シルフィ達は精霊王様方をよろしくね」


 俺はシルフィ達に精霊王様方の相手を任せ、宴会の準備に取り掛かる。


 今日は普段楽園に滞在しているメンバーに加えて、遊びに来ている浮遊精霊達と下級精霊達、そして中級精霊達と精霊王様方が参加する宴会だから、規模が大きい。


 普段の、じゃあ宴会する? といった時のように、簡単にはいかないのだ。


 幸い、精霊王様方はシルフィ達の新しい家に興味津々なので、シルフィ達に家で接待してもらえばなんの問題もない。


 その間に、しっかり準備を整えるぞ。




 ***




「ルビー、今、大丈夫?」


 厨房の中をせわしく動き回るルビー……まったく大丈夫そうに見えない。 


「今、エメ達がそれぞれ忙しいから手が足りないんだぞ! ちょっと忙しいんだぞ!」


 うん、見たら分かるよ。滅茶苦茶料理しまくっているもんね。


「えーっと、じゃあ、できている料理を受け取っていいかな?」


「そっちの二つの鍋は煮込みが足りないから駄目なんだぞ。それ以外は大丈夫だぞ」


「ありがとう。じゃあ受け取っていくね」


 厨房のテーブルに所狭しと並べられた料理と、弱火で保温されている鍋類を魔法の鞄に収納する。


 今日の宴会料理をフル稼働で作ってくれているルビーには頭が上がらない。


 カレーと新メニューの四種と、後から俺がお願いした甘味も、バッチリ形にしてくれた。


 宴会が終わったら何かお礼をしなければならないが……どうせ要求されるのは食材の類になるんだろうな。


 料理道具を贈れば興味は持つだろうが、ルビーはドラゴン素材で料理道具を揃えている。下手な料理道具は邪魔にしかならないだろう。


 ん? 一般的な料理道具なら邪魔なだけかもしれないが、地球独自の便利な料理道具ならお礼になるかもしれない。


 次に迷宮都市に行った時にメルに相談しよう。


 ついでにメルとメラルを楽園に招待するのも良さそうだ。


 メラルも中級精霊達が楽園に来ることになったから、気兼ねせずに遊びに来られるだろう。


「全部受け取ったよ。また後で取りに寄るから、お願いね」


「分かったんだぞ。次はデザートを作っておくんだぞ!」


 そういえば、今回受け取ったのは料理ばかりだったな。


「分かった」


 ルビーと別れ、今晩の宴会の会場に向かう。


 楽園の区画内の一つで、特に何も利用されていない場所。それが今日の宴会会場だ。


 本来は桜が満開の精霊樹の下で宴会したかったが、今回は色々とイベントがあるので、この何もない場所を利用することにした。


 会場に到着すると、何もない場所が見事な宴会場に生まれ変わっている。


 というよりも生まれ変わらせてもらった。


 まずノモスに頼んで、宴会場の中心にホールケーキのような舞台を作ってもらう。


 そして、その周囲にテーブルと椅子、料理を並べる巨大な台等の、宴会で使う設備を作ってもらう。


 最後に、大量の水を溜める巨大な器と、巨大な焚火台を作成。


 これでノモスの出番は終了。


 シトリンにバトンタッチして、ノモスが作った設備に細かい装飾を施してもらう。


 それなら最初から全部シトリンに任せろよと思うが、俺が契約している土の精霊はノモスとトゥルだから、できる範囲は自分の精霊にお願いするのが筋だろう。


 ノモスの美術的センスが、せめて普通だったらシトリンの手を煩わせることはなかったんだけど……。


 ちなみに、トゥルはハンドベルの練習と案内プラン作成で大忙しだから、会場設営のお手伝いは免除だ。


 シトリンの装飾が終わると、次はドリーの出番。


 会場中に芝生を生やし、各ポイントを花や木で飾ってもらう。


 このお陰で宴会場が一層華やかになる。


 これでおおまかな会場設営準備は完了した。


 あとは、今日ここで使う迷宮都市で仕入れてきた大量の食器や、イベントで使う道具を並べて、巨大な器にディーネの力がこもった水を溜めて、焚火台に大量の薪を並べて点火をイフに任せれば完璧だ。


 これで計算上は様々な属性の精霊が、更に居心地よく宴会を楽しめる環境になる。


 風と光と闇と土と命は特に何もしていないが、シルフィが風はどこにでもあるって言っていたし、土はそもそも場所が土の上だ。


 宴会は夜だから闇は問題が無いし、命は俺達と楽園に住み着く生物達で満足してもらえればと思う。


 光は、どうしようもないので、俺とジーナ達と精霊の皆で光球を打ち上げまくる予定だから、勘弁してもらえればと思っている。


 まあ、薪は魔法の鞄に入っているから問題はないんだけど、水を用意してくれるはずのディーネが、お出掛けしちゃっているんだよね。


 今召喚するのは可哀想だから、宴会が始まる前に用意してもらおう。


 改めて思ったけど、俺が契約している大精霊達の力を、今までで一番借りたのはこの宴会の準備かもしれない……。


 それってどうなの? とも思うが、平和ってことで良いことなんだろう。たぶん……。


読んでくださってありがとうございます。

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[気になる点] 『天下』をイフに任せれば     ↓ 『点火』をイフに任せれば イフが天下をとってどうする?
[一言] 天下をイフに任せれば完璧だ。 →イフは天下人だった…?
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