表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
506/773

五百四話 ちょっと初心に戻る

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。


新年一発目の更新なのですが、投稿が一日遅れてしまいました。申し訳ありません。

めざせ豪華客船!!の更新も明日になります。よろしくお願いいたします。

 中級精霊の為の楽園の開拓。始める前はサクサクと終わらせられると思っていたけど、まさか料理ができる精霊が居ないことで悩むとは思っていなかった。精霊術師講習の前に精霊の為のお料理教室を開くべきだった気がする。


「ふいー。なんだか初心に戻った気がする」


 楽園を広げるためにサクサクと魔法のシャベルで土を掘って、その土を魔法の鞄に収納する行為を繰り返していると、死の大地に紛れ込んだ当初を思い出してしまう。


「ふふ、そうね。最初はそんな感じだったわよね。でも、今は賑やかになったわ」


 俺の独り言に返事をくれるシルフィ。賑やかか……。


「……そっか……うん、そうだね。賑やかになったね」


 最初の頃は生きるのに必死で、まずは水と食料から探さないと駄目だった。そして、一緒に居てくれたのはシルフィとベルだけ。


 カラカラな元湿地帯にハンドオーガーを突き立て、祈りながら井戸を掘って水が出た時は感動して泣きそうになった。そしてシルフィがディーネとレインを連れて来てくれたんだった。


 段々と環境を整え、そのたびに仲間が増えて、今では村ができて見知らぬ精霊が遊びに来るようになった。弟子まで取ってしまったし、空には島まで浮いている。


 うん。とても賑やかだ。


「頑張ったわね」


「……うん」


 思わぬところでしんみりしてしまった。でも、悪い気分じゃないな。クールなシルフィの僅かながらも優しい微笑みから、本気で褒めてくれているのが感じられてなんだか誇らしい気分になる。


「よし! 頑張るよ!」


「あはは、頑張りなさい」


 なんか滅茶苦茶気合が入った。頑張って開拓して中級精霊を迎え入れて、もっともっと楽園を賑やかにしよう。


 そのためにも今は掘って掘って掘りまくるぞ!


 ……でも、やっぱり腰が痛くなるんだよな。レベルが上がって腰も強くなっているはずなんだけど、いつまで経っても弱腰のままだ。性格が腰に影響しているんだろうか?


 くだらないことを考えながらも再び魔法のシャベルを土に差し込む。相変わらずプリンをすくうように楽々と土が掘れる。


 最近、開拓ツールの出番が魔法の鞄くらいしかなかったけど、やっぱり開拓ツールはチートだ。本来の用途で使えばそのことがひしひしと感じられる。


 せっかくの能力なんだから、武器としての利用以外にも使い道を探していきたい。


 考え事をしながらも、慣れた作業なので行程がドンドン進んでいく。


 とりあえず楽園を一周分拡大することに決めたけど、この調子ならもう少し広くしてもよかったかもしれない。


 まあ、今までの楽園でも使いきれていない場所が結構残っているから、このくらいで十分か?


「それにしてもシルフィ、この新たに開拓したスペースを何もしないで中級精霊達に渡すんだよね? 俺だったらそんな何もない場所を丸投げされても困るんだけど、本当に喜んでくれるの?」


 地面を掘って岩を敷き詰め、そこに森の土を投入するまでが俺の仕事。でもそれって基礎以外はほとんど何もないのと変わらない。


 せっかくのプレゼントをラッピングも無しに渡すような残念さを感じるから、せめて水路くらい作ってあげた方がいい気がする。


「何もないから喜ぶのよ。実際、中級精霊くらいの時が一番窮屈なのよね。小さい頃は何も考えていなくても楽しいし、上級精霊や大精霊クラスになるとそれなりに自分の役割を見つけて安定するの。だから、その合間の中級精霊が一番不安定なのよ」


 大人と子供の合間……いわゆる思春期? 中級精霊って見た目が小学生くらいだからちょっと違和感がある表現だな。


「自分達で自由にできる場所があるなら、その方が嬉しいってこと?」


 他の聖域は環境が保護されているけど、楽園はかなり自由度が高い。だからこそ余計な開発は必要ないのか。


「そういうことよ」


 真っ白なキャンバスを前にしたワクワク感と同じってことだな。それなら理解できる。キャンバスなんて使ったことないけどね!


「あれ? でも、遊びに来る中級精霊達って契約はしていないんだよね? 聖域ではある程度自由に力を振るえるのは知っているけど、開発までして魔力は大丈夫なの?」


 俺の契約精霊達は俺から魔力を供給して保存している。俺は高レベルで魔力がたっぷりな上にほとんど魔力を使わないから、ベル達は相当な魔力を貯めこんでいるって聞いたことがある。


 でも、契約者のいない中級精霊が魔力を使って大丈夫なのか? まあ、それを言ったらルビー達もなんだけど、彼女達は上級精霊だし、ほとんど魔力を使っていないから大丈夫っぽい。


「裕太。精霊が契約するのは、最低限のラインがあるにしても魔力が全てじゃないのよ。でなければ裕太とベルの契約ももっと時間が掛かったでしょ?」


 そういえば最初のベルとの契約時も、おまけでって言われた覚えがある。それにシルフィ達大精霊には今もおまけしてもらっている気がしないでもない。


 怖くて詳しくは聞いていないけど、シルフィ達の力を考えると俺単独で大精霊を複数満足させられるとはとても思えないよね。


「精霊は人と契約しなくても成長できるし自然から魔力を得ることができるわ。それでも契約するのは契約を通して現世との繋がりを深めて成長しやすくするため。浮遊精霊ならともかく中級精霊まで成長した精霊にとって、このくらいの場所を開拓するのに必要な魔力なんて誤差の範囲内よ」


 小学生くらいの見た目なのに、中級精霊って凄いよね。


「とりあえず、俺が気にする必要が無いってことは分かったよ」


 まあ、幼子にしか見えないベル達でも俺より年上なんだから、そこらへんは精霊だからってことで納得するしかないんだろう。


 おっ、噂をすればベル達だ。いや、考えただけで噂はしていないな。


「ゆーたたいちょー。いじょうなしー」


 ふわふわと飛んできたベル達が、周囲に異常がないことを伝えてくれる。本人達的にはキリっとして見回りの報告をしているつもりなんだろうけど、可愛らしさしか伝わってこない。この子達が年上なんだから精霊って不思議だ。


 あと、たいちょーって隊長のことだよね? 敬礼はしていないからあれだけど、ベル達も懐かしい作業で開拓当初の頃を思い出しかけているのか?


 隊長ごっこは若干黒歴史になりかけているから、思い出さずにいてほしい。


「うむ、ごくろう。引き続き警戒を頼むぞ」 


 思い出さずにいてほしいのに、俺の体が勝手に隊長っぽく振舞ってしまう。なぜだ?


「いえっさー」「キュキュッキュー」「いえっさー」「ククックゥー」「いえっさー」「…………」


 ほら、隊長っぽく振舞っちゃったから、ギリギリ忘れていたベル達が敬礼まで思い出しちゃったよ。


 あれ? でも、敬礼を教えた時って少なくともフレアとムーンは居なかったよね? うーん、そもそもムーンは敬礼をしているんだろうか?


 プルプルボディがなんとなくビシッと決まっているようには見えるけど、スライムだと判断が難しい。まあ、知らないはずのフレアまでちゃんと敬礼しているんだから、たぶんムーンも敬礼しているんだろう。


 契約精霊達が一生懸命に敬礼する姿がとても可愛らしい。なるほど、黒歴史だなんだと思いつつも隊長っぽく返事をしてしまったのは、ベル達の可愛らしい敬礼を見たかっただけなんだな。


 ……俺のベル達への感情は、祖父が孫を思うレベルまで達しているのかもしれない。 


「では、引き続き周囲を警戒せよ。解散!」


 解散の合図とともにキャイキャイと飛び去っていくベル達。そして呆れた視線で俺を見るシルフィ。このごっこ遊びをすると、シルフィの呆れた視線がデフォルトなのが少し悲しい。


「おーい、師匠ーー!」


 少し黄昏れていると、ジーナが俺を呼びながら走ってきた。


 ジーナ達にはルビー達と協力して計画に必要な物を話し合ってもらっているはずなんだけど、何か分からないことでもあったかな?


「ジーナ。どうしたの?」


 結構なスピードで目の前まで走ってきたジーナに声を掛ける。しかしあれだ、ジーナももはや一般人では括れない領域に突入しているな。


 精霊の村からこの場所まで結構な距離があるのに、かなりのスピードで走ってきて息すら切れていない。レベルアップって凄いよね。俺の弱腰は治らないけど……。


「あぁ、エメさんが新しく欲しいものがあるって言っているんだけど、たぶん師匠の協力が必要だから確認しに来たんだ」


「ん? 俺の協力が必要? エメが欲しいのなら協力するのは当然だけど、何か特殊な物が必要なの?」


 ルビー達上級精霊には契約もしていないのにかなりお世話になっている。すべてを掛けて望みを叶えるとまでは言えないけど、多少の苦労くらいは喜んで受け入れるつもりだ。


 でも、わざわざ確認に来るってことは、マリーさんに丸投げでは済まない物が必要なんだよね? 多少の苦労くらいで済むのかが不安でもある。


「迷宮都市で売っているのは見たことがないけど、特殊って訳じゃないと思う。ハンドベルを沢山仕入れてほしいんだって」


 ハンドベル? ああ、ベル達のお土産にベリルで買ってきたやつだな。今でも楽園でのんびりしている時にベル達の演奏を楽しませてもらっている。


 なるほど、ベル達の演奏に影響されてハンドベルで遊びたいって精霊が沢山居るのか。それでこの際だからと注文を出したんだろう。 


 日本だとよっぽどの希少品でもない限りどこでも似たような物が手に入るけど、この世界だとハンドベルのような劣化し辛い物でも手に入れるのに手間が掛かる。ネットショッピングの便利さを再認識したな。


「それくらいなら問題ないよ。まあ、シルフィに連れて行ってもらわないといけないけど、大丈夫だよね?」


「ええ、大丈夫よ」


 シルフィもOKを出してくれたし、なんの問題も無い。気になるところがあるとすれば、買い物に行ったついでに夜遊びが可能なのかってところだけど……無理っぽいな。


 休暇で行くのならともかく、買い物のついでに夜遊びは俺の良心が耐えられそうにない。後ろ髪は引かれるけど……。


「分かった。じゃあ、リストに入れておくから頼むな」


 ……リスト化するほど必要な物が沢山あるの? まあ、苦労するのはマリーさんだから良いか。丸投げって最高だな。


 とりあえず精霊の村で建物の拡張と新設をしてから買い物。必要な物が多そうだし迷宮都市でマリーさんに丸投げして、ベリルでハンドベルを入手。その後、適当な森で土を確保して迷宮都市で商品の受け取りって流れが良さそうだな。


 細かく手間はかかりそうだけど時間が必要な作業は少ないし、意外と早く中級精霊を迎え入れられるかもしれない。楽しみだな。


読んでくださってありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 人間の生活を知りたいと言って商品を山ほど確保する。少しはハンドベルとか作ってみたいと考える精霊はいないのかな。買うだけが人間の生活じゃないよ。
[良い点] あけましておめでとうございます。 [一言] 料理人については新たに開拓したスペースを任せる中級精霊達の中から育ててルビーの合格が出たら村に常駐出来る様にするのが無難かな?それか何処かの孤児…
[良い点] あけおめ~ [一言] ハンドベルあとタンバリンみたいな小さな太鼓よさそう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ