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四百六十二話 軽っ!

遅れて申し訳ありません。

 淫魔の館を出た後、ベリルの宝石と馬車の予約をして宿に入った。少しでも燃え尽きたリビドーを回復させるために食事を沢山詰め込み、夜まで全力で体を休めた。


「裕太、なんだか存在感が薄くなっているように見えるのだけど、大丈夫なの?」


 ベリル王国での休暇を終えてシルフィを召喚すると、いきなりきわどい質問が飛んできた。


 さすが大精霊、勘が鋭いな。でも、こういう事態も想定して、脳内でシミュレーションを済ませてあるから大丈夫だ。


 まあ、存在感が薄くなってるって言葉は予想外だったけどね。存在感が薄いってどういうこと? 存在感まで吸い取られたの?


「そう? 自分では特に感じないけど、観光のし過ぎで疲れちゃったかな? まあ、体調はなんともないから、たぶん大丈夫だと思う」


 思いもよらぬ言葉にちょっと不安を抱えながらも、何食わぬ顔でシルフィの質問に答える。


「……んー、ローゾフィア王国に到着したら、念のためにヴィータに見てもらいなさい」


 ヴィータの診察が必要なくらいに存在感が薄いらしい。


 ベリルの宝石でクリスさんとロミーナさんに、なんだか落ち着きましたねって言われたのは、大人になったとか風格が出たとかじゃなくて、存在感が薄かったからなのか。


 たしかにベリルの宝石で飲んでいても俺のリビドーはピクリともしなかったし、その後も本番のお店に遊びに行く気力もなくて、歓楽街にくりだすことは無かった。


 しばらくすれば元に戻るとは思うけど、改めて思う、淫魔の館……ヤバいな。


 でも、楽しかったのは楽しかったんだよな。また遊びに来てもいいって言われているんだけど、あそこに行くと他に遊びに行く気力が根こそぎ奪われてしまうのが問題だ。


 先に他の店で遊ぶって方法もあるけど、他で発散した後に淫魔の館に行ったら、精力が足りずに本気で命を失いそうで怖い。


 んージレンマだ。ん? 淫魔のお姉さん達の人数を減らせば大丈夫か? 2人、いや、3人相手ならギリで大丈夫な気がしないでも……いや、やっぱり2人だな。調子に乗ると危険だ。


「どうしたの? やっぱり体調が悪い?」


 黙り込んでHなことを考えていると、シルフィに心配を掛けてしまった。次はいつ遊びに来られるかも分からないんだし、Hなことはしばらく考えないようにしよう。気持ちの切り替えは大切だ。


「いや、ちょっと考え事をしていただけ。じゃあそろそろ出発しようか」


 ローゾフィア王国に到着したらジーナ達の様子を確認して、ベル達を召喚してたっぷり戯れよう。


 ***


「師匠、お帰り」


「お師匠様、お帰りなさい」


「師匠、お帰り!」


「おししょうさま、おかえりなさい」


 宿に戻ると可愛い弟子達が笑顔で出迎えてくれた。怪我も無いようだし、大丈夫だとは分かっていてもちょっとホッとするな。


「みんな、ただいま。見たところ大丈夫そうだけど、何か問題は起こらなかった?」


「あぁ、依頼もちゃんと熟せたし、なんの問題も無かったぞ」


 俺の質問にジーナが代表して答えてくれた。背後で見守っているヴィータも穏やかな顔で頷いているし、なんの問題も無くローゾフィア王国での依頼を熟していたようだ。


「そっか、もう少し詳しく聞かせてね」


 落ち着ける場所に移動して詳しく活躍を聞かせてもらおう。しかし、あれだな。迷宮でも最前線に足を踏み入れるレベルなんだから当然なんだろうけど、手が掛からな過ぎてちょっとだけ寂しい。


 もっと師匠が居ないと大変だった的なテイストがあった方が、師匠としては嬉しい気がする。


 そもそも、ジーナ達のことで苦労したことって何かあったか? 最初に手を貸しただけで、あとは勝手に成長している気がする。


 ……あれだな。手がかかる子ほど可愛いって聞くけど、手が掛からないのに可愛らしいってことは、ジーナ達は純粋に可愛いってことになるな。


 それはとってもいいことなんだから、俺の教育方針は間違ってない。手を出さずに見守るのも一つの教育だ。


 危ない危ない。なぜか自分の中で師匠なんて必要ないって結論に達してしまいそうになった。


 さて、師匠として愛弟子達の活躍をじっくり聞かせてもらうか。おっと、その前にベル達も召喚しておかないといけないな。


 ***


「裕太……ずいぶんと無茶をしたみたいだね」


 ヴィータが呆れた表情で俺を見ている。これは確実に無茶の内容も把握しているな。診察前にシルフィに席を外してもらって良かった。


 シルフィも俺が何をしていたかなんてだいたい想像はついているだろうけど、厳然たる事実として把握されるのは困る。事実と推測の間に大きな隔たりがあるからな。


 ついでにジーナ達とベル達も当然席を外してもらっている。いまごろ、お土産を囲んでワイワイと楽しんでくれているはずだ。


「まあ、無茶をするつもりはなかったんだけど、結果的に無茶をしてしまったというか……無茶をされてしまったというか……ね?」


「分かるよね? って顔をされても、どう答えていいか分からないよ」


 ヴィータに困った顔をさせてしまった。まあ、ヴィータは下ネタに喜んで付き合うタイプじゃないからしょうがないか。それでいてムッツリな雰囲気の欠片も無いから羨ましい。


 まあ、これ以上ヴィータを困らせるのもなんだし、そろそろ本題に入るか。


「それでなんだけど、俺の状態ってどうなっているの? 治るよね?」


 体調は良くなっている気がするし、それほど問題は無さそうなんだけど、無茶とか言われると不安になってくる。


「極度の疲労だから問題は無いよ。裕太の存在感が薄く感じるのは、生殖をつかさどる部分が無理を重ねて、そこを回復させるために他に力が回っていない影響だね」


 生殖をつかさどる部分。たぶんヴィータが言っているのは局部のことだけじゃないな。局部も含めて内臓やらなんやらが極度に疲労しているんだろう。淫魔おそるべしだな。


「問題が無いなら良かったよ。じゃあ、回復をお願いします」


 早く完全な男として復活したい。今のままだと、なんだか体にも心にも気合が入らない。ずっと賢者タイムって感じだ。


「うーん、病気って訳じゃないし、自然回復できるんだから自然回復に任せた方がいいね。なんでも精霊の力に頼るのは駄目だし、無茶をしたことを反省しながら体をいたわること。いいね?」


 普通に治療を拒否されてしまった。


「……反省はしてるから、できれば回復してもらえると助かるなーなんて思うんだけど?」


 気分的に数日間延々と賢者タイムが続いている感じだから、男としての何かを失ってしまいそうで怖いんです。


「裕太。僕は長い時を様々な命と共に生きてきたんだ」


「えっ? うん、知ってるけど?」


 なんたって大精霊だもんね。真面目な顔で言われなくても知ってるよ?


「そんな中で淫魔の被害を受けた人も見たことがあるんだ。悲しいことだけど、でも、生存競争としてはどうしようもないことではあるよね?」


「う、うん、そうだよね?」


 淫魔なんて一言も口に出していないのに淫魔の話が出てくる矛盾。まあ、矛盾じゃなくて全部完璧に理解されているってことだよね。


「でも、裕太の場合は望んでこうなったんだよね?」


「……反省してゆっくり休みます」


「それが良いと思うよ」


 怖っ! なんか命の大精霊である僕を精力回復ポーション扱いする気? って声が聞こえた気がする。


 自業自得だからしょうがないんだけど、優しいヴィータなら大丈夫って甘く見ていたよ。


 ヴィータは怒らせると怖いタイプな気がするし、大人しく反省しよう。



 ***



 ベル達としっかりと戯れ、師匠として慈愛の眼でジーナ達を見守り、偶にシルフィ達にお酒を貢ぎながら体を休め、ようやく長い賢者タイムを抜けた。


 しかしあれだね。極度の疲労ってなかなか回復しないんだね。回復まで何日掛かったんだろう?


「お師匠様?」


 長い休暇。ベル達とフクちゃん達は追加で購入したハンドベルに大喜びしてくれたな。


 今まではハンドベルの数が足りなくて全員で演奏できなかったけど、数が増えて全員で演奏ができるようになったから、大満足のお土産になった。


 指揮者役のジーナはとても大変そうだったけど、これも精霊術師の修行だから問題ない。


 楽園と違って姿と声が聞こえないし、触ることもできないから難しすぎるって言っていたけど、サラ達の協力を得て素晴らしい演奏を披露してくれた。


 お遊戯の発表会を見る保護者目線だったから、涙腺が崩壊しそうなくらい素晴らしい演奏会だった。お金が取れる仕上がりだ。


 ジーナ達に対するお土産は少し申し訳なかったな。気力が回復しなかったから、前回と同じような物しか用意できなかった。まあ、食べ物は喜んでくれたから、最低限の務めは果たしたってことにしておこう。


「お師匠様?」


 あっ、そういえばヴィクトーさんへの挨拶と、追加人員を連れて遺跡に様子を見に行ったな。ベッカーさん達はまだ発掘に手を出してなくて、拠点の整備とどこから発掘するかの調査段階だった。


 それでも野宿は辛かったらしく、お土産代わりのお酒と食糧は大喜びしてくれた。ローゾフィア王国で買ったやつだけど……。


 あと、水場が遠くてレインが大活躍したな。キュキューと自慢げでとても可愛らしかった。


「あの、お師匠様?」


 目の前に座っているサラが困惑している様子だし……現実逃避もここまでか。呼び出したのは俺なんだし、ちゃんと対応しないといけないな。


 ……サラの答え次第で、この楽しい生活の中からサラ、フクちゃん、プルちゃんが居なくなってしまう。


 最初は精霊術師の地位向上のために利用するつもりだったのに、居なくなってしまうと思うと、正直とても寂しい。


 だけど……約束の時間が来たのなら、師匠として弟子の気持ちをしっかり聞かないとな。


「お師匠様? どうされました? 出直した方が良いですか?」


 休みの間も、サラが居てくれると助かるとか、サラは凄いねとか、サラは頑張っているねとか、さりげなくアピールしたし、美味しいごはんも沢山食べさせたから大丈夫なはずだ。


 よし、聞くぞ!


「いや、出直さなくて大丈夫。ちょっと色々と思い出していただけだからね。さて……サラ、約束の1ヶ月が過ぎたけど、これからどうするのか結論は決まったかな?」


「えっ、お師匠様と一緒に居るつもりですけど?」


 軽っ! 俺がドキドキしまくっていたのに、とっても軽っ! えっ? これはこのまま受け取っていいの? 弟子問題解決?


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] この作品はエロの回がどうしても無理で…精霊との関係も含めて、シルフィとか弟子達とか…見ない事で回避してたけど流石にもう無理でした。 寝る間も惜しんで見てただけに背徳感がどうも気持ち悪い…
[気になる点] 二日酔いを治すのも、大小の違いはあれど同じ事だよね そもそも、いい歳して自分の限界を越えて飲んで二日酔いとかするなと思うけど
[気になる点] 主人公の性格なんだろうけどこの淫魔系の話だけはどうしてもとある中毒者との類似が多くて凄い個人的なんですが法的に禁止されてないなら楽しければ何してもいいに聞こえてしまいます
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