四百六十話 謎解き
今回は下の話の続きです。苦手な方はご注意ください。
ジュードさんに連れられた先に在ったのは淫魔の館……妖しくも色っぽい淫魔のお姉さん達に囲まれて鼻の下を限界まで伸ばしていたが、何気に命の危機だと気がつき背筋がゾッとした。俺は生き残ることができるのだろうか?
「謎解き? あぁ、そうだったわね。んー、気分が乗ってきたところだったんだけど、時間はまだまだあるんだし、お酒を飲みながら会話を楽しみましょうか。ワインで良い?」
「はい、ワインでお願いします!」
よし、とりあえずいきなり楽しいことに突入して、訳も分からずに腹上死コースは免れた。
『大きさこそ正義』のサキュバスのお姉さんがワインを取りに行っている間に、なんとか限界ギリギリまで搾り取られながらも死なない方法を考えないといけない。
ジュードさんが俺を迎えに来るのは昼過ぎ……長すぎるよ!
こうなれば俺のテクニックで淫魔のお姉さん達を全員撃沈……無理だ。テクニックに自信がある訳でもないし、そもそも前回は淫魔のお姉さん1人に搾り取られたんだ。今度は6人……無理ゲーな気がする。
「ねえ主様、何を考えているの?」
ふにょんと右腕に幸せな感触がはしる。生き残る方法を考えていたら、淫魔のお姉さんに接近されてしまった。
……時間を稼ぐためには回避しなければならないことのはずなのに、幸せな感触に喜んでしまっている自分が居る。欲望に弱い自分が情けないです。
「あら? じゃあ、私はこっちね」
弱い自分を戒めていると、今度は左腕に幸せな感触がはしる。左側を見ると、当然淫魔のお姉さんが座っている。両サイドを淫魔のお姉さんに抑えられた。
両腕を幸せな感触に支配されてしまい、脱出は不可能な状況だ。
「じゃあ、私はここね」
「それなら私はこっちね」
床に座って俺の両ひざに幸せを乗せる2人の淫魔のお姉さん。わざわざ床に座らなくてもとも思うが、床にはふかふかの絨毯が敷かれているので特に問題は無いのだろう。
しかしあれだな、海外の有名アーティストになった気分だ。限りなく面積の小さな水着美女に囲まれるとか、PVの世界だよね。
欲望に弱い俺の男の象徴が、すでに暴れだしそうになっている。ここで欲望に流されて飛び掛かったら、朝には不味そうな干物が完成するのは確実だな。
「乗り遅れちゃったわ」
1人残っていた淫魔のお姉さんが、少し残念そうに呟いている。たしかに俺の両サイドも両ひざも幸せな感触に包まれているし、近づく隙間はないな。
「背中が空いているわよ」
右側の淫魔のお姉さんがとんでもないことを言いだした。もしかしてソファーの背もたれと俺との間に座るってことですか?
そうなると、俺の背中も幸せに包まれることになる。命の危機がなければ是非ともお願いしたいシチュエーションだけど、さすがに危険すぎる。
俺の弱い理性は崩壊寸前だ。
「えーっと……みなさん、さすがに近過ぎると思います。お酒も飲みにくいですし、いったん離れましょう」
「あら? こんなにドキドキしているのに、本当に離れちゃっていいの?」
妖しく艶めかしく俺の心臓部分を撫でながら言う右側の淫魔のお姉さん。
「お酒なら私達が飲ませてあげるから、心配は要らないのよ?」
ドキドキが止まらないどころか、ドキドキしすぎて心臓が止まりそうな状態の俺の耳元で、甘い吐息を吹きかけながら話す左側の淫魔のお姉さん。
話していないのにサワサワと手を動かす両ひざの淫魔のお姉さん。
体中どこもかしこも幸せで、もうこのまま流されちゃってもいいかなって気になる。
でも、そういう訳にもいかないので、シルフィ達やベル達、ジーナ達のことを思い浮かべる。
「ドキドキが洒落にならないので、一度離れてください。お願いします」
うん、みんなのことを考えると、夜遊びしている罪悪感やらなんやらで少し冷静になれた。
特にベル達やマルコとキッカの顔は効果が抜群だな。罪悪感がハンパ無い。
俺が少し落ち着いたことに気がついたのか、残念そうに離れてソファーに座りなおす淫魔のお姉さん達。
ふむ、冷静になると、なんでここまでお姉さん達のサービスが良いのかが疑問だ。
スラムの親分であるブラストさんに頼まれたにしても、淫魔のお姉さん達にやる気がありすぎる気がする。嬉しいけど怖い。
「おまたせ」
喜べばいいのか怖がればいいのか自分でもよく分からなくなっていると、お酒を取りに行っていた淫魔のお姉さんが戻ってきた。
よし、全員揃ったし、淫魔のお姉さん達がなぜやる気満々なのかも含めて謎解きに挑戦しよう。
すべてを明らかにしつつ時間を稼いで、ちょうどいい時間になったら俺の暴れん坊を解放だ。
「それで、えーっと……俺はなんでこの館に案内されたんですか? お姉さんが居るってことは偶然ではないんですよね? あと、お姉さん達のやる気がとても高いように感じるのですが、なぜですか?」
運ばれてきたワインを一口飲み、『大きさこそ正義』のお姉さんに質問する。
一度お相手してもらったお姉さんのところに再び案内される。偶然の可能性もゼロではないが、俺が来ることも知っていたみたいだし偶然ってことは無いだろう。
やる気が高いのも、命に直結するから理由くらいは聞いておきたい。
「うふふ、謎解きなのにすぐに答えを聞いちゃうの?」
そうだった、謎解きだった。時間を稼ぐためにも答えを聞くのではなく、自分で答えを導き出すべきだな。
「少し時間をください」
「うふふ、正解したらたっぷりご褒美をあげるから頑張ってね、主様」
俺が主様なのにご褒美をもらう立場なのか……まあ、なんちゃって主様だし、そこらへんは考えてもしょうがない。
たっぷりなご褒美は怖いから、程々のご褒美を目指して頑張ってみよう。
「まず、俺をここに連れてきたのはスラムのジュードさんです。そうなると、当然ブラストさんがこの件には噛んでいるってことになりますよね?」
「ええ、急だったけど、ブラストの親分さんから頼まれてこの場を用意したわね。時間が無かったのだけど、最高の淫魔を各店から厳選しているから期待していいわよ」
ここに居る淫魔のお姉さん達は、いろんなお店の人気嬢のようだ。みんな美しい色気ムンムンのお姉さん達だし、人気があるのであればサービスも素晴らしいんだろう。
……本気で生きて帰れるかが心配だ。
「ジュードさんがお礼のつもりなら、俺が淫魔のお姉さんが大好きだって情報を手に入れたからこの場を用意したんだと思います。俺が淫魔のお姉さんと遊んだことがあるのはあなただけ……つまり、この場が用意されたきっかけはあなただ!」
どこぞの名探偵ばりに、人差し指を淫魔のお姉さんに向けて宣言する。
推理の内容が簡単だとか、内容が下世話すぎるとかは考えたら駄目だ。
「なんだかカッコいいわね」
「お芝居みたいだわ」
他の淫魔のお姉さん達が妙に喜んでくれている。誉め言葉が心地良いです。
「まあそうね。主様が恩人だからお礼の為にも情報が欲しいって、ブラストの親分さんの子分さん達が聞き込みに来たの」
ブラストさん達、何をやってくれているの? 恥ずかしくてしょうがないよ。
「……それで、俺の情報を渡してしまったんですね。どこまで話したんですか?」
プレイの内容なんかが流出していたら、もうベリル王国に近づけなくなる。
「ふふ、私もプロなんだから、寝物語の内容を他人に話したりしないわよ。私のところに話を聞きに来た時には、主様が魔族好きってことは知られていたわね。私が話したのは主様がとても喜んでくれたってことだけ。あとは頼まれたから、この場を手配しただけよ」
なんですと? いや、プレイ内容が知られていないのは嬉しいけど、俺の好みが流出した大本は、淫魔のお姉さんじゃないってことになる。
「じゃあ俺が魔族好きって情報の出元は?」
「謎解きなんだから主様が考えないと駄目よ。答えはすぐ近くにあるんだから、頑張ってね」
そうだった。性癖の流出疑惑で謎解きとか吹っ飛んでた。
しかし答えはすぐ近くにあるのか。これはヒントだよね。
答えはすぐ近くにある。でも、淫魔のお姉さん達は1人を除いて初対面だから、淫魔のお姉さん達は関係がないってことになる。
周囲にはワインとおつまみ、頑張ってと応援してくれる淫魔のお姉さん達しかいない。そうなると残る可能性は……自分?
前回、自分は何をしていたっけ?
「……あー、もしかしなくても情報の出元の原因は俺ですか?」
「正解。主様ってあの時、とても目立っていたそうじゃない。警備隊も出動したらしいし、とても目立っていたから情報を集めるのは簡単だったみたいよ」
たしかにあの時は結構な騒ぎになったな。そういえば『大きさこそ正義』に入った時に、受付のお姉さんから感謝された覚えがある。
騒ぎのおかげで、普段は来ないお客さんも店に来たって言っていたな。
それだけ目立てば、俺が魔族のお姉さんにチップをはずみまくり、デレデレと鼻の下を伸ばしながら闇夜に消えていった場面を覚えている人も沢山居ただろう。
なるほど、完全なる自業自得だ。
「あれ? でも、お姉さん達がやる気が高いのは関係ないですよね? これも俺が原因なんですか?」
「正解。淫魔って食べた相手の質で力を増すのよね。主様を食べた後、私の力がとっても増したことに彼女達も気がついたのよ。それで、その辺のことを聞くのはマナー違反だから、彼女達も私がだれを食べたのか自分で調べたの」
「簡単に分かったわ」
1人の淫魔のお姉さんの言葉に、他の淫魔のお姉さん達もウンウンと頷く。俺が目立っていたから分かりやすかったんだね。
「俺って結構なご馳走なんですか?」
「ええ、しかも前回よりも更に美味しそうなご馳走になっているわね。だから、みんなやる気満々なのよ」
あれから迷宮をクリアしたりしてレベルも沢山上がったから、美味しさがアップしたってことになるのか。
「さて、お酒も飲んだし謎解きも終わったわ。そろそろ始めましょうか」
「えっ?」
「うふふ、謎解き正解のご褒美よ。楽しいことも気持ちが良いことも、人には言えないようなことも全部、たっぷりご奉仕してあげるわね」
あっ、謎解き、終わっちゃってた。
ジリジリとにじり寄ってくる6人の淫魔のお姉さん達。絵面は最高なのに、全員の目が肉食獣の目にしか見えない。
「「「「「「いただきます」」」」」」
美味しくいただかれてしまう……。
読んでくださってありがとうございます。