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四百五十三話 ぶっちゃける

 遺跡を発掘して出てきたお宝の鑑定をノモスにお願いすると、同時にどうしてこの遺跡が生まれたのかまでノモスが教えてくれた。ロマンもなにもあったものじゃない気もしたが、謎が最後まで謎なままよりもマシだと思おう。


「じゃあみんな、遺跡に入ろうか。ノモスが補強してくれたから安全だとは思うけど、念のために魔法は使わないようにね」


 ワクワクしているベル達を見て、少し不安になったので注意しておく。精霊が騒いでも遺跡に影響はないけど、魔法は別だからな。


『はーい』と元気にお返事をしてくれるベル達。ベル達は約束を守る子達だから、これでほぼ安全だ。アクシデントは怖いけど、そこら辺のフォローはシルフィがなんとかしてくれると信じよう。


 さて、遺跡に入るとして、どこから入ればいいのかな? トゥルが頑張って掘り起こしてくれた3階建ての遺跡。


 3階建てだけあって、1階まで結構な高低差が生まれている。


 ……土が搬出された窓部分から入るのも遺跡探索っぽいけど、せっかくトゥルが綺麗に掘り起こしてくれたんだし、何百年どころか何千年前でも不思議ではないほどの昔の遺跡なんだから、ここは礼儀を払って正規のルートから侵入するか。


 シルフィに頼んで下まで運んでもらい、改めて掘り起こされた遺跡を確認する。


 ところどころ崩れたり欠けたりしている部分はあるが、しっかりと形が残っている。石造りだし、土に埋もれていたから保存状況が意外と良かったのかもしれない。


「1階の間口が広いし、住居っぽい造りではないから、この建物は店舗だったっぽいね」


 昔の遺跡だから住居の可能性がゼロではないが、店舗でもないのにわざわざ間口を広く取る必要もないから、店舗で間違いないだろう。


「そうね。発掘品からはなんの店か判断はつかなかったけど、お店だったのは間違いなさそうね」


 シルフィも同意見のようだ。単純な推測でしかないが、こうやって遺跡の過去を探るのも推理ゲームのようで楽しい。


 ここまでのヒントでなんのお店か分かればかっこ良かったんだけど、出土品にそれが分かる品は無かった。


 時間経過で消滅してしまう商品ってことしか分からないし、この商店がなんの商店だったかは、時間経過が長すぎて俺では推理しようがない。迷宮入りだな。


「じゃあ、中に入ろうか。おじゃまします」


 考古学者的なムーブを早々に諦めて、商店の中に突入する。


「……何もないね」


 トゥルが土と一緒に中身もすべて搬出したから、ガランとした石造りの空間が広がっているだけだ。ベル達が楽しそうに飛び回ってはいるのは微笑ましいが、それだけだな。


「外から中は丸見えだったわよね?」


 俺の呟きにシルフィが不思議そうに反応する。


「いや、何千年かぶりのお客さんなんだから、もしかしたら幽霊とかが現れて、何かが起こるかもって期待していたんだ」


 俺の言葉に対する返事は、シルフィからの生暖かい視線だった。


 お店に入ったら古代の住人の幽霊が現れて接客してくれるとか、ファンタジー的には王道だよね?


 どうやらシルフィにはこのテンプレは理解されなかったようだ。厨二病患者を優しく見守るような視線が痛い。


「……奥には何か残っているかもしれないし、探索してみようか」


 シルフィの優しい視線に背を向けて、足早に奥の通路に進む。幽霊に出てきてほしいとまでは言わないけど、ファンタジーには仕事をしてほしい。このさい、アンデッドでも良かったんだよ? 死の大地にはレイスとか居たじゃん。




「うーん……何もないね」


 1階を全員で見て回ったが、何もないとしか言いようがない。石造りの建物で、ホコリなんかもトゥルが綺麗に運び出してくれたからか、崩れている部分を除けば、引っ越し先の内見をしている気分だ。


 古代の住居の間取りが分かるのは貴重かもしれないけど、専門知識のない俺には意味の無い情報だな。このままだと無意味に時間が過ぎるだけな気がする。


「トゥル。土砂が入っていない部屋とかなかった?」


 探索に飽きてしまったので、タマモを抱っこしながら建物のチェックをしているトゥルに声を掛ける。時短って大切だよね。


「ほとんどつちのなかだったけど、3かいの1へやにはつちがはいってなかった」


 おぉ、ナイスな情報だ。これがテレビ番組なら、古代の住人の生活様式がついに明かされるってテロップが出て、CMに突入する場面だな。


 トゥルの頭と、ついでに抱っこされているタマモの頭も撫でて、部屋に案内してもらう。


 

「あー、うん……ここは物置かな?」


 外に面してなくて建物内の死角にあったから無事だった部屋。つまり、生活にはあまり適していない部屋ってことだ。


 1階にも物置らしき場所があったけど、あちらは店舗の物置で、こっちは住居の物置って感じかな? トゥルの力が届いていない場所だからか、空気までホコリっぽい気がする。


 物置らしき場所なので期待しないように自分の胸に言い聞かせながら、それでも少しだけ宝物庫かもと期待しながら、光球を部屋の中に進ませる。


 ……うん、物置だったね。光球の光に照らされたのは、風化したのか虫に食われたのかすら分からない、何かの残骸とホコリ。……人骨が無かっただけ運が良かったと思おう。


 だいたい、物置にお宝なんかある訳ないよね。それに大きいとはいえ、商店に宝物庫がある可能性も限りなく低かったんだ。大丈夫。そんなに期待していなったからショックは受けていない。


 お宝も手に入れてノモスに鑑定してもらっている。俺は大丈夫だ。劇的な展開で、秘宝やらなんやらを発見してみたかったとか、そんな子供っぽいことは考えていない。大丈夫だ。


「……そろそろ夕方だし、ジーナ達とも合流したいから帰ろうか」


 まずはノモスと合流だな。お宝の内容は、戻りながら聞けばいい。


 ***


「「古代の遺跡!」」


 声をそろえて驚くヴィクトーさんとベッカーさん。なかなかの驚きようで、ちょっと嬉しい。


「はい。遺跡を発見しました。俺はもう満足したので、ヴィクトーさん達で発掘してみませんか?」


 遺跡を発見したことジーナ達に伝えて尊敬の念を受け取り、遺跡発掘の続きをヴィクトーさん達に任せることをサラに告げると、こちらも喜んでもらえたので、俺の少しだけ落ち込んだ気分は回復した。


 そして、気分が回復した俺は、宿にジーナ達と護衛をお願いしたディーネ、鑑定をお願いしたノモスを残して、俺は遺跡のことをヴィクトーさんに伝えにやってきた。


「しかし、本当なのですか? いったいどこに? いや、裕太殿を疑っている訳ではないのですが、王都の周辺は探索されつくしているのですぞ。遺跡などそうそう見つかる訳がないのですが……」


 疑ってないと言いつつも、かなり疑っている様子のベッカーさん。まあ、遺跡が簡単に発見できるならもう発見されているだろうから、疑う気持ちは理解できる。


「でも、発見しちゃったんですよね。場所は……」


 あれ? 大森林の中で大して目印の無い場所をどうやって説明すればいいんだ?


「えーっと、地図はありますか?」


「おおまかな物でしたら」


 ベッカーさんが地図を持ってきてくれたが、なんだか子供が書いたような地図だ。この時代だとこんなものなのかもしれないが、大森林の中だと不安になる性能だな。


「だいたいの場所はここなんだけど、大まかにだから範囲が広すぎるわね。方角を伝えても少しズレるとたどり着けないし、裕太が案内するしかなんじゃない?」


 困っているとシルフィがフォローしてくれた。まあ、案内くらいなら構わないか。


「場所はこの辺りなのですが、最初は俺が案内しても構いません」


 サラのお兄さんなんだから、少しくらいは協力するよ。あれ? ヴィクトーさんとベッカーさんが顔を見合わせて疑問の表情を浮かべている。


「どうかしましたか?」


「あー……裕太殿。今朝がたアヒムと会ったと報告を受けているのですが、間違いありませんか?」


 ああ、アヒムさんが、ジーナ達というかサラが心配で、コソコソと尾行していたな。


「会いましたね」


「ですが、この地図の場所に行くには、10日以上かかります」


 理解しました。歩きづらい森の中で距離が縮まるとはいえ、大きな時間の矛盾が生まれていますね。殺人事件ならアリバイが完璧になりそうな時間差だ。シルフィも、そういえばそうねと驚いている。気がついてなかったようだ。


 あれ? 案内するのなら俺も一緒に10日以上森の中を歩くの? むさくるしい男の集団の中で? なんて拷問ですか?


 想像してみると、とてつもない苦行が脳内に浮かんだ。普段はのんびり気味な俺の脳細胞がフル回転する。


 1 諦めて一緒に10日間以上を森の中で過ごす。 却下。


 2 空が飛べることをぶっちゃけて、全員で飛んで遺跡まで行く。 保留。


 3 なんとか言葉巧みに翻弄して遺跡の近くまで向かわせ、後から合流する。 保留。


 俺の脳細胞はフル回転しているはずなのに、短時間では3つしか案が浮かばない。なんだかとても悲しい。


 1は却下だな。苦行は嫌だ。


 2は……俺のレベルとシルフィ達の力を考えれば、ぶっちゃけてもどうにでもなるが、面倒が起こる可能性も高まる。まあ、サラの感動の対面サプライズで、空から落とそうとしていたから、今更な話でもある。


 3は……時間の矛盾を言葉巧みに説明できれば悪くないが、どうやって言葉巧みに説明するのかが問題になる。


 あれ? 脳細胞がフル回転したはずなのに、解決策が我慢するかぶっちゃけるしか思いついてないぞ? どうしたんだ俺の脳細胞!


 シルフィに視線を向けるが、肩をすくめるだけで名案は無いようだ。


 一旦お持ち帰りして検討する時間が欲しい。大精霊全員と相談すれば、言葉巧みに説明するアイデアが思いつくかもしれない。でも、ここで帰ったら怪しさ満載だよね。俺だったら詐欺を疑う。


 あーもう。サラが喜んでテンションが上がったとはいえ、わざわざ遺跡発見のその日に動くんじゃなかった。


 お酒が飲みたいと騒いだディーネとノモスと飲んでいれば、幸せなままだったのに、俺のバカ。


「……俺、実は空を飛べるんです」


 苦行は嫌だったので、ぶっちゃけることを選びました。


comicブースト様にて、『精霊達の楽園と理想の異世界生活』のコミックス19話が公開中です。

今回は裕太も活躍していますので、よろしくお願いいたします。



読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 男たちとは長旅は勘弁だからね。 早くナイスバディの大人な女性たちとイチャイチャしましょう。
[気になる点] コミカライズのシルフィの胸が徐々に小さくなってるような・・・・
[一言] こうしてまた一つ死蔵される道具が生まれたわけだ 絨毯の出番ぇ 森の上までは飛べないとか?でも楽園ではアクロバティックに飛んでたしな
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