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四百四十九話 弟子の成長を見守りたい

連続で遅れて申し訳ありません。

めざせ豪華客船!!の更新は明日の予定です。

 イノシシの丸焼き&キノコパーティーから数日。今日はジーナ達だけで冒険者ギルドで依頼を受けるので、コッソリ後をつけて見守ろうと思う。


 ジーナ達がどれくらい成長したのかを確認するためなんだけど……気持ち的には子供達のお使いを見守る親の気持ちがあることも否定できない。見つかったらストーカー扱いされそうなのも少しだけ心配だ。


「シルフィ。大丈夫? ジーナ達は絡まれたりしてない?」


 今回は隠密行動なので一緒に冒険者ギルドに入ることができない。シルフィが状況を把握しているから安全なのは間違いないけど、地味に心配になる。


 でも、俺が見守っている時に絡まれるのなら安全に経験が積める面もあるから、絡まれた方が良い気もする。複雑な心境だな。


「大丈夫というか、問題が起こりようがないわね。楽しそうに依頼を選んでいるわ」


「えっ? 冒険者ギルドって絡まれやすいよね。なんで問題が起こりようがないの?」


 ジーナは美人だしサラ達は子供だ。冒険者ギルドでかなり絡まれそうなメンバーのはずだ。俺の影響が強い迷宮都市ならともかく、ローゾフィア王国でなんで大丈夫なんだ?


「シュティールの星がにらみを利かせているからよ。ギルド内に結構な人数が居るし、隠れてヴィクトーとベッカーも来ているわね」


 ベッカーさんどころかヴィクトーさんまで来ているのか。仮にも元貴族なのに過保護だな。でも、これで今回ジーナ達が安全に経験を積めなくなったから若干迷惑ではある。


 ヴィクトーさんには依頼について来てはいけないと釘を刺しても、冒険者ギルドで護衛をしてはいけないとは言っていないから文句も言えない。……屁理屈な気もするけどね。


 まあ、二度と会えなかったかもしれないサラと会えたんだから、過保護なのもしょうがないと思おう。ジーナ達が頑張るのは次の機会だな。


「シルフィ。もしヴィクトーさん達が依頼にまでついてきたら教えてね」


 釘を刺してあるけど、この調子だとコッソリついてきそうで少し心配だ。


「分かったわ。あっ、もう出てくるわ」


 シルフィの言葉に冒険者ギルドの出入り口を確認すると、マルコを先頭にジーナ達が外に出てきた。そのまま依頼に向かうようで門に向かって歩いている。


「シルフィ……空の上から見ると、尾行って結構丸分かりなんだね」


 ジーナ達の50メートル程後方で、微妙に挙動不審なアヒムさんがコソコソと歩いている。あきらかに不審者だ。


「本職はあれほど分かりやすくはないから、一緒にしたら駄目よ」


「なるほど、アヒムさんは元騎士だもんね」


 本職じゃないのは理解しているけど、俺とシルフィの中でアヒムさんの評価は結構下がったな。




 ジーナ達が王都を出てもアヒムさんの尾行は続く。王都を出るまでなら許容範囲内だけど、そろそろ帰ってもらおう。


 シルフィに頼んでコッソリとアヒムさんの背後に下ろしてもらう。


「アヒムさん」


 アヒムさんに声を掛けると、ビクッとアヒムさんの背中が跳ねておそるおそるこちらを向いた。


「ゆ、裕太殿……い、いつの間に?」


 ふふ。かなり驚いたようだな。未熟者めっ! って言ったら楽しそうだけど、それほど気安い関係ではないので我慢しよう。


「ずっと見ていましたよ。護衛は必要ないと言いましたよね?」


「いや、それはですね。偶然というかなんというか、あはは……」


 笑って誤魔化そうとするアヒムさんに親近感を覚えるが、だからといって誤魔化されてはあげない。


「アヒムさん。尾行が下手過ぎなんですけど、斥候とか居なかったんですか? 元騎士団ですよね?」


「あはは、斥候は居ますが、彼らは彼らで忙しいですし、サラお嬢様以外にも面識がある私が選ばれたんですよ。それに、こう見えて結構強いですから護衛としては最適なんです。ご一緒しませんか? 役に立ちますよ?」


 たしかに見覚えが無い人に尾行されるのは気持ち悪いから、全員と面識があるアヒムさんが選ばれるのも理解できないこともない。あと、チャラい見た目なのにまだ任務を諦めていない真面目さも評価されているんだろう。だが断る!


「守りは俺だけで十分ですから、アヒムさんはお帰りください」


「……どうしても駄目ですか?」


「どうしても駄目です」


 アヒムさんが悲しそうな顔をしても無駄だ。俺は成人男性以上の男には強い耐性が有る。昔の俺なら強面にはビビったけど、レベルが上がって精霊とも契約した俺に死角は無いぞ。


「……分かりました。サラお嬢様のこと、どうかお願いいたします」


「お任せください」


 俺の強い意志を感じ取ったのか、アヒムさんが渋々といった様子で王都の方向に引き返していく。


 こちらをチラチラと見ながら戻っていく様子は未練がタラタラだけど、完璧に背後を取られたんだからあきらめるだろう。


「シルフィ。アヒムさんがまた戻ってきたら教えてね」


 でも、念のためにお願いしておこう。次に完璧に背後を取った時は、遠慮せずに未熟者めって言っても大丈夫な気がするから、ほんの少しだけ期待している。


「ふふ。分かったわ」


 さて、アヒムさんも撃退したし、ジーナ達の様子を見に行こう。




 森の中だから空からだと観察しづらいが、シルフィが角度を調整してくれるから姿は見ることができる。そういえば迷宮でサラ達を初めて観察した時も森だったな。ちょっとだけ懐かしい。


 ふむ。フクちゃんが先行して偵察。マメちゃんがジーナ達の周囲を回るように警戒って感じだな。


 ウリとシバがジーナ達から離れないように前後を固めているのは、守りと緊急事態にも対応するためだな。プルちゃんはサラの頭で待機中だ。


 ジーナ達の隊列は、マルコが先頭でサラとキッカ挟んでジーナか。平原とか見通しが良い場所だと隊列も変わるんだろう。


 おそらくマルコが先頭なのは、俺がみんなを守るんだって言う決意の表れだと思う。ジーナが最後尾なのは全体を俯瞰するのと後方を警戒するためだろう。


 まだ森に入ったばかりだし、王都からも近いからそれほど危険はなさそうだが、油断をしている様子もないので、なかなか良い感じだ。問題は……。


 俺の周りでもみくちゃになって戯れているベル達だな。今回はジーナ達を見守るだけだから、少し退屈させてしまいそうだ。せっかくの大自然だし、遊びに行かせておくか。前にベルが森の中を飛ぶのが楽しいって言っていたから、大森林なら大満足するだろう。


「みんな、フクちゃん達に見つからないようにできるなら、遊びに行ってきていいよ」


 遊びって言葉に反応して、いっせいに俺を見るベル達。視線が期待で煌めいていて、とてもまぶしい。


「お昼には戻ってくるようにね」


「いってくるー」「キュキュー」「もり、どうぶつたくさん」「クー」「ぼうけんだぜ!」「……」


 手を振って元気いっぱいに飛び出していくベル達。ちゃんとお昼に帰ってこられるかが心配だけど、食べるのは大好きだから忘れずに戻ってくるだろう。お昼は何を食べようかな?


 ***


「フクちゃんが戻ってきたので、止まってください」


 フクちゃんが私の頭の上で旋回しました。魔物の発見や緊急事態の時にはフクちゃんが私の目の前に止まるので、旋回したってことは何かを発見したんですね。


「フクちゃん、植物なら右手、動物なら左手にお願いします」


 左手ですか。魔物ではない動物ですね。危険な動物なら緊急事態に含まれますから、比較的危険度の低い動物か草食動物でしょう。あと、なんとなくフクちゃんが喜んでいるように感じます。


「フクちゃんが動物を発見したようです。今回の依頼には関係ありませんが、どうしますか? それと、フクちゃんがなんだか喜んでいるようにも感じます」


 今回私達が選んだ依頼は、オークの10匹討伐と薬草採取。まだこの森に慣れていないのであるていど達成しやすい依頼ですが、それでもオークはゴブリンよりも数が少ないです。関係のない寄り道は悩みどころですね。


「喜んでいるのか? うーん……フクちゃんが喜んでいるのも気になるし、次の依頼に役に立つかもしれない。どんな動物か確認しておいた方が良いかもな。マルコとキッカはどうだ?」


「おれ、どうぶつみたい」


「キッカはどっちでもいい」


 ジーナお姉さんは確認したほうが良いと判断したようです。たしかに30日程滞在する予定ですし、それ以外にもまた大森林に入る機会はあるでしょうから、情報を集めておくのも大切ですね。


「私も情報集めに賛成ですので、確認しに行きますか?」


「よし。じゃあ行ってみるか」


 フクちゃんに案内してもらって動物の確認に行くと……。


「なるほど。これで喜んでいたんだな」


 納得するように頷くジーナお姉さん。


「美味しかったもんな」


 共感したように呟くマルコ。


「キッカもまたたべたい」


 同じく共感するように声を出すキッカ。


 動物を確認した結果、フクちゃんが喜んでいるように感じた理由をジーナお姉さん達も理解したようです。フクちゃん……イノシシの丸焼きを思い出して喜んでいたんですね。


 私も同感ではあるのですが、契約精霊が好きな食べ物を発見して報告に来るというのはどうなんでしょう?


 お師匠様にはドラゴン等も食べさせてもらえるので、ドラゴンを発見した場合が少し怖いです。


 ……さすがに、ドラゴンの場合は案内せずに緊急事態と判断してくれますよね? いくらなんでもそれは無いと分かっていますが、念のために楽園に戻ったら緊急事態の判断を共有しておきましょう。


「どうする? 依頼には関係ないけど、大きさも丸焼きにちょうど良さそうだし……狩るか?」「わふ!」


「かる! 師匠の魔法の鞄ならくさらないからだいじょうぶだ」「プギュ!」


「キッカもたくさんたべたい」「ホー!」


 全員が狩る方向に意識が固まったようです。私も同じ気持ちですから問題ないですし、なんとなくですがフクちゃん達もやる気満々な気がします。


 楽園の外だとフクちゃん達の姿も見えないし声も聞こえないのに、なんとなくフクちゃん達の気持ちがわかる気がするのは、精霊術師として成長した証なのでしょうか?


 ……とりあえず、この状況でイノシシを狩らないという選択肢はありません。オーク討伐も薬草採取も手を付けてはいませんが、まずは丸焼き用のイノシシを確保です。頑張りましょう。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] ゆうたが一番過保護っと。 早く素敵なお胸様に癒されに行こう。
[気になる点] 無理せずたまには連載休んでもいいと思いますよ [一言] 精霊の格が上がる条件とかあるんですかね
[気になる点] ハッキリと姿が見えてないはずなのに旋回してるとか分かるのはどうしてでしょうか
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