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四百話 マルコとキッカの訓練

四百話の更新をすることができました。

自分でもこれほど長く書き続けられるとはとビックリしています。

これも、沢山の読んでくださッている皆様のおかげです。ありがとうございます。

沢山の感想と誤字脱字の報告。沢山のブックマークと評価。沢山のアドバイス。

沢山の事を励みに更新を続けることができました。

沢山の誤字脱字の報告は私の推敲ミスが原因ですが、とても感謝しております。

今後とも更新を続けていきますので、これからもよろしくお願いいたします。


それと、すでに四百話のお祝いをしてくださっている皆様、ありがとうございます。

 いろいろとあったが、トルクさんの相談以降は、のんびりと迷宮都市を楽しむことができた。まあ、トルクさんと話した翌日から、宿の増築のために動き出したとジーナ達に聞かされた時は驚いたけど……それ以外はベル達とも沢山遊んだし、迷宮都市でこれだけリラックスできたのは久しぶりな気がする。


 ジーナとサラのお手伝いも順調だし、マルコとキッカも大変そうではあるが、意外と楽しそうに訓練を受けている。


 泊まっている高級宿の料理も、沢山持ち帰れるように手配したし、今回の迷宮都市滞在は有意義なものになったな。


「マルコ、キッカ、明日の朝には迷宮都市を出るから、リーさんにちゃんと伝えておくんだよ」


「師匠、リー先生とのくんれんは、もうなくなるのか?」


 ちょっと不安そうにマルコが聞いてくる。リーさんとの訓練を続けたいようだ。いいことなんだけど、精霊術師を辞めるとか言いださないでね。


「これからも続けていいよ。でも、ジーナとサラのお手伝いも終わるだろうし、次からは迷宮探索も再開する。今回みたいに連続で訓練するのは少なくなるよ。俺もあとで挨拶に行くつもりだけど、マルコからもリーさんに伝えておいてくれ」


「わかった。じゃあいってくる。キッカ、いくぞ」


「いってきます」


 元気に駆けて行くマルコとキッカ。体術を習い始めて、なんだか姿に躍動感がでたな。さて、ジーナとサラもお手伝いに行っているし、俺も帰る前に用事を済ませるか。


 マリーさんからお酒を受け取って、メルのところにも顔を出しておこう。他はリーさんに挨拶と……あぁ、シルフィ達の家を建ててもらっているから、大工さんに差し入れをしておくか。


 ***


「こんにちは。ジルさんに家を建ててもらっているので、進捗状況を聞きたいのですが、会うことはできますか?」


 お昼をちょっと過ぎた時間帯か、もう少し早くここにくるつもりだったけど、予定よりも遅くなってしまった。


 お酒を受け取りに行ったら、ライトドラゴンの解体も終わっていて、マリーさんにマリーさんの親父さんが、若返り草とライトドラゴンの素材で、国と交渉する予定だって熱く語られた。何を要求するつもりなんだろうか? ちょっと怖い。


 メルの工房でも、メルとメラルと話し込んでしまったから、結構時間がかかった。


 でも、マリーさんはかなりの量のお酒を集めてくれていたし、メルとメラルも元気そうだったから、悪くない時間だった。


 まあ、メラルは、今回も楽園に一緒にきたがっていたけど、メルもお仕事をしないと駄目だから、頻繁には無理だよね。落ち込んだメラルが、ベル達になぐさめられて元気になった姿は、ちょっと面白かった。


「裕太様ですね。少々お待ちください。……ジルは現在、裏手で裕太様のご注文の家を手掛けております。こちらに呼び出すことも可能ですが、進捗状況をお知りになりたいのであれば、直接ご確認なさいますか?」


 ああ、移動できる家を建てるんだから、近場で建てるよな。たしか俺の家を作ってもらった時もそんな感じだった。


「それなら、家を確認したいです」


「かしこまりました。ご案内いたします」


 受付嬢さんが、そのまま案内してくれるらしい。受付を空にしていいのかと思っていたら、奥から人が出てきた。この建築会社、侮れない。




「おう、きたのか」


 受付嬢さんに案内された場所には、3軒の家が建築されていて、1軒はほぼ完成しているようにみえる。結構な人数が働いていることに少しだけ驚いていると、俺に気づいたジルさんが声をかけてきた。


「ジルさん、こんにちは。家の方はどうですか?」


「うむ、一番簡単な家は、内装と窓以外はほぼ完成と言ったところじゃな。窓はもってきたのか?」


 やっぱり完成間近に見えた家は、俺が頼んだ家だったか。おっと、ベル達が興味津々な様子で、建築中の家の見学に向かった。まあ、作業の邪魔になる訳でもないし、大丈夫だろう。


「すみません、今回は差し入れを持ってきただけで、窓は持ってきてないんですよ。まだ時間がかかると思っていました」


 まだ、ノモスに作ってもらってすらないんだよな。前回は完成前に持ってくればよかったから、ちょっと余裕ぶっこいていた。でも、簡単だって言っても、もう完成間近だとは思わないよね? ヴィータのリクエストが簡単過ぎたか……。


「うむ、シンプルなつくりじゃから、そんなに時間はかからんな。まあ、内装をやっておくから、次に来るときは窓を持ってこい」


「分かりました。でも、10日以上あとになりますが、大丈夫ですか?」


 日帰りで窓を届けにくるのは可能だけど、わざわざ窓を届けるために往復するのは面倒だ。


「うむ、構わんぞ。それで、差し入れはなんじゃ?」


 結構期待した目で見られている。エール1樽でいいかなって思っていたけど、思った以上の人数が動員されているから、1樽では少ないな。


「えーっと、帰りに受付にエールと赤、白のワインを樽で置いていきますから、仕事が終わってから飲んでください」


 シルフィ達の宴会よりも少ないお酒……ドワーフの酒量が大精霊並みなら足りないけど、差し入れなんだからこれで許してほしい。


「む? なんで帰りに受付に置いていくんじゃ? 手間をかけんでも、ここに置いておけば、儂らで運ぶぞ?」


 ……ここにお酒を置いておいたら、家を建てながらお酒を飲みそうだと思ったから、受付に預けるって言ったんだけど、正直に言ったら怒られるかな?


「……そうですか? ここに置いておくと邪魔になるかと思ったんですが……」


 正直に言うのは無理だったよ。レベルが上がっても、俺は弱いな。


「邪魔にはならんな。今晩の楽しみが目の前にあるんじゃ。あやつらの励みになる」


 馬の目の前にニンジンをぶらさげた感じか。たしかによく働いてくれそうだ。


「そうですか。それならここに置いておきますね」


 ドン、ドン、ドンとシドさんの前に酒樽を並べる。結構嬉しそうだし、やっぱりドワーフはお酒が好きなんだな。


「ふむ……なかなかいい酒じゃな。これを3樽とは剛毅なものじゃ。ありがたく楽しませてもらうぞ」


 どうやって判断したのか分からないが、ジルさんが満足げに頷く。マリーさんにいいお酒を選んでもらったんだけど、ジルさんがお気に召すクラスのお酒だったらしい。マリーさん、侮れないな。


 おっと、お酒を渡して満足しては駄目だ。せっかくきたんだから、ちゃんと建築中の家の確認をしておかないとな。


「それならよかったです。それで、家の方はどんな感じですか?」


「ああ、そうじゃったな。今のところは順調じゃな。ただ、普通の家と明らかに違う部分で、職人達の戸惑いが大きい。図面のミスを疑われて、その説明が大変じゃな」


 まあ、そうだろうな。家の中に滝を造ったり、水路を通したり、2枚の巨大な窓が、ガルウイング仕様だったりしたら、図面や正気を疑いたくなる気持ちも分かる。なんというか、ご迷惑をおかけしております。


「そのぶん、家の完成が遅れたりしますか?」


 大精霊達が結構楽しみにしているようなので、できれば遅れないでほしい。


「いや、儂らはプロじゃからな。多少混乱があろうとも、設計から大体の建設期間は読み取れる。アクシデントがない限り、遅れることはないじゃろう」


 なんていうか、プロとしてのプライドと自信を感じる言葉だな。そして、その言葉を聞いたシルフィの雰囲気が、あきらかに嬉しそうに変わっている。家の完成が楽しみなんだね。


 俺としてもシルフィや、他の大精霊達が喜んでくれるのは嬉しい。全員の家が完成したら、新築祝いに盛大に宴会だな。何かあったら宴会ってのもテンプレだけど、大精霊でも初めてのマイホームだ。盛り上がるだろう。


 ジルさんと打ち合わせをして、俺の方で用意する窓やサッシなどを届ける時期を決めてジルさんと別れる。あとは、リーさんに挨拶をして、トルクさん、高級宿の料理人から料理を受け取れば、今日やることは全部終わるな。


 ***


「やー」「ホー」


 訓練場に入ると、キッカとマメちゃんの気合が入った、可愛らしい声が聞こえてきた。どうやらリーさんと、組手のようなことをやっているようだ。マメちゃんがキッカの背後で羽を突き出しているのは、一緒に戦っているつもりなのかな?


 しかしあれだな、声は可愛らしいけど、動きがハンパないな。レベルの影響もあるだろうけど、なんだか動きに野生を感じるのは気のせいか?


 耳と尻尾以外は人と獣人の違いは感じなかったけど、体術の訓練をして狼の獣人の血が覚醒したのかもしれない。あれ? そういえばマルコは?


「マルコなら、あそこの壁際で倒れているわよ」


 俺がキョロキョロしていると、何を探しているのか分かったのか、シルフィがマルコの位置を教えてくれた。流石風の大精霊、エアリーディングも完璧だな……って、マルコ、大丈夫なのか?


 慌ててマルコの様子を確認すると、大の字で寝転がったまま、空を見上げて遠い目をしている。マルコのお腹の上で、ウリがお昼寝をしている姿が、微妙にシュールだ。


「えーっと、マルコ。大丈夫?」


「あっ、師匠……だいじょうぶ。ただちょっとつかれただけだ……」


「あぁ、起きなくていいから、そのまま休んでいて。……それで、なんでそんなに疲れているの?」


「あしたかえるってつたえたら、リー先生がくんれんのせいかをみるっていって、くみてした……」


 1週間程度でなんの成果なんだと思うけど、今、キッカがやっているような組手を、マルコも体力の限界までやっていたようだな。ムーンに頼んで体力を回復させようかとも思ったが、訓練に付き添ってもらったヴィータが何もしていないってことは、回復させない理由があるんだろう。


 ヴィータに話を聞くと、回復させても、もう1回リー先生に搾り取られるだけだって分かったので、止めておくことにした。ヴィータがいれば無限に訓練ができるのかな? 体はともかく精神が酷いことになりそうだ。狂戦士が誕生とか洒落にならないよね。


 マルコの隣に座り、リー先生とキッカの組手と、それに交ざって体術のまねごとをするベル達を見守っていると、ついにキッカが力尽きた。素早い動きをするキッカも、結局最後までリーさんに触れることすらできなかった。リーさんもハンパないな。


「リーさん、こんにちは。マルコとキッカはどうですか?」


「ホッホッホッ、まだまだ基礎も覚えておらんが、動きはなかなかじゃな。立派な武道家になれる可能性を秘めておる。のう、本気で儂に預けんか?」


 マルコとキッカには才能があるようだ。


「それはマルコとキッカの意思次第ですが、この子達は精霊術師としても一流になれるんです。当面は時間がある時に訓練ということでお願いします」


「そうか、残念じゃが無理矢理弟子にする訳にもいかんからのう。うむ、じゃができるだけ訓練の時間を取れるように頼むぞい」


「……分かりました」


 なんか、うかうかしていたら、本気で弟子が奪われてしまいそうだな。楽園に戻ったら、精霊術師としての教育も頑張ろう! すでに教えることがほとんどないけどな……。とりあえず、倒れたキッカをマルコのところまで運ぶか。 


読んでくださってありがとうございます。

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