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三百六十七話 久しぶりの精霊王様達

 昨日は魔法の箒でベル達にお掃除を頼み、俺は魔法の絨毯で大空に飛び立った結果、グロッキーになった。いくら楽しい魔道具でも無茶は駄目だよね。その後、シルフィの付き添いでジーナ達を魔法の絨毯で空に送り出した。全員で交代しながらのんびり空中散歩を楽しんだらしく、笑顔で戻ってきたのが印象的だった。魔法の絨毯は無茶をしないで、風の精霊が居れば素晴らしい魔道具だな。


「ゆーた、きょうもおそうじするー?」


 朝食が終わりまったりしていると、ベルが質問してきた。昨日、お掃除が終わったことを報告に来た時、ものすごく興奮してたんだよな。どんなふうに頑張ったかとか、箒に込めた魔力が最後までもったことなど、事細かに説明してくれた。お掃除が楽しかったから、今日もお掃除したい気分なんだろう。


 昨日ベル達が綺麗に掃除をしてくれたから、隅々まで綺麗になっている。別に掃除をしなくても構わないんだよな。


 でも、聞いてくるってことはお掃除がしたいってことなんだろう。こまめに掃除をすることは悪いことじゃないし、精霊王様達も昼からくるから仕上げの掃除をしてもらうか。


「んー、じゃあ仕上げにもう一回リビングと廊下のお掃除をお願いするね」


 魔法の箒を取りだし、魔力を込めてベルに渡すと大喜びで掃除を始めた。魔法の箒が動くところを初めてみたジーナ達も興味津々で観察している。


 部屋も綺麗になるし見ていても面白いから、迷宮のコアに頼んで他の掃除道具の魔道具も作ってもらうのもいいかもしれないな。モップや雑巾、ハタキなんかもあったら楽しそうだ。


 魔物は選択できるみたいだけど、魔道具も自由自在に作れるんだろうか? そういえば宝箱の補充がされないタイプの迷宮だし、新しく宝箱を出すには層自体を作らないと駄目だったら面倒だな。ここらへんも次に迷宮のコアに会ったら確認しておこう。


「師匠、あたし達も掃除を手伝った方がいいか? なにをしたらいいのか分からないけど……」


 ジーナが戸惑いながらも話しかけてくる。ベル達は基本応援しているだけだし、手伝うって言ってもなにをしたらいいのか分からないよな。


「お掃除はベル達に任せてて問題ないよ。そうだ、精霊王様達がくるまでだいぶ時間があるから、ジーナ達に使ってもらう魔道具を確認しておこうか」


 ルビー達やノモス達は精霊王様関連で忙しそうだけど、俺やジーナ達にできることはほとんどない。それなら他に必要なことをやっておいた方がいい。


「あたしたちが使う魔道具?」


「うん、迷宮で探索する時に便利そうな魔道具がいくつかあったから、とりあえず外で試してみよう。たぶんフクちゃん達の負担も軽くなるよ」


 最初は自分で使おうかとも思ったが、シルフィとベル達が居るだけでほぼなんとかなる。属性が揃ってなくて、力もまだ弱いジーナ達とフクちゃん達が利用したほうがいいだろう。


 魔法の箒に夢中なベル達とフクちゃん達を置いて外に出る。メラルは一緒に外に出てきたし、魔法の箒の魅力に逆らえるのは、中級精霊の精神力が必要なのかもしれない。まあ、しばらく経てば飽きるだろうけど……。


「まずはこのテント。中に入ってみて」


 魔法のテントを取りだし、ジーナ達を中に招き入れる。


「うわっ、ひろい!」


「ホントだ! ひろい! お師匠さま……なんで?」


 見た目と違って広いテント内に驚くマルコとキッカ。そのこと自体は嬉しいんだけど、興味津々でなんで?って聞かれるとは考えてなかったな。魔道具だからって説明では駄目なんだろうな。


「うーんとね……魔法の力で空間を広くしてるからだよ……」


 魔道具だからって説明と変わらない気がする。


「まほう、すごい!」


 俺のつたない説明に感心してくれるキッカ。いつまでもこのままの素直な気持ちを持ち続けてほしい。シルフィ、ジーナ、サラ、その微妙な表情は止めて。


「う、うん、それで魔道具はこれだけじゃないんだ」


 湧水の壺、送風機、清潔なトイレを取りだして並べる。


「お師匠様、これは魔力を込めると水が湧き出る壺ですよね。残りの2つはなんですか?」


「これはね、魔力を込めると涼しい風が出る魔道具で、こっちは魔力を込めると個室のトイレになる魔道具だよ」


「「「「トイレ!」」」」


 おおう、ジーナ、サラ、キッカ、メルの食いつきがハンパない。やっぱり女性には迷宮のトイレ事情は厳しいようだ。


 説明を求める視線に、トイレを実際に展開して見せることで答える。水が湧き出る壺も送風機も結構便利だと思うけど、なんか印象が薄くなってる。一気に見せるんじゃなくて、順番に見せてトイレは最後にするべきだった。


 トイレの見学が終わり、上機嫌なジーナ達に湧水の壺と送風機の説明をして、ジーナ達が使っている移動拠点からベッドを移す。


「なあ師匠、このテントって宿屋並みに快適だよな? 冒険者ってこれでいいのか?」


「お師匠様、私もそう思います。たぶん一流冒険者が使う魔道具ですよね?」


 ジーナとサラが疑問をぶつけてくる。メルもコクコクと頷いているので同じ気持ちなんだろう。


「それを言ったら、装備の時点で超一流冒険者クラスの装備だけどね。まあ、せっかくあるんだから使える物は使った方がいいよ。ジーナ達の身の安全とフクちゃん達の負担も軽減されるし悪いことはないよね」


 見た目は普通のテントだから、テント目当ての襲撃もない。デメリットといえば……雑草魂的な根性が身につかないことと、品質のいいものばかりで増長してしまうくらいか?


 サラ達は厳しい境遇を知ってるし、メルは性格的に増長するのは難しそうだ。ジーナは……あれだけ父親とお兄さんに溺愛されても真っ当な性格なんだから大丈夫だろう。もし誰かが調子に乗ったらその時は便利な道具を没収すれば、たぶん分かってくれるはず?


 だいたい一番調子に乗って増長しそうなのは俺だ。ジーナ達の心配をするよりも、俺が気を引き締めて調子に乗らないようにしないとな。


 ***


「あれ、ウインド様だよね」


 魔法のテントの内部を整えベル達のお掃除も終わった。そろそろ精霊達が遊びにくる時間になったので、出迎えのために外で待っていると、大きなドラゴンが飛んできた。


「ええ、ウインド様ね。またみんなを運んできたんだと思うわ」


「やっぱりそうか。風の精霊王様が乗り物みたいなこと……まあ、精霊ならそこらへんはあんまり気にしないのか」


 途中で自分で結論を出してしまった。人間の王様だと威厳的なものを大切にするだろうけど、精霊だもんね。


「気にしないわね」


 だよね。あっ、小さくなった。ウインド様の巨大な体が縮むと、ワラワラと小さな精霊の姿が現れた。ちびっ子達が60人に付き添いの精霊達と精霊王様達か……こうしてみるとかなりの数だな。精霊王様達を先頭に精霊達がこっちにやってくる。


 ヤバい。ちびっ子の人数が増えて、集団の破壊力が増している。あれだな赤ん坊、幼稚園児、小学生達が、動物園の小動物ふれあいコーナーで赤ちゃん動物達と戯れてる感じだ。こんなの特に子供や小動物が好きでもない人間でも、強制的にホッコリさせられるぞ。


 チラッとノモスの様子を確認すると……おお、苦虫を嚙み潰したような顔をしている。必死で顔がデレデレになるのを防いでるんだろうな。


「やあ裕太、招待ありがとう」


「いえいえ、皆様ようこそいらっしゃいました。私達も精霊王様方に来ていただけるのはありがたいことですから、アルバードさんの許可が降りましたら、いつでも遊びに来てください」


「あはは、アルバードの許可が必要なんだね。あと、前にも言ったけど堅苦しいのは息が詰まるから、気楽にお願いね」


 わかってるけど、ちっちゃい子が沢山だから最初くらいは少し丁寧にしないといけない。あと、アルバードさんの許可がないと、いつの間にか子供達の中にウインド様がまぎれてそうなので、許可は必須だ。アルバードさんもよく言ったって顔してるから俺の判断は正解だろう。


「分かった。とりあえず敬語はできるだけ省くよ。じゃあベル達、ジーナ達、フクちゃん達もご挨拶して。あっ、メルは精霊王様達と会うのは初めてだから、俺とメラルと一緒にご挨拶しようか」


 面識があるちびっ子軍団+ジーナは精霊王様達と他の精霊達との挨拶にむかい、俺は精霊王様と会うということでガチガチに緊張しているメルと一緒にご挨拶する。


 メルには精霊王様達は気さくな方達だから大丈夫って事前に言っておいたけど、緊張を緩和させることすら無理だったようだ。まあ、しょうがないよな。俺だって王様が来るって聞いたら緊張でガチガチになるもん。特にウインド様の巨大なドラゴンの姿を見ているからなおさらだ。


 改めて、ウインド様、ウォータ様、アース様、ファイア様、ライト様、ダーク様にメルとメラルを紹介しながらご挨拶する。


 メルがつっかえつつも、無事に挨拶を済ませる。なんとなくだけどライト様との交流で少し緊張が解けたように見えた。可愛らしい玉兎が一生懸命偉そうに話す姿は、癒し効果が抜群だからな。ライト様には言えないけど……。


 挨拶を終えて周りを見渡すと、結構面白いことになっている。遊びに来たちびっ子達と、うちのちびっ子軍団+ジーナが一塊になってワチャワチャしている。ちょっと混ざりたい。


 ルビー達は……付き添いの精霊達と打ち合わせをしているようだ。あっち側は任せてしまっても問題ないだろう。


「裕太。妾達が子供達と行動を共にするのは気を使わせてしまうのじゃ。まずは裕太の家で休ませてもらっても構わんかの? 茶などがあれば嬉しいのじゃ」


 ……お茶って言った時にライト様の目が期待に輝いた気がする。これはたぶん、お茶菓子を期待しているんだろうな。


「昼食はいいの?」


「うむ、妾達も楽園食堂といったかの? ルビーの食堂で昼食の予定じゃ。ゆえに子供達が落ち着いてからの方がよかろうな」


 楽園食堂って名前、精霊王様達にも広まってるんだな。誰が名付けたのか知らないけど、もはや変更されることはないだろう。まあ、シンプルで分かりやすい名前だからいいか。


「なるほど、じゃあ家で少し休憩しようか。迷宮都市のトルクさんって料理人が、デザートを改良してくれたから、それもお茶請けで出すね」


 せっかくのお茶会だし、重力石のお茶会場を利用しようかとも思ったが、おそらくちびっ子達が楽園を飛び回るだろうから、今回は止めておこう。


「うむ、まあ甘味など子供っぽいのじゃが、以前味をみてやると約束したんじゃったな。よきにはからえ」


 うむうむって感じで胸を張るライト様。ちょっとだけ……ほんのちょっとだけ甘いものを出さないで、シュンとしたライト様を見てみたいって思ったけど、たぶん罪悪感がハンパないことになるから止めておこう。


 シュンとする姿よりも、期待に胸を膨らませながらも平静を装うライト様の方が絶対に可愛い。


「分かった。じゃあ家に行こうか。メル。メルはメラルやジーナ達、ベル達と協力して一緒に遊びに来た精霊達のサポートを頼むね」


「あっ、はい、分かりました」


 少し嬉しげにメラルと去っていくメル。あのままだと一緒に家に行く流れになりそうだったから、避難させたのは正解だったようだ。少し緊張が解れたとはいえ、精霊王様達とのお茶会は辛いよね。さて、俺は精一杯精霊王様達をおもてなしするか。

読んでくださってありがとうございます。

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